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2011年01月31日

ジョークは学ぶものじゃなく、身につけるものだ。



ジョークは学ぶものじゃなく、身につけるものだ。
introducing 「レニー・ブルース」「アニー・ホール」

大好きなコーラス・グループであるビージーズの歌に、邦題で「ジョーク」というのがある。
僕は長い間、ロビン・ギブが歌い出す歌詞を「I Studied a Joke」と聴き間違えていた。つまり、僕は冗談を学んだ。と思い込んでいたわけだ。
 
僕は子供の頃から冗談が下手で、それをコンプレックスに思っていた。面白いことを言って同級生たちを笑わせているやつが羨ましくて仕方なかった。だから僕にぴったりのテーマ曲だと思い、出だしだけを英語で歌い、あとは適当に口ずさんでいた。

ところがある日、訳詩を読んで愕然とした。そこにはこう書かれてあった――「冗談を言ってみたんだ。そしたら世界中が泣き出したよ」
  (注釈1)

こんばんは、マンハッタン坂本です。


「レニー・ブルース」(ダスティン・ホフマン)は、50年代から60年代前半にかけてダーティな言葉を使う攻撃的な漫談家だった。妻でストリッパーのハニー(バレリー・ぺリン)との私生活やドラッグ中毒をネタに、クラブでマシンガンのように喋りまくった。

「男が女房に求めるのは、日曜学校の先生と高級娼婦の両面性だ」

また、大きな問題は言葉の抑圧だと言って、痛烈な社会風刺をした。

「ケネディ大統領がテレビに出て、ニガー、ニガー、ニガー、と連呼したら、何の意味もなくなる」

ある夜レニーは、性的隠語を使ったかどで逮捕される。彼にとって、聴衆の偽善を暴いて笑いに変える道具に使っただけだ。裁判で無罪を勝ち取ってからは、人気が沸騰し稼ぎまくる。だが出所したハニーの影響で、ヤクの不法所持とわいせつ罪で何度も捕まる。

その当時公共の場で許されなかった下品な言葉を駆使し、ハニーを笑わせ、関係者を笑わせ、何よりも観客を笑わせ、自殺するまで生涯エンターテイナーだった。


ユダヤ人のレニー同様、ステージの上でしか喝采されなかった黒人のルイ・アームストロングはこう言っている――「普通の人間として、公平に扱って欲しかった」
  (注釈2)
 


大不況と重なった少年時代、日本では極楽コンビと呼ばれたローレルとハーディのドタバタ喜劇映画に陶酔した作家のカート・ヴォネガットは、強烈な皮肉屋となった。

「うちの大統領(ジョージ・ブッシュ)はクリスチャンだって? アドルフ・ヒトラーもそうだった。」

それでもこんな温かい言葉を残している。

「唯一わたしがやりたかったのは、人々に笑いという救いを与えることだ。ユーモアには人の心を楽にする力がある。アスピリンのようなものだ。」



僕にとってコメディ映画のバイブルと言うべき「アニー・ホール」は、子供の頃からグルーチョ・マルクスに夢中で、漫談の台本書きからキャリアをスタートさせたウディ・アレン漫談家だった頃の実体験をもとに、監督、主演をした最高傑作である。

数十回繰り返し見ても飽きないくらい、筆舌に尽くしがたい視覚的ギャグと早口のジョークにあふれているので、羽佐間道夫の吹き替えも引用する。

「『私みたいな人間を会員にするようなクラブには入りたくない』 この噺は、僕の女性関係での気持ちをよく表してます。」

のっけからスタンダップ・コメディアン流に、観客に向かってアルビー・シンガー(ウディ・アレン)がジョークを飛ばし、アニー・ホール(ダイアン・キートン)との想い出話を始める。

何度見ても可笑しい名シーンばかりなので、一番気に入っている会話を紹介する。
アルビーが初めてアニーのアパートに来たとき、テラスでワインを飲みながら二人は、神経質にお互いの本音を探り合うように言葉を交わす。
括弧の中は口に出していない台詞だ。その落差が絶妙で、まるでFMラジオのようだ、とアルビーはあとでオチをつける。

アルビー 「あの写真を君が撮ったの?」
アニー  「ほんのお道楽よ」  (カッコつけてるわ)
アルビー 「すばらしい。才能があるよ」  (いい女だ)
アニー  「本気で写真の勉強をしたいの」   (バカにされてるのかしら)
アルビー 「新しい芸術形態だ。美的基準も未確立で」   (裸にしてみたい)


ラストは、アニーが歌う「Seems Like Old Times」をバックに、彼女との想い出の場面がフラッシュ・バックされる。

アルビーが昔の小噺をする。

「精神医に男が“弟は自分がメンドリだと思い込んでます”、医師は“入院させなさい”、男は“でも卵が欲しいのでね”」

そしてこう締めくくる。

「男と女なんてのは、およそ非理性的で不合理なことばっかりで、それでも懲りずに付き合っていくのは、やっぱりみんな卵が欲しいからでしょうかな。」
  (注釈3)
Seems Like Old Times by ダイアン・キートン



レニー・ブルースに憧れたビートたけしは、コメディアンとしてではなく、映画監督としてフランスから最高級の勲章を貰った。
ウディ・アレンは、英国アカデミー賞最優秀脚本賞を6回受賞したことが象徴するようにヨーロッパで絶大な人気を誇っている。


例によって僕は冗談が下手なので、お気に入りの恋人同士の会話を紹介したい。

「私、本当はお酒飲めないけど、あなたと一緒だから飲みたい気分」
「じゃ、乾杯しようか。君の瞳に乾杯」
「私の肝臓が心配」

  (注釈4)



注釈1、「アルティメイト・ベスト・オブ・ビージーズ」(アーティスト:ビージーズ)
      「I STARTED A JOKE」収録

      レーベル:ワーナー・ミュージック・ジャパン
      メディア:CD+DVD


注釈2、「レニー・ブルース」(監督:ボブ・フォッシー)
      アメリカ映画 1974年製作 原題:Lenny

      メーカー:紀伊國屋書店
      メディア:DVD
    
注釈3、「アニー・ホール」(監督、脚本:ウディ・アレン)
       アメリカ映画 1977年製作 原題:Annie Hall
       米アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、
       主演女優賞(ダイアン・キートン)受賞 
       英アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞受賞

       メーカー:20世紀フォックス・ホーム・エンターテインメント・ジャパン
       メディア:DVD


注釈4、ハリガネロックのコント(CS「ルミネTHEよしもと#153」)
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posted by マンハッタン坂本 at 11:33 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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