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2011年02月09日

僕はいつも大学時代に戻りたいと思っている。

五校記念館.jpg
熊本大学・五校記念館

僕はいつも大学時代に戻りたいと思っている。
introducing 「虹の女神」「バック・トゥ・スクール」「ヤング・ゼネレーション」

それはたいてい道を歩いているとき――僕はしょっちゅう道を歩いているようなものだが、何かの拍子にふっとそう思う。

そんな出だしで、初めて長編小説を書いた。
正確には、「君は笑うかもしれないけれど」で始まり、「僕は君を守ってあげたい」で終わる。
正直言って大失敗作で、括弧の中の24文字で十分だった。

こんばんは、マンハッタン坂本です。

輸入盤屋と名画座、そしてサークルの部室が大学4年間の居場所だった。
当初、ソウル・ミュージックのカット盤(安価な輸入LPレコード)を手に入れるために東京じゅうの輸入盤屋を巡っていたが、いつの間にか名画座の住人となった。

デビュー直後の秋吉久美子や原田美枝子の新作映画を観るとき以外は、ヨーロッパ中心の名画を池袋文芸座で、大島渚作品を中心としたATG映画を今は亡き三百人劇場で鑑賞した。
文学研究会と放送研究会を股にかけて活動した。オリジナル脚本を書き、ラジオ・ドラマをオープン・デッキで録音したわけだ。

ピンク・レディーがデビューして以来、家庭用のVTRが次第に普及し始めた。
パソコンや携帯電話が普及する随分前のことである。



「虹の女神 Rainbow Song」は、大学の映画サークルで自主制作をした経験のある人には、たまらない作品に違いない。

小さな映像制作会社に勤める樋口(佐々木蔵之助)は、勉強のために渡米する優秀なスタッフ、佐藤あおい(上野樹里)の後釜に、彼女が紹介した岸田智也(市原隼人)を使っている。

智也は、あおいとは大学の同級生で、最初彼女の友人のストーカーだった。友人とのデート・セッティング代として一万円を渡したのが縁で、あおいが監督する自主制作映画に出演させられる。共演するうちに相手役の今日子を好きになるが、キス・シーンを拒否され、あおいが仕方なく代役を演じる。
強引に彼女について行ったお祭りで、あおいの全盲の妹かな(蒼井優)がわざとつぶやく――「お姉ちゃん何でも言うこと聞いてくれそう。岸田さんが一緒だからかな」

米旅客機の墜落で、あおいが死んだ。
世界を知ってこいとそそのかしたのは俺だと樋口が告白する。
告別式で樋口や映画仲間と一緒に、彼女がコダック・8ミリ・フィルムにこだわって制作した「地球最後の日」を観る。

かなから渡されたあおいの遺品の中に、智也は一万円札の指輪を見つける。一緒に水平の虹を見たときに彼女の指にはめたやつだ。
代筆を頼んだ今日子へのラブレターの裏にはこう書かれてあった――「優柔不断な所も好き。鈍感な所が好き。笑った顔が一番好き」
  (注釈1)



「バック・トゥ・スクール」は、タイトル通り57歳の親父が本気で大学生となり、キャンパスを引っ掻き回す、いかにもアメリカらしいスラップスティック映画だ。
 
中卒の学歴で、“ノッポ&デブ”社を大型衣料チェーン店に築き上げたメロン(ロドニー・デンジャーフィールド)は大の親バカ。後妻との離婚に成功した途端、意気揚々と大学に通う息子のジェイソンに会いに行く。
ところが自信のない息子は大学を辞めたいと言う。何事にも前向きなメロンは、頑張って一緒に授業を受けよう、と得意の買収でまんまと大学生の資格を取ってしまう。

「映画なら2時間ですむ」

うまいこと個人授業を受けた文学の美人教授から読書を薦められ、メロンはそう言い返す。
だが単位取得はままならない。カート・ヴォネガット論を書くのに彼の本を読むが、チンプンカンプン。本人を雇って提出するが、まるで理解していないと落第。
ずるがバレそうになり全科目口頭試問となる。息子と息子の友人(ロバート・ダウニー・Jr)の協力で猛烈に勉学に励む。何とかクリアしたメロンは、ちゃっかり文学教授と恋仲になる。
  (注釈2)

カメオ出演したカート・ヴォネガットは、彼の小説「スラップスティック」の序文でこう書いている――「結婚はテストの一つだ――みんなが真剣にそのテストに取り組むとき、そこに喜劇の可能性が生まれる。愛は、一度もそこで問題にされたことがない」
  (注釈3)



「ヤング・ゼネレーション」は、厳密に言えば大学生が主人公ではない。原題が「Breaking Away」つまり落ちこぼれという意味で、小さな大学町に住む若者の話だ。
 
インディアナ大学があるブルーミントンは石材採掘の町。
そこで中古車販売を営むデイブの父親(ポール・ドゥーリー)は、息子(デニス・クリストファー)にあきれ果てている。進学もせず仕事にも就かず、イタリア語で挨拶をし、イタリア・オペラを聴き、猫を勝手にフェリーニと呼び、イタリアの自転車レース出場を目指してトレーニングばかりしているからだ。おまけに、脚のすね毛まで剃っている。
 
そんなイタリアかぶれのデイブが女子大生のキャスリンと知り合い、留学生と偽る。女子寮に押しかけイタリア語で求愛のオペラ曲を歌い、すっかり仲良くなる。
一方、デイブの仲間であるマイク(デニス・クエイド)ら3人は、大学生たちからカッターズ(原住民)とバカにされ、騒動を起こす。

「若くてスリムで力があって、仕事に誇りがあった。大学も建てたんだ。」 

石工だったデイブの父親が息子に向かって元気づける。100マイル・レースに参加したものの、歓迎していたイタリア・チームから妨害されすっかりイタリア熱が冷めたからだ。キャスリンにも本当のことを告白していた。
だが息子が大学に受かったことを知り、大いに喜ぶ。

4人一組で争う大学500マイル・レースに招待されたデイブたちは、堂々とカッターズとプリントされたTシャツを着て参戦する。そして僅差で優勝を果たす。
 
自転車に乗ったデイブの父親が擦れ違い様にフランス語で挨拶される。驚き振り返ると、大学生の息子だ。並走するのは女子留学生だった。
  (注釈4)



僕と同じ時期に同じ大学に通った知り合いの大学生の中に、一人だけ有名人がいる。
彼の名前は、戸田誠之助といい、ゲーデル賞を日本人で唯一受賞した人物だ。
現在、日本大学文理学部情報システム解析学科の教授である。

放送研究会で現役最後のラジオ・ドラマを製作した際に僕は、部員であり学科の後輩でもある彼に、予備校生Aの役で僕が書いた台詞を言わせた――「早く大学に入って、酒飲んで、恋がしてえなあ」
2年生で退部した戸田誠之助は、大学院を卒業し、理学博士となり、理論計算機科学分野の世界的な権威となった。
大学で本格的に酒を飲み出した僕は、女の子に恋するはずが映画に恋をし、現在に至っている。
 

三十年以上前に大学生だった頃、僕は放送研究会の部室にこもり、講義をほとんど受けなかった。山下達郎だって似たようなものだ。今は我が家の近くに熊本大学があり、受けたくても講義を受けられない。時々キャンパスや図書館に出没するだけだ。


夜は酒を飲み、映画ばかり見ている。
思えば、大学時代とちっとも変っていない。







注釈1、「虹の女神 Rainbow Song」(監督:熊澤尚人)
         
      日本映画 2006年製作
      原作・脚本:桜井亜美

      メーカー:アミューズ・ソフト・エンタテインメント
      メディア:DVD

注釈2、「バック・トゥ・スクール」(監督:アラン・メッター)
      アメリカ映画 1986年製作 原題:Back to School

      メーカー:RCAコロンビア・ピクチャーズ・ビデオ
      メディア:VHS

注釈3、「スラップスティック―または、もう孤独じゃない」(著者:カート・ヴォネガット)
      初版:1976年 原題:Slapstick

      出版社:早川書房
      メディア:文庫本

注釈4、「ヤング・ゼネレーション」(監督:ピーター・イエーツ)
      アメリカ映画 1979年製作 原題:Breaking Away
      米アカデミー賞オリジナル脚本賞受賞
      ゴールデングローブ賞(コメディ・ミュージカル部門)作品賞受賞

      メーカー:20世紀フォックス・ホーム・エンターテインメント・ジャパン
      メディア:DVD
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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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