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2011年01月15日

真面目なサラリーマンほど、巻き込まれやすい。


                                                       追悼:高峰秀子さん

真面目なサラリーマンほど、巻き込まれやすい。
introducing 「僕らはみんな生きている」「風花」「黒い画集―あるサラリーマンの証言」「張込み」

アクション映画の最高傑作である「ダイ・ハード」のニューヨーク市警ジョン・マクレーン刑事は、ロサンゼルスの高層ビルに妻を訪ねるが、テロリストと称する国際強盗団の占拠に巻き込まれ、孤軍奮闘する。
そのとき日本人のサラリーマン社長は、金庫のパスワードを教えなかったため、あっ気なく銃殺される。

ところが日本映画の場合、殺されることはないにしろ、のっぴきならない状況に陥ることがある。
その状況をある程度覚悟していた者もいれば、泥酔していたからだと諦める者もいれば、因果応報だと途方に暮れる者もいる。

こんばんは、マンハッタン坂本です。


建設会社の営業マン・高橋(真田広之)は、一週間の予定でバングラデシュ内の小国タルキスタンに出張する。橋建設のプレゼンで支店長の中井戸(山崎努)をサポートするためだ。だが軍の実力者カーツ大佐のパーティで、ライバル会社に契約を奪われたことを知り落胆する。その途端ゲリラに襲われる。

「私たちは日本のサラリーマンです」と現地語で叫びながら、ライバル会社の富田(岸部一徳)と升本(嶋田久作)と上司の中井戸と共に高橋は、市街戦から抜け出す。
お抱え運転手だったゲリラの一人に教えられた通り、高値で買ったジープに乗り海に出る。そして空港に向かってジャングルへ入る。

仕掛け爆弾があるため、30分おきにジャンケンで先頭を決めて進む。途中言い争いをしながら、記念写真を撮りつつ、ある村にたどり着く。すると今度は政府軍のヘリが攻撃してくる。だが罪のない子供が血まみれになる様にたまりかねた中井戸が無線で中止させる。

村人の機転で逃げ延びた三人は、政府軍のスパイとして捕まった中井戸を助けるため、再びゲリラの本拠地に舞い戻る。そしてアナログ無線傍受機をデジタル無線傍受機に変換させる装置を、ビジネスマン根性丸出しで売り込む。

開放された中井戸が運転する帰りのオート三輪車の中で、四人は誇らし気に現地語で叫ぶ――
「私たちは日本のサラリーマンです」
  (注釈1)



キャリア官僚の廉司(浅野忠信)は、泥酔して勘定を払わず、コンビニを出た途端に店員に捕まる。運悪く週刊誌に騒がれ停職となり、やけになってまたまた飲み過ぎる。そしてゆり子(小泉今日子)と一緒に彼女の故郷である北海道へ行く約束をする。

だがそんな約束もゆり子が誰なのかも思い出せない。思い出せないまま彼女と北海道へ飛ぶ。
悪態をつきながら車を運転するうちに、彼女がピンサロ嬢で、雪が見たいと言ったことを思い出す。一人暮らしの東京を離れたかったことも。

ゆり子は、母親に預けてある娘に会いに行く。だが5年も任せきりだったので、ここで育てる気がないのなら駄目だと追い返される。

実家にも帰れない廉司は、ホステスに傷害の被害届を出され、電話でクビを言い渡される。再びゆり子と一緒にあてどもなく車を走らせ、雪が残る山の旅館にたどり着く。
一人温泉に入ったとき、ゆり子の脚に「死にます」と書いたことを思い出す。酔った勢いで彼女を道連れにしようとするが、振り切られる。

だがゆり子は本気だった。気づいた廉司は、山の中を探し回り、やっとのことで薬を飲んで横たわる彼女を発見する。必死で介抱した彼女が目覚め、廉司を強く抱きしめる。

再起を決意し娘と再会するゆり子。その様子を廉司はバックミラーで見続ける。
  (注釈2)



石野(小林桂樹)は入社20年目の平凡な課長。会社帰りに一杯飲んだあと、パチンコで稼いだ景品を手土産に浮気相手の同じ課の事務員・千恵子(原知佐子)のアパートへ行く。
だが、帰りに偶然すれ違った顔見知りの杉山に帽子で挨拶され、うっかり頭を下げてしまう。

三日後、その杉山が向島若妻殺人事件の容疑者として逮捕される。保険の外交に行く途中で、殺害推定時間に近所に住む石野に出会ったと証言する。
慌てた石野は、執拗な警察の事情聴取でも、弁護士を伴った杉山の女房に泣きつかれても、会っていないと嘘をつき通す。浮気がバレることを恐れたからだ。

「二本立てで、最初が『西部の嵐』、二本目が『パンと恋と夢』でした」

念のため千恵子に引っ越しをさせた石野は、そのとき映画を見ていたと裁判で偽証する。

引っ越し先のアパートに住む大学生・松崎と仲良くなった彼女は、借金返済の金を都合しないと二人の関係をバラすぞと松崎から脅される。
千恵子を見染めた若者も現れ、石野は別れる潮時だと覚悟する。
念のため、松崎の友人・森下(児玉清)に受け渡しの立ち合いを頼む。暇つぶしに映画を観たあと金を持って森下のアパートへ行く。すると血まみれの松崎の死体が転がっている。約束の時間が過ぎてしまい、取り立て屋と松崎の間で言い争いになったからだ。

「僕は今日、本当に見てたんだ。題名は『夜ごとの美女』と『お嬢様お手やわらかに!』の二本立て」

そう叫んでも信じてくれない警察に対し、石野は何もかも白状する。
真犯人も捕まり、杉山も無罪となる。石野も釈放されるが、すべてを失う。
  (注釈3)



2009年、松本清張生誕100年の年だった。
2010年、松本清張原作の傑作「黒い画集」に主演した小林桂樹さんが9月に亡くなった。「名もなく貧しく美しく」で聾唖者の夫婦として共演した高峰秀子さんも12月に亡くなった。ともに86歳だった。彼女もまた松本清張原作の傑作「張込み」に出演している。
  (注釈4)


横浜から汽車を乗り継ぎ、佐賀へやって来た警視庁捜査第一課の刑事、下岡雄次(宮口精二)と柚木隆雄(大木実)は、年の離れた銀行員の後妻におさまったさだ子(高峰秀子)の張込みを始める。
二人の目に映る彼女は、まるで生気のない平凡な主婦である。いつもエプロン姿だし、同じ時間に買い物に行く判で押したような日常をおくっている。質屋殺しの石井(田村高広)が上京する3年前まで、つき合っていた相手とはとても思えない。

予定の一週間が過ぎ、旅館を引き払う日、さだ子が突然買い物かごを持たず外出する。慌てて後を追う柚木は、祭りの人ごみにまぎれた彼女を見失う。やっと温泉町を通るバスに男と一緒に乗ったことを突き止め、急ぎタクシーで追いかける。

河原を歩く石井とさだ子を木陰から見守る柚木。張込みをするうちに可哀そうにさえ思えてきた彼女が子供のようにはしゃいでいる。殺人に使ったハジキを持っているはずの男は予想に反して心中する気配がない。

「あたし、家を出るの。何もかも今日からやり直すの」

二人が抱き合ったあと、さだ子は石井の不実をなじりながらも、驚くべき女の情熱を見せる。柚木の目には、信じられない光景だった。

温泉宿で石井を逮捕したあと、柚木は彼女に帰りのバス代を置いて立ち去る。今からだとご主人が帰ってくる時間に間に合う、と言い残して。
  (注釈5)


地味な役柄でありながら、ラストに涙した高峰秀子さんは、女の哀しさを見事に演じ切った。ご冥福をお祈りします。
  (注釈6)


僕にとって松本清張映画のベストは、第1位が「砂の器」で、第2位が「天城越え」である。第3位は「黒い画集―あるサラリーマンの証言」「張込み」だ。甲乙つけ難い。

緒形拳、田中裕子、小林桂樹、それぞれの俳優が演じた役柄は、親切な人間にもかかわらず、些細なことが切っ掛けでとんでもないことに巻き込まれる。因縁、冤罪、偽証。
大木実が演じたサラリーマン刑事だけが、殺人事件に巻き込むことを阻止する。情熱を秘めた平凡な主婦を。



サラリーマンに限らず、外で飲み過ぎて自分を見失うことがある。
気づくと、財布を盗られたり、衣服を着てなかったり、顔面に傷を負わされていることだってある。
我が家で映画を観ながら飲み過ぎたとしても、せいぜいストーリーを見失うくらいだ。





注釈1、「僕らはみんな生きている」(監督:滝田洋二郎)
日本映画 2005年製作 原題:We’re Not Alone
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注釈2、「風花」(監督:相米慎二) 
日本映画 2001年製作
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注釈3、「黒い画集―あるサラリーマンの証言」(監督:堀川弘道)
日本映画 1960年製作
脚本:橋本忍
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注釈4、「名もなく貧しく美しく」(監督:松山善三)
日本映画 1961年製作
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注釈5、「張込み」(監督:野村芳太郎)
日本映画 1958年製作
脚本:橋本忍
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注釈6、「わたしの渡世日記」(著者:高峰秀子)
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posted by マンハッタン坂本 at 17:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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