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2012年10月29日

イタめしを食うところ、復讐の香りが漂う。


"The Heart of Little Italy" / Tony the Misfit


イタめしを食うところ、復讐の香りが漂う。 
introducing 「ドゥ・ザ・ライト・シング」「レオン」「ディナーラッシュ」

ダニー・アイエロというマンハッタン生まれの俳優をご存知だろうか。

僕が初めて彼の存在を意識したのは、「カイロの紫のバラ」という映画である。
1930年代半ば、世界恐慌の影響で職がなく、毎日遊んでばかりいるニュージャージーのダメ亭主で、ウェイトレスをしながら生活を支えるのは妻のシンシア(ミア・ファーロー)である。
彼女の唯一の楽しみは毎日のように同じ映画を観ることで、やがてスクリーンから抜け出てきた映画の主人公と彼女は恋に落ちる。
  (注釈1)

だが僕の好きなダニー・アイエロは、常にニューヨークにいてイタめし屋を営んでいる。
変幻自在だが、どんなシチュエーションでも頼りになるイタリア系のオヤジだ。
ときに汗水たらして働く泥臭さがあり、ときに裏社会と繋がった凄みがあり、ときに昔気質で上品さを失わない。

ハイホー、マンハッタン坂本です。


彼は初め、ブルックリンの黒人街で25年もピザ屋を営むサルに扮した。

宅配に黒人のムーキー(スパイク・リー)を雇っている。店の壁にはイタリア人の写真を飾っており、それが気に入らない常連がボイコットすると騒ぎ出しても、やり過ごす。
息子のピノ(ジョン・タトゥーロ)は黒人嫌いで、いい加減店を移転しようとつめ寄る。
あいつらは俺が作ったピザを食って育ったんだ、とサルは相手にしない。

猛烈に暑い一日だった。能天気なDJラブ・ダディー(サミュエル・L・ジャクソン)もさすがに声に元気がない。
些細なきっかけから騒動が始まり、制圧に来た警官がレディオ・ラヒーム(ビル・ナン)を窒息死させる。
暴走する黒人たち。気づくと、ピザ屋が焼き打ちに合っている。
  (注釈2)



次に演じたのは、リトル・イタリーで怪しげなレストランを営むトニーだ。

裏稼業で殺し屋に「レオン」(ジャン・レノ)を雇っている。
彼の依頼でライフル銃を調達する。一緒に暮らす12歳の少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)が殺された弟の仇を討つためだ。皮肉にもその仇が、トニーに殺しを依頼する麻薬課の刑事スタンフィールド(ゲイリー・オールドマン)だった。
 
レオンの自爆のお陰で生き延びたマチルダは、泣きじゃくりながらトニーに助けを求めてくる。
だが彼は冷たく突き放す。
  (注釈3)



ところが「ディナーラッシュ」では、トライベッカの超人気レストラン“ジジーノ”のオーナー、ルイスとなる。

息子のウード(エドアルド・バレリーニ)はスター・シェフで、厨房の独裁者で、共同経営者にしてくれとせっついてくる。
副シェフのダンカンは庶民的な料理が得意なスゴ腕だが、ギャンブル狂で、1万ドル以上の借金を抱え込む。

自分の絵を飾っているウェイトレス(サマー・フェニックス)や賭けクイズに勝ち続けるバーテンダーなど、個性的なスタッフが揃った店には、様々な客が集まって来る。
人気アーティストを連れ立った口の悪い美術評論家、ウードとデキて以来絶賛しきりの一流料理記者、ニューヨーク市警の刑事夫婦、などなど。
おまけに、店の乗っ取りを目論むクイーンズの二人組のギャングまでやって来る。彼らは、ノミ屋の顔を持つルイスの相棒を射殺したばかりだ。

本物の地下厨房、多彩なイタリア料理、一晩限りの人間模様。
めまぐるしく、しかもスタイリッシュだ。


終盤ルイスは、店を譲ると息子に約束する。二度とやるなと言ってダンカンの借金を肩代わりする。ダンカンの彼女ニコーレ(ヴィヴィアン・ウー)には、温もりがいると言って一緒に休みを取らせる。
二人組のギャングには、気前よく人気料理をふるまう。強引な要求に歩み寄るふりをして、地下のトイレで待ちぼうけを食わせる。ウォール・ストリートの証券マン、実はもぐりの殺し屋を潜ませて。

ルイスは、相棒の会計士に向かって言う。

「知ってるか?“復讐と、おいしい料理はあとを引く”」
「“後味も格別”だ」

  (注釈4)



マイケル・ジャクソンのMV「ビート・イット」を手がけた監督のボブ・ジラルディは、ニューヨークの4つ星レストランをはじめシカゴ、ロンドンなど11店のレストランのオーナーである。
「80年代、娯楽の中心だったレストラン」を現在に至るまで知り尽くしている。
 

ダニー・アイエロが最後に言った台詞に、もうひとつ加えたい。

おいしい酒もあとを引く。一流レストランではなおさら。



ついでながら、ナタリー・ポートマンの原点は「レオン」のマチルダである。

1997年3月、アメリカでは日本ほど熱狂的な人気がないせいか、「レオン」のきちんとしたメイキング映像がなかった。当時僕が主催したライブ・イベント「シネマ・ワンダーランド」で、ジャン・レノとナタリー・ポートマンの特集をやるにあたり、「メイキング・オブ・レオン」を捏造した。
ビクター・エンタテインメントから提供された、だらだらと長い撮影風景の中からカットしためぼしい映像と、その完成形とおぼしきシーンとを交互に繋ぎ合わせた手作りである。
タウン誌「シティ情報ふくおか」に上映告知をしたところ、100名近くの観客が集まった。

「スターウォーズ エピソードT」のクイーン・アミダラを彼女が演ずることが決まったのは、それからまもなくである。ナタリーのファンであり、スターウォーズのファンである僕は狂喜した。
だが彼女が女優として実力をつけたのは、新3部作が公開されたあとである。
「スターウォーズ」3部作のレイア姫のイメージから脱却できず、「ハンナとその姉妹」で母親ゆずりの美声を聴かせ「恋人たちの予感」でコミカルないい味を出したものの、作家に転身したキャリー・フィッシャーとは明らかに違った。
そして2011年2月、ついにナタリー・ポートマンは米アカデミー賞主演女優賞を獲得した。

わずかな金で追い払った少女がオスカー女優になるなんて、ダニー・アイエロも驚いたに違いない。





注釈1、「カイロの紫のバラ」(監督、ウディ・アレン)
       アメリカ映画 1985年製作 原題:The Purple Rose of Cairo
       英アカデミー賞作品賞、脚本賞受賞
       仏セザール賞外国語映画賞受賞

       メーカー:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
       メディア:DVD

注釈2、「ドゥ・ザ・ライト・シング」(監督、スパイク・リー)
       アメリカ映画 1989年製作 原題:Do the Right Thing

       メーカー:ジェネオン・ユニバーサル
        メディア:DVD

注釈3、「レオン」(監督、リュック・ベッソン)
     フランス・アメリカ映画 1994年 原題:Leon

     メーカー:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
     メディア:Blu-ray

注釈4、「ディナーラッシュ」(監督、ボブ・ジラルディ)
     アメリカ映画 2001年製作 原題:Dinner Rush
     セントルイス国際映画祭観客賞受賞

     メーカー:ハピネット
     メディア:DVD



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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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