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2011年01月16日

たどたどしい三味線のどこが悪い?



たどたどしい三味線のどこが悪い?
introducing 「竹山ひとり旅」「津軽じょんがら節」「ナビィの恋」

僕が糸井重里のファンになった理由は三つある。
80年代、彼は西武流通グループのコピーライターだった。「不思議、大好き。」「じぶん、新発見。」が有名だが、何と言っても偉大なる映画監督ウディ・アレンをキャラクターに起用した「おいしい生活。」というコピーをこしらえたからだ。
僕は、1983年に出版された広告批評の別冊「糸井重里全仕事」を宝物のように持っている。

NHK教育テレビ「YOU」の司会ぶりも好きだ。「となりのトトロ」でサツキちゃんのお父さんを演じた声も好きだ。どちらも本職ではないが、彼が書いたコピーに通じる魅力にあふれている。
従って、「ほぼ日」のダーリンのファンではない。

そんな彼が三味線に挑戦し挫折したことがあるという。

こんばんは、マンハッタン坂本です。


糸井重里の言い訳によると、基礎の反復とおさらいというシステムが性に合わなかったらしい。分かるような気がする。
僕はと言えば、あらゆる音楽の中でもっともヴォーカルが好きだ。強制的にやらされた音楽の時間以外で、楽器に挑戦したことが一度もない。
よりによって三味線なんて無謀としか思えない。



2010年12月23日、初代高橋竹山の生誕100年メモリアル・コンサート「津軽竹山節」が行われた。オープニングは、竹山の弟子ら約40人による合奏だった。


3歳の時、麻疹をこじらせ半失明となった定蔵(林隆三)は、近くに住むボサマ(盲目の門付芸人)に15歳で弟子入りする。我が子をふびんに思い、百姓なら半年も喰える銭であっぱ(母親)(乙羽信子)が三味線を手に入れてくれたからだ。

17歳で独立し、厳冬の北海道や下北半島をひとり修業の旅に出る。だが下手な三味線と唄の門付では、憐れみで食い物をめぐんでもらえるだけ。途中、物盗りや札売りや大黒舞いやあめ売りと道連れになり、一向に上達しない。

風の便りに、あっぱが旅先に訪ねてくる。最初は安否を気遣って、次は縁談を持って。三度目は初婚にしくじった同士をくっつかせるために。
定蔵はしぶしぶ子持ちのイタコ、フジ(倍賞美津子)を嫁に迎える。

転機となったのは、活動弁士の伴奏をしたあと、浪曲三味線を耳にしたときである。
曲師の婆さんに見込まれた定蔵は、すべてを伝授され、浪曲師の伴奏で腕を上げる。だが世の中は戦争一色となり、門付ではめしが食えなくなる。

「目あきは汚ねえ」

仕方なく按摩(あんま)になるための盲唖学校に通うが、教師が孕ませた生徒を押しつけられ、我が家に連れ帰る。だまされたことを知った定蔵は、三味線の胴にバチを突き刺す。

尺八で門付をする定蔵を追いかけてきたのは、あっぱと妻だった。フジは定蔵を抱き締め、大切に抱えてきた三味線を手渡す。
あっぱは、声をはりあげ子守唄の「十三(とさ)の砂山節」を歌う。鬼気迫るものがあり、定蔵も三味線を激しくかき鳴らす。

津軽民謡の神様、成田雲竹と出会うのは、そのあとである。

「竹山ひとり旅」を語り終わった高橋竹山は、即興で演奏を始める。
  (注釈1)



第3部では、世界的に活躍する上妻宏光が代表的な「津軽じょんがら節」を披露した。
僕が初めて竹山の演奏を耳にし、魅了されたのは同名のATG映画である。
 

津軽のさびれた漁村に連れてこられた徹男(織田あきら)は、ひとり川釣りをする盲目の少女ユキ(中川美穂子)と出会う。俺は一級航海士だとウソをつくが、すぐにイサ子(江波杏子)の連れだとバレる。からかっているうちにユキが川に落ちる。謝りながら家まで背負って送りとどけるが、泣きやまない。仕方ないので口づけして去る。

「三味線弾いて、唄歌って、まわって歩けば、いいべなあ」

あんちゃと呼んですっかりなついたユキは、昔いためくらの門付芸人・瞽女(ごぜ)さんになりたいと徹男に向って言う。

イサ子が働く飲み屋のオヤジから炊きつけられ、徹男はユキに客をとらせる前金を受け取る。ヤクザの面子が許さないからだ。
客が待つ飲み屋の2階に無理やりユキを残し、立ち去る。
だが、瞽女姿のユキが目に浮かび、津軽三味線の響きが心を切り裂く。

6年前に荒波に呑まれた漁師の父と兄のために墓を建てるつもりで、生まれ故郷に戻ってきたはずのイサ子は、すべてに絶望し、徹男を残して立ち去る。「よかったねえ。故郷が見つかって」と言い残して。

徹男は、ユキの家に住むようになり、仲良くなったじいさん(西村晃)とシジミ取りに精を出す。そこへサングラスとスーツの男たちが現れる。

挿入される斉藤真一の紅く染まった瞽女絵が、より一層情念を揺さぶり続ける。
  (注釈2)



連絡船で沖縄・粟国(あぐに)島にやってきた福之助(村上淳)は、牛の放牧場で持主の恵達おじぃ(登川誠仁)と出会う。

「女はね、初めての男が、いつまでも忘れられないもんだよ」

いつも持ってくる三線(さんしん)(=琉球三味線)を適当に弾きながら、恵達がそんなことを言う。気前よく煙草をあげたからだ。

家まで連れて来られ、連絡船で見かけた孫の奈々子(西田尚美)が迎える。オッパイの小さいのが好きだってよ、と紹介され、そんなこと言ってないスよと慌てる。
庭にはナビィおばあ(平良とみ)が育てたブーゲンビリアの朱い花が咲き乱れている。

洗濯物を取り込む奈々子を眺めながら、福之助は三線の手ほどきを受ける。沖縄民謡「国頭ジントヨー」をもじった「モンデヨー」をおじぃが歌う。

ナビィおばあの初恋の相手(平良進)がブラジルから戻って来ている。
すっかり住みついた福之助は、奈々子と一緒におじいが語る悲恋物語に耳を傾ける。「十九の春」が流れ、60年前にサンラーが追放されたいきさつを知る。

福之助がたどたどしく三線を弾いている。
その夜、ロウソクの光で、ナビィはサンラーへの想いをしたためる。
ブーゲンビリアの花びらが入った手紙を受け取ったサンラーは、魚を手土産に恵達のところへ挨拶に来る。

恵達おじぃの予想通り、二人は島を去る。
見送った奈々子は、「十九の春」メドレーに釣られ、福之助を婿に迎える。
村人が集まってき、恵達おじぃの三線早弾きで、歌い踊り騒ぐ。
  (注釈3)



琉球三味線を聴くと、思わず踊りたくなる。
津軽三味線を聴きながら、泡盛をやるのもいい。



糸井重里が提案した「おいしい生活。」とは、自分にとっておいしい時間を過ごすことだ。たどたどしく三味線をやるのもいいじゃないか。

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ウディ・アレンのおいしい生活
マイルズ・パーマー
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初版:1982年
メーカー:CBSソニー出版
メディア:単行本


2011年元旦、熊本初の活動写真常設館「電氣舘」(現、Denkikan)100歳を迎えた。
自ら活動弁士として活躍した窪寺喜之助によって創設されたのが明治44年(1911年)である。
初代高橋竹山も窪寺喜之助もすでにこの世の人ではないが、100年経っても彼らの魂は生き続けている。

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熊本新市街
熊本新市街 / alberth2


注釈1、「竹山ひとり旅」(監督、脚本:新藤兼人)
     日本映画 1977年製作
     英題:The Life of Chikuzan:Tsugaru Shamisen Player
     モスクワ国際映画祭監督賞受賞

     メーカー:パイオニアLDC
     メディア:DVD

注釈2、「津軽じょんがら節」(監督:斉藤耕一)
     日本映画 1973年製作
     キネマ旬報ベストテン第1位、監督賞、女優賞(江波杏子)受賞

     メーカー:ジェネオン・エンタテインメント
     メディア:DVD

注釈3、「ナビィの恋」(監督、脚本:中江裕司)
     日本映画 1999年製作 英題:Nabbie’s Love
     芸術選奨新人賞受賞

     メーカー:バンダイビジュアル
     メディア:Blu-ray
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posted by マンハッタン坂本 at 21:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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