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2010年12月02日

ベートーヴェンの嫌いな日本人っているのだろうか。



ベートーヴェンの嫌いな日本人っているのだろうか。
introducing 「敬愛なるベートーヴェン」「バルトの楽園」「時計じかけのオレンジ」

僕は裁縫が苦手である。嫌いだと言っていい。ボタンつけなんかしたことがない。理由はそれだけではないが、シャツは大抵コム・デ・ギャルソンを買う。下町の職人さんが頑丈にひとつひとつ縫っているからだ。

想像して欲しい。僕が縫い針の穴に糸を通している姿を。まるで立川志の輔が演じる公民館の主任だ。彼はリフォーム屋のおばさんを大晦日のママさんコーラスへ送り出すため、助っ人を買って出る。「まつり縫いって何?」とオチを言ったあと、タキシードに着替え、指揮をする。ママさんたちが合唱する「歓喜の歌」を。
  (注釈1)

「歓喜の歌」は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調作品125の第4楽章の主題である。
日本国民は、ベートーヴェンの交響曲の中で“第九”が一番好きである。戦前、戦後のみならず戦時中でも、大晦日に限らず演奏会を開く。終戦2年前には、日比谷公会堂で行われたという。
信じられますか? ベートーヴェンが同盟国ドイツの作曲家であり、戦意高揚のためだ。

こんばんは、マンハッタン坂本です。

 
“第九”が初演されたのは、1824年5月7日、ウィーンのケルントネル門劇場である。「敬愛なるベートーヴェン」は、それにまつわる架空の物語だ。
 

初演を4日後に控えたベートーヴェン(エド・ハリス)のアパートに、音楽学校の優秀な学生であるアンナ(ダイアン・クルーガー)が現れる。彼女は専属の写譜師の代わりに「合唱」のパート譜面を届けに来たのだ。

彼女の目に映る憧れのベートーヴェンは、思いがけなく粗暴で下品だった。難聴のためにフードのような反響紙をつけてピアノを弾くのはやむを得ない。小娘が修正写譜したことが信じられないのも仕方ない。気難しく傲慢なのも我慢する。だが目の前で裸になりケツを見せられたのは許せない。
それでも逃げ出さないのは、マエストロと共同作業ができるからだ。神にもっとも近い音楽家が傑作を完成させる手助けをしているからだ。

「頭には音が満ちている。わき上がる音を書くのが唯一の安らぎだ。その代償として、神は私の聴覚を奪ってしまった」

本番を直前にして、ベートーヴェンはアンナに向って弱音を吐く。
オーケストラの前に立つべートーヴェン。彼の目に入る場所に座った彼女は、譜面を見ながら彼の指揮を指揮する。まさに共同作業だ。

息を呑むようなオーケストラの演奏と大合唱が終わり、観客が総立ちとなり拍手喝采を送る。アンナはベートーヴェンに駆け寄り、観客の方を振り向かせる。彼の耳にやっと満場の拍手が響いてきた。
  (注釈2)



日本では、1918年6月1日、板東俘虜収容所でドイツ人捕虜によって初演された。「バルトの楽園」は、それにまつわる実話に基づいている。


松江所長(松平健)は、会津藩士だった父親ゆずりのカイゼル髭が自慢である。そのバルト(髭)は似合わないと、チンタオで降伏したハインリッヒ総督(ブルーノ・ガンツ)が言う。我々は捕虜であっても野蛮人ではないとも言う。

松江は、大軍相手に戦った総督以下ドイツ兵に対し敬意を表しており、地元住民との自由な交流を通して、ドイツの技術や文化を取り入れようとしている。俘虜製作品展覧会では、脱獄して住民に手当てを受けたカルルがつくったドイツ菓子やシップボトルが並ぶ。ハンゼン兵曹が指揮する同盟国のウィンナーワルツが演奏される。

ドイツは降伏し、ベルサイユ条約でドイツ兵は自由の身となった。

「我々は、ベートーヴェンのFreude(歓喜)を、感謝の印として、みなさんにプレゼントしたい」

ハインリッヒが日本語でそう挨拶すると、自由ドイツ兵によって“第九”が演奏される。ファゴットの代わりにオルガンを使った小編成のオーケストラと男声合唱隊によって。すべては勇気と力を与えてくれた板東の人々のためだった。

約百年前の演奏は時を超え、多くの日本人によって受け継がれている。
  (注釈3)



近未来のロンドン。15歳のアレックス(マルコム・マクドウェル)は、そろいの山高帽をかぶった3人の悪童たちを引き連れ、ウルトラ・バイオレンスに明け暮れる。老人への暴行、不良グループとの喧嘩、盗んだ車での暴走、郊外の一軒家へのサプライズ訪問。
不遜にも「雨に唄えば」を口ずさみながら老作家(パトリック・マギー)を足蹴にし、彼の妻をレイプする。
 
前夜に引き続きサプライズ訪問をし、勢いアレックスは相手を殴り殺す。しかも仲間の裏切りで置き去りにされ、警察に捕まる。いきつけのドラッグ入りミルク・バーで「歓喜の歌」を歌う女を仲間がからかったことがきっかけで、対立していたからだ。彼は自分の部屋に肖像画を飾るくらいベートーヴェンのファンだった。
 
残り12年の刑を逃れるため、アレックスはルドビコ式心理療法を買って出る。拘束衣を着せられ、瞼が閉じないようにクリップで固定され、不快な映像を見せられる。映画の暴力や輪姦シーン、ナチス・ドイツの行進や爆撃フィルムなどだ。しかもBGMに“第九”の第4楽章が流れる。

「ルートヴィヒを使うなんて。彼には責任がないのに。作曲しただけなのに」

吐き気をもよおしながらアレックスが叫ぶ。
政府の後押しで行われた実験は大成功に終わる。彼は、暴力とセックス、そして“第九”に拒絶反応を起こす体となる。
 
シャバに出たアレックスは、老人たちから襲われ、警官となった元仲間からリンチに合い、ほうほうの体で作家の家へたどり着く。
反権力とアレックスへの復讐に燃える作家は、密閉された部屋で“第九”を流し続ける。狂った彼は、窓を突き破り飛び降りる。
 
だが奇跡的に命拾いしたアレックスが目覚めると、高らかに鳴り響く“第九”が待っていた。彼の頭の中に再び快楽の世界が広がる。
  (注釈4)



ご多分にもれず、僕の住んでるところでも、熊本県民第九の会というのがあって、12月26日に、県立劇場で公演をする。




「歓喜の歌」を聴いていると、感動の涙が出る。聴き終わると、異常にテンションが上がっている。
まるで勝負服を着たときのように。まるでもったいないくらい旨いビールを飲んだあとのように。





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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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