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2010年12月08日

スーパースターが死ぬと、荒稼ぎができる。



スーパースターが死ぬと、荒稼ぎができる
introducing 「お葬式」「儀式」

不謹慎ながら、世界的に人気があればある程、その経済効果は絶大となる。マイケル・ジャクソンなんかその代表的な例だ。
レコード業界に携わる者の中には、自分たちのことを自嘲気味に「死の商人」と呼ぶ。

1980年12月8日、ジョン・レノンはニューヨークの自宅近くで、マーク・チャップマンに射殺された。
そのとき僕は、彼の最新アルバム、そして結果的に遺作となった「DOUBLE FANTASY」を勤めていた小さなレコード店で流していた。マークはジョンを射殺する前に、そのアルバムにサインをもらっている。

彼の訃報を耳にして、即座に僕はワーナー・パイオニア(現ワーナー・ミュージック・ジャパン)にオーダーを入れた。だが時すでに遅し。いち早く情報を入手した某レコード・チェーン店に在庫を押さえられていた。以来、30年間「死の商人」をやっている。
だからと言うわけではないが、僕にとってジョン・レノンの最高傑作は「STARTING OVER」「WOMAN」である。甲乙つけ難い。
  (注釈1)

こんばんは、マンハッタン坂本です。

映画界も例外ではない。日本ではあまりヒットしなかったが、2008年1月に亡くなったヒース・レジャーが出演した「ダークナイト」は本国アメリカで大ヒットし、「タイタニック」に次ぐ興行収入を記録した。
日本映画界では、そういった現象は稀だが、むしろ葬式にまつわる傑作が多い。
 (注釈2)


日本では「ダークナイト」の翌月に公開になり、翌年の2月に故ヒース・レジャーに助演男優賞を贈った米アカデミー賞授賞式で、外国語映画賞を受賞した「おくりびと」がもっとも記憶に新しい。しかも最終的には、受賞前の興行収入の2倍以上を稼いだ。
ストーリーを語るまでもなく、疑いなく日本映画の傑作だ。そして僕と同様、湯灌(ゆかん)・納棺を専門とする職業の存在を知った人も多いと思う。
 
特に主演の本木雅弘の所作が素晴らしい。「ファンシイダンス」で無駄のない美しい作法に魅了される若い修行僧を演じて以来、彼にとって念願の企画だっただけに肝入りだ。長廻しのエンディングを含めた仏衣への着せ替えは芸術的とも言える。

それでも主人公が死化粧を施す父親役の峰岸徹さんが、公開直後に亡くなったのも因縁というものだ。
  (注釈3)



当然の如く生前から「お葬式」の伊丹十三監督のお葬式とマスコミに書き立てられることを念頭において製作された「お葬式」も疑いなく傑作である。


俳優夫婦の井上侘助(山崎努)と雨宮千鶴子(宮本信子)のCM撮影中、千鶴子の父親が亡くなったという訃報が入る。初めて葬式を出す侘助にとって分からないことだらけだ。参ったなと言いながら妻の両親が住む別荘へと駆けつける。
三河から来た仏の兄に口を出されつつ納棺の儀を行い、住職に出すお布施の相場を相談し、「冠婚葬祭入門」のビデオを見ながら挨拶の練習をする。

あろうことか、手伝いと称して愛人の良子まで押しかけて来る。付き人の青木が撮影する通夜の準備が終了するまではおとなしかったが、酒が入った途端にうるさくなる。仕方なく追い返そうとすると、だだをこねられ森の中で性交する羽目になる。
事が終わるまで、千鶴子は無表情に丸太のブランコを揺らす。

正座した全員の足がしびれるくらい長い住職(笠智衆)の読経が終わり、通夜の客が帰る。
千鶴子は、母親のきく江(菅井きん)と従兄の茂と一緒に父親の好きだった「東京だよおっ母さん」を歌う。

「俺は春死ぬことにしよう。俺が焼ける間、外は花吹雪。いいぞ」

雨宮家の葬式も終わり、火葬場で煙草を吸いながら侘助は千鶴子に向かってそう言う。

心配していた精進落としの挨拶も、喪主のきく江が代わりに締めくくる。夫の手を握っておくれなかった心残りがしんみりと伝わる言葉だった。
  (注釈4)



僕が大学生として19歳で上京し、最初に衝撃を受けたのは大島渚監督の「儀式」である。60年代学園闘争の一応の終末を経た1971年における、大島なりの戦後25年の総括と言える作品だ。その情念を武満徹の音楽が見事にサポートした。


戦時中内務省の官僚、戦後天下り先の公団総裁となった桜田家の家長・一臣(佐藤慶)の屋敷に、長男の嫁とその息子が満洲から帰って来る。

「日本に帰るってことは、日本人に捕まるってことだった。」

終戦で自殺した父親の代わりに桜田家を継ぐ孫の満洲男(河原崎健三)は、ロシア人にも満人にも朝鮮人にも捕まらず引き揚げて以来、結婚式や葬式でしか顔を合わさない複雑な血縁関係の親戚に心乱される。祖父の妾の子らしいおじたち、おばの節子(小山明子)、そしておばの娘で皮肉屋の律子(賀来敦子)、おじ進の子・忠、祖母に可愛がられている輝道(中村敦夫)。

昭和22年、父親の一周忌。13歳の満洲男は子供たちだけで三角野球をする。そこに恋心を抱いた節子が審判で加わる。

昭和27年、母親の通夜。甲子園出場で死に目に会えなかった満洲男は、節子の目の前で野球道具を焼き捨てる。そのあと、節子から父親の遺書を手渡され、二人の関係を知った一臣から何やら節子との決着を見せられる。その反動で律子とキスをする。

その4年後、共産党のおじの結婚式。戦犯として中国で服役し帰国したおじの進が加わる。その夜、節子が真剣で自害する。

昭和36年、祖父の面子のため、満洲男は政財界の大物が列席する前で花嫁のいない結婚式を行う。その茶番に反発した忠が式の直後、自動車事故で死に通夜に一変する。
姿なき花嫁を相手に初夜の真似事をする姿を見て祖父が激怒し、取っ組み合いになる。さらに遺体を引っ張り出して忠の棺桶に入った満洲男は、その中で勢い律子を抱きしめる。輝道は律子の手を握りしめ、桜田家を去る。

10年後、ついに一臣が他界する。喪主となり疲れ果てた満洲男を、通夜に来た律子が抱いて慰める。そこへ「テルミチシス/テルミチ」の電報が届き、南海の離島に住む輝道のもとへと向かう。だが全裸で自決した輝道の遺書を読んだ律子は、寄り添い毒を飲む。

満洲男は、子供たちだけで三角野球をした情景を思い浮かべ、振りかぶる。捕手の輝道のうしろには、憧れの節子の姿があった。
 
戦犯と言うべき一臣は、一貫していかめしく儀式の裏表を見据えている。そんな彼が一度だけむせび泣いた。真の跡継ぎである輝道が桜田家を去ったときだ。
  (注釈5)
2010年、一臣を見事に演じた佐藤慶さんも81歳で他界した。




「おくりびと」誕生の原点となる「納棺夫日記」を記した青木新門は、「儀式」の桜田満洲男と同じく満洲からの引き揚げ者だ。
8歳で幼い弟妹を荼毘に付した彼の原体験は、地面に耳を当て死んだ弟の泣き声を聞こうとする満洲男の姿を思い起こさせる。
  (注釈6)


これまた不謹慎ながら、お通夜では無条件に酒が飲める。それも上等の酒にありつける。





注釈1、「ダブル・ファンタジー」(アーティスト:ジョン・レノン&オノ・ヨーコ)
1980年11月発売 原題:Double Fantasy
グラミー賞アルバム・オブ・ザ・イヤー受賞

メーカー:EMIミュージック・ジャパン
メディア:CD

注釈2、「ダークナイト」(監督:クリストファー・ノーラン)
アメリカ・イギリス映画 2008年製作 原題:The Dark Knight
米アカデミー賞助演男優賞(ヒース・レジャー)、音響編集賞受賞
ゴールデングローブ賞助演男優賞受賞
英アカデミー賞助演男優賞受賞
日本アカデミー賞海外作品賞受賞
ダークナイト [Blu-ray] / クリスチャン・ベール, マイケル・ケイン, ヒース・レジャー, ゲイリー・オールドマン, モーガン・フリーマン (出演); クリストファー・ノーラン (監督)



    メーカー:ワーナー・ホーム・ビデオ
    メディア:Blu-ray





注釈3、「おくりびと」(監督:滝田洋二郎)
日本映画 2008年製作 英題:Departures
米アカデミー賞外国語映画賞受賞
モントリオール国際映画祭グランプリ受賞
日本アカデミー賞最優秀作品賞、主演男優賞(本木雅弘)
助演男優賞(山崎努)、助演女優賞(余貴美子)
監督賞、脚本賞、撮影賞、昭明賞、録音賞、編集賞受賞
キネマ旬報ベストテン第1位
おくりびと [DVD] / 本木雅弘, 広末涼子, 余 貴美子, 吉行和子, 笹野高史 (出演); 滝田洋二郎 (監督)


    メーカー:アミューズ・ソフト・エンタテインメント
    メディア:DVD




  

注釈4、「お葬式」(監督:伊丹十三)
日本映画 1984年製作 英題:The Funeral
日本アカデミー賞最優秀作品賞、主演男優賞(山崎努)
監督賞、脚本賞、助演女優賞(菅井きん)受賞
キネマ旬報ベストテン第1位

伊丹十三DVDコレクション お葬式 / 山崎努, 宮本信子, 菅井きん, 大滝秀治, 津川雅彦 (出演); 伊丹十三 (監督)



    メーカー:ジェネオン・エンタテインメント
    メディア:DVD





注釈5、「儀式」(監督:大島渚)
日本映画 1971年製作 英題:The Ceremony
キネマ旬報ベストテン第1位

DVD-BOX 大島渚 3 / 河原崎健三, 賀来敦子, 中村敦夫, 佐藤慶, 小山明子 (出演); 大島渚, 田村孟, 佐々木守 (脚本); 大島渚 (監督)

    

     メーカー:紀伊國屋書店
     メディア:DVD





注釈6、「納棺夫日記」(著者:青木新門)
1996年初版

納棺夫日記 (文春文庫) [文庫] / 青木 新門 (著); 文藝春秋 (刊)  



     出版社:文藝春秋
     メディア:文庫
     


 
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posted by マンハッタン坂本 at 23:54 | Comment(1) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは(?)という時間では ないのですが 初読で初コメです。以前のように 紹介された映画を観たくなりそうです。早速 ポチッと。36位でしたよ。ガンバレ〜〜〜
Posted by くろねこここ at 2010年12月10日 00:52
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