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2010年09月18日

つかこうへい÷夏目漱石≒間男

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つかこうへい÷夏目漱石≒間男
introducing 「寝盗られ宗介」「それから」

理系の学者は天才肌が多い。若いときにひらめいた仮説を証明するために、人生の大半を費やすことがある。
例えばアルベルト・アインシュタイン。彼は26歳のときに特殊相対性理論を提唱した。だが受け入れられず、14年後にそれを発展させた一般相対性理論を発表し、実証された。

僕が大学受験をしたのは1974年。理系だったので、数学は微分積分の問題が出た。一番難しかったのは幾何学の証明で、数Tで習ったやつより遥かに程度が高い。
だが証明は過程が大切。完璧に証明しなくても理解している範囲で点がもらえる。

表題に掲げた方程式は、相対性理論と比べれば遥かに理解しやすい。
だがそれを完璧に証明するとなると、なかなか手ごわい。何点もらえるか見当がつかない。

こんばんは、マンハッタン坂本です。



「寝盗られ宗介」は、つかこうへいの代表的な戯曲で、自ら脚色し映画化された。
 
ドサ回り一座の座長・北村宗介(原田芳雄)は、座員に滅法人望があり面倒見がいい。飯をおごる時は自分よりいい物を食わせる。彼を慕うホモっ気のあるジミー(筧俊夫)が重い腎臓病と分かれば、実家に帰って手術代を借りてくる。腎臓提供者が見つからなければ、自分のまで貸し出す。
あばずれの内縁の妻・レイ子(藤谷美和子)が間男と駆け落ちしても、見て見ぬふりをする。相手が彼女に誘惑された座員なので、すごすごと戻ってくれば就職の手伝いまでする。

看板スター・レイ子の出し物は、ダグラス・マッカーサーと美空ひばりの間にできた隠し子で、「りんご追分」を口パクで歌う。度々代役が演じるが、彼女と比べると色気がない。

生まれ故郷の角館に新しく交流センターができる。宗介は、腹違いの弟(佐野史郎)からこけら落としの公演を頼まれる。ついでに結婚式でもするかと冗談を言うと、早速ポスターができて来る。

あろうことか、ジミーが誘惑され、レイ子と駆け落ちすると言い出す。

「くっついてから別れるまでの時間、十分とってあるから。帰ってこいよ。」 

宗介は、角館の舞台で新しい出し物を披露する。越路吹雪の身代わりとして生きてきた私はどうなるの、なんて口上のあと「愛の賛歌」を熱唱する。
だがクライマックスのスポットが当たっても新婦の姿が見えない。すでにジミーは捨てられ戻ってきている。

落胆し楽屋に戻る宗介。舞台の方から拍手が聞こえてくる。急ぎ引き返すと、晴れ着姿のレイ子が待っている。膝を折りレイ子の腰を抱きしめる。レイ子は上体をかがめ宗介の首を抱く。
待ってました!と言わんばかりに拍手が巻き起こる。
  (注釈1)



「それから」は、熊本・五高出身の帝大生の成長物語「三四郎」に続く、夏目漱石の小説が原作である。時は明治後期、日本は不景気のまっただ中だ。
 
三年ぶりに大阪から戻ってきた平岡(小林薫)は、帝大時代の友人、長井代助(松田優作)を尋ねる。長井は実業家の父や兄の援助のお陰で職につくことなく気ままに暮らす30歳の高等遊民で、トラブルの責任を取って銀行を辞めた平岡にとって羨ましい存在である。
彼は、妻の三千代(藤谷美和子)の言葉を伝える――「しきりに君はもう奥さんを持ったろうか、まだだろうかって気にしてたぜ」

そんな三千代が長井を尋ねてくる。心臓の病で借金したので工面してくれないかと言う。
新しい住まいの世話はできても、有閑知識人の身で大金はままならない。
長井は少しずつ工面しては三千代の家を尋ねる。だがいつも彼女は寂しそうにしている。就職活動で忙しい平岡にほったらかしにされているからだ。
 
銀杏返しに髪を結い、白百合を抱え、息せき切って三千代が長井の家に押しかけて来る。
長井の心に、花の香りをかいだ想い出が甦る。彼女も傍らにいた。

「もらおうと思っても、もらえないから、もらわないんです」 

父親がもってくる縁談を断り続けた長井は、ついに三千代への想いを告白する。
十数本の白百合を盛った花瓶を間に挟み、二人が向かい合う。4年前に打ち明けるべきだった、と長井は言う。同じ想いだった三千代が覚悟を決める。
 
先にもらいたいと言われたので譲る気になった、という長井の義侠心は偽りだった。
二人の関係を知った平岡に、彼は深々と詫びる。くれてやる!と言って平岡は絶交する。だが新聞社の経済部という肩書きを楯に、長井の父と兄へ手紙を書く。

勘当された長井は、三千代に会えないまま実家を去る。
  (注釈2)



そんなわけで、方程式の証明はこんな感じになる。

「寝盗られ宗介」÷「それから」
   = 夫(原田芳雄)×妻(藤谷美和子)×(間男+間男+間男……)
    /夫(小林 薫)×妻(藤谷美和子)× 未練男(松田優作)
   =間男x÷未練男
   ≒間男

あくまで仮説である。すべての映画化作品に当てはまるわけではない。

偶然の気まぐれにより、藤谷美和子の演じた女は定数である。変数である男たちは彼女をめぐって争奪戦を繰り広げる。
彼女は決して魔性の女ではない。男が放っておけない愛らしい魅力がある。その魅力は、外向きにしろ内向きにしろ、つか脚本と森田演出によって、コミカルに味つけされた。


つか公平な世の中になって欲しい。そう願った在日韓国人二世、つかこうへい氏が亡くなった。ご冥福をお祈りします。
  (注釈3)

追伸:2011年に俳優の原田芳雄さん、監督の森田芳光さん、2012年に監督の若松孝二さん、相次いで映画界の巨匠が亡くなられた。ご冥福をお祈りします。





注釈1、「寝盗られ宗介」(監督:若松孝二)
    日本映画 1992年製作
    原作、脚本:つかこうへい
    キネマ旬報主演男優賞(原田芳雄)助演女優賞(藤谷美和子)受賞

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注釈2、「それから」(監督:森田芳光)
    日本映画 1985年製作
    原作:夏目漱石
    日本アカデミー賞最優秀助演男優賞(小林薫)受賞
    キネマ旬報日本映画監督賞受賞

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posted by マンハッタン坂本 at 20:59 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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