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2012年02月07日

囚われ男はつらいよ。

Kurt Vonnegut, da morto
Kurt Vonnegut, da morto / bluinfaccia カート・ヴォネガット


囚われ男はつらいよ。
introducing 「戦場にかける橋」「コーカサスの虜」「スローターハウス5」

ニューヨーク・タイムズに向けて、こんな記事を書いている。

いい知らせと、悪い知らせがいくつかある。

(いい知らせ)「マーズ・アタック!」みたいなチャチな火星人によって、シリアのアサド大統領が誘拐された。蓋つきのスープ用深皿みたいな宇宙船に乗せたものの、火星人はアサドの罵詈雑言に耐えられず、やむなくサウジアラビア上空で放り出した。
(悪い知らせ)ニュージャージーでは、イラン人による反米デモが決行された。経済制裁に対する抗議である。
頭の禿げた有識者(匿名希望)がこう助言している――「朱レンガと野球バットを持ってぶち壊しに行くべきだ」   

ニューヨークのアルゴンクイン・ホテルに滞在した火星人に独占取材をした。
チビで紫色をした火星人の指導者は、頭に湯気を立てながらアサドの暴言の数々を事細かに語った。

「あれって、何が楽しいんですか?」突然彼女が私にたずねた。地球人の常識では考えられないが、どうも女らしい。「捕虜虐待とゴルフ」
何が楽しいのか私も理解できないと答えた。そしてある作家の言葉を引用してこう言った。「戦争はいかなるときもあり、それをくいとめることは氷河をくいとめるくらいたやすい作業だ。だが最近考えが変わった。原発を停めるくらいたやすい作業だ」
「ゴルフは?」
「芝生の上でやるスポーツの中では最悪だ。金がかかりすぎる」

取材中、私はラジカセでペンギン・カフェ・オーケストラの「ヨーデル」を繰り返し流し続けた。火星人の頭は爆発しなかった。

ハイホー、マンハッタン坂本です。

日本軍の捕虜となったイギリス軍の隊長・ニコルソン大佐(アレック・ギネス)は、ジュネーブ条約を盾に将校の労役を拒否し、長い間営倉に入れられる。
バンコクとラングーンを鉄道でつなぐ重要な任務を課せられた収容所所長(早川雪洲)は、やむなく大佐を開放する。クワイ河に架ける橋の建設が遅れているからだ。

大佐は、無秩序となったイギリス兵の士気を鼓舞し、有能な将校を使って効率的に建設を推し進める。その結果、与えられた期限までに橋を完成させる。
折しも、脱走に成功した米兵シアーズ(ウィリアム・ホールデン)が決死隊を伴って戻ってくる。そして橋に爆弾を仕掛ける。

今まさに最初の列車が橋を渡らんとしたとき、ニコルソン大佐は爆弾の電線に気づく。味方の攻撃に呆然としながら点火装置の上に倒れる。
「クワイ河に架けた橋」は、イギリス軍捕虜のプライドと共に空しく崩れ落ちる。
 (注釈1)



ロシアの新兵ワーニャ(セルゲイ・ボドロフ・ジュニア)は、チェチェン人の待ち伏せに遭い、上官と共に山奥の村に連れて行かれる。二人は、ロシア軍の捕虜となっているアブドゥルの息子と交換するために殺されなかったのだ。

捕虜交換に失敗したアブドゥルがやむなくワーニャの母親と交渉をする。
その間娘のジーナが優しく二人の世話をする。彼女は物静かな美少女だ。
地雷を探す危険な目に合わされた二人が脱走を決行する。だが上官が殺され、ワーニャは穴倉に入れられる。

村に伝わる踊りをジーナが披露する。その直後、兄が脱走し殺されたことを知る。
今生の別れに来るが、気が変り足かせの鍵を渡す。今まさにワーニャが逃げようとしたとき、父親が銃を持ってやって来る。

だが、射殺するふりをして開放してくれる。
逃げるワーニャの頭上に、ロシア軍の報復ヘリが飛んで来る。
 (注釈2)



ビリー・ピルグリム(マイケル・サックス)は、異星人によって時間の中に解き放たれた。
彼は、過去、現在、未来、そしてトラルファマドール星の檻の中、生まれる瞬間から死ぬ瞬間まで、自分の意志とは関係なくタイムリープしている。
ただ常に戻ってくるのは、第二次世界大戦中のドイツ、捕虜時代である。

戦友を死なせたのはお前のせいだ、いつか殺してやると責め続けるラザロ、それをかばう親切な元教師のダービーと共に、ビリーは美しい古都ドレスデンの「第5屠殺場」に収容される。監視するのは、老人と子供だけの武装兵である。

1945年2月13日夜、連合軍による無差別爆撃が古都を襲う。
捕虜たちは地下壕に避難する。翌朝地上に出ると、美しい建物がすべて破壊されている。廃墟の中から市民の遺体を運ぶ。遺体の山に火がつき、もくもくと黒煙が上がる。
ビリーの一生の中でもっとも過酷な光景である。

瓦礫の中から傷ひとつない陶人形を見つけたダービーがその場でドイツ兵に銃殺される。
41年後、ラザロがビリーの暗殺を果たす。
ビリーはその瞬間を何度も何度も体験する。そしてしみじみと述懐する。

「良い時だけを見て、生きればいいのだ」
 (注釈3)


のちの記録によると、イギリス空爆隊によるドレスデン無差別爆撃で約13万5000人が亡くなった。これは、原爆投下直後の広島での死者数をうわまわる規模だったという。そういうものだ。

原作者のカート・ヴォネガット(当時はジュニアがついた)は、ドレスデン体験を小説にするのに20年以上もかかった。何度も書き直した末、やっとSFスタイルで完成させた。

序文で、小さな子供を持つ母親とのエピソードを披露している。
カートの戦友の妻である彼女は、戦争を助長する責任の一端は、本や映画にあると考えている――「戦争中、あなたたちは赤んぼうだったじゃないの」

そこでカートはこう誓う――「フランク・シナトラやジョン・ウェインが出てくる小説にはしない。そうだ、『子供十字軍』という題にしよう」
 (注釈4)


かつてコショウ争奪をめぐって、世界的な戦争に発展したことがある。
トロイ戦争や赤壁の戦いのように、一人の美女をめぐって戦争が勃発することもある。
だがそれは大抵、歴史家の創作だ。あるいは、映画人の創作である。そういうものだ。(So It Goes.)

2007年、カート・ヴォネガット氏は84歳で永眠した。そういうものだ。(So It Goes.)


酔っ払いとしては、特定の酒が原因で戦争が始まっては困る。
杯を酌み交わし、一件落着が理想的だ。






注釈1、「戦場にかける橋」(監督:デヴィッド・リーン)
      イギリス・アメリカ映画 1957年製作 原題:The Bridge on The River Kwai
      米アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、編集賞
      主演男優賞(アレック・ギネス)受賞
      ゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞、監督賞、ドラマ部門男優賞受賞
      英アカデミー賞作品賞、男優賞、脚本賞受賞
      テーマ曲「クワイ河マーチ」

      メーカー:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
      メディア:DVD

注釈2、「コーカサスの虜」(監督:セルゲイ・ボドロフ)
      カザフスタン・ロシア映画 1996年製作 英題:Prisoner of the Caucasus
      原作、トルストイ「コーカサスの捕虜」
      カンヌ国際映画祭批評家連盟賞、観客賞受賞

      メーカー:アップリンク
      メディア:DVD

注釈3、「スローターハウス5」(監督:ジョージ・ロイ・ヒル)
      アメリカ映画 1972年製作 原題:Slaughterhouse-Five
      音楽:グレン・グールド「ゴールドベルク変奏曲」
      原作:「スローターハウス5 または子供十字軍 死との義務的ダンス」(著者:カート・ヴォネガット・ジュニア)
      カンヌ国際映画祭審査員賞受賞

      メーカー:キングレコード
      メディア:DVD

注釈4、「スローターハウス5」(著者:カート・ヴォネガット・ジュニア)
      初版:1969年 
      原題:Slaughterhouse-Five,or The Children’s Crusade:A Duty-Dance With Death

      出版社:早川書房
      メディア:文庫本
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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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