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2011年03月17日

できれば一人旅は、何も起こらないで欲しい。

Broadway malls, Jun 2008 - 064
Broadway malls, Jun 2008 - 064 / Ed Yourdon


できれば一人旅は、何も起こらないで欲しい。 
introducing 「十五才 学校W」「砂の女」「太平洋ひとりぼっち」

「世界の車窓から」のように、ひたすら風景が変るだけでいい。気分によってBGMを変えるかもしれないが、何も起こる必要はない。
親切な人に会わなくていい。意気投合する人とめぐり逢う必要もない。ご当地の美味しい物なんて食べられなくていい。想い出に残る感動的な風景も見れなくていい。試練なんて迷惑だし、教訓を得る必要もない。

僕が大学生のとき、九州一周など何度かヒッチハイクをしたことがある。
歩きの方が多かったが、車の助手席に乗せてもらったとき、ひたすら喋りまくった。退屈で乗せてくれたのだから、運転手へのサービスのつもりだ。
公園で野宿しておまわりさんに注意されたことがある。田舎の女子高生と仲良くなったこともある。せいぜいその程度だ。

こんばんは、マンハッタン坂本です。



半年間中学校に通わず家出した15歳の大介(金井勇太)は、横浜から宮崎までヒッチハイクをする。トラックに乗せてくれる運転手は親切だ。
家出の失敗談をする兄ちゃん(赤井英和)は、大阪まで乗せくれる。その代わり、荷降ろしの手伝いをさせられる。
無口なおばさん(麻実れい)は、宮崎まで乗せてくれる。その代わり、暇つぶしに身の上話をさせられる。おまけに、ジグソーパズルに夢中な引きこもりの息子の部屋に泊らされる。
大介はその息子とすぐに仲良くなり、翌朝別れ際にプレゼントをもらう。パズルの裏に詩が書いてあり、心を開いた息子の言葉に母親が涙する。

フェリーで屋久島に渡る。そこで知り合った女の人は、樹齢7000年の縄文杉まで一緒に登ってくれる。その代わり、一人前になりなさいとハッパをかけられる。
迷いながら下山し、老人(丹波哲郎)の家に泊めてもらう。その代わり、息子が迎えにくるまで介護をするハメになる。

2週間にわたる大介の冒険が終わった。学校という新しい冒険が始まる。
  (注釈1)



TVで放映される旅番組同様、いいとこ取りの感はあるが、それだけが旅のすべてではない。
クレヨンしんちゃんの作者のように、ひとり山で転落死することもある。某国に拉致されることだって起こる。



砂地に生息する虫の採集をするため、3日の休暇を取って東京から教師(岡田英次)がやって来る。
砂丘の真中で昼寝をしていると、宿を世話すると親切な村人が声を掛けてくる。ついて行くと、大きな穴倉の底に砂まみれの一軒家が立っている。

家から女の返事が聞こえ、リュックサックを背負ったまま男は縄梯子を降りていく。
女(岸田今日子)は、めしをよそうと男の頭の上にある番傘を開く。砂が落ちてくるからだと言う。
「砂は休んでくれませんからね」と不吉なことを言って、仕事を始める。砂をひたすら袋に詰め、上の連中に引き上げてもらうのだ。それを一晩中繰り返す。砂かきが間に合わないと、家が埋もれてしまうらしい。

朝起きると縄梯子がない。砂の崖を登ろうとするが滑り落ちる。無理してスコップで足場をつくると、砂のなだれが起きる。男は、はめられたことに気づく。女を縛り上げ仕事を拒否する。だが飲み水がなくなる。

「砂がなかったら、誰もあたしのことなんか構っちゃくれないんだから。お客さんだって」

観念して男が仕事を始める。村を守るために働く女の言葉に耳を貸さない。
家の屋根から放り投げた手作り縄の先端フックが杭にかかり、まんまと脱出に成功する。だが不案内な砂丘をさ迷ううちに蟻地獄にはまる。追いかけて来た村人に助けられる。

女が子宮外妊娠で苦しむので、引き取りに村人が降りて来る。女が内職でやっと手に入れたラジオが残される。何故か縄梯子が垂れ下がったままだ。男は勢い登り、海の見えるところまで行く。
だが家に引き返す。砂の中に埋めた桶に飲み水が溜まることを発見したからだ。
男にとって脱出は、もはや二の次となる。

7年後、男の失踪宣告が出される。
  (注釈2)



1962年、堀江謙一は小型ヨットによる無寄港太平洋横断に成功する。
「太平洋ひとりぼっち」は、その実話に基づいている。

堀江青年(石原裕次郎)は、実に用意周到である。130度傾いても沈まないヨットを建造させ、120日以内に横断するためのきめ細かな搭載リストを作成し準備する。米は一日2合半、扱いやすいように一升ずつビニールの袋に入れる。直射日光は疲労の大敵、安物の麦わら帽子を五つ。さるまたは80枚、はき捨てるつもり。といった具合。

それでもいざ密出港すると、風が吹かない。やっと風が出て西宮から離れて太平洋へ繰り出すが、待っていたのは孤独。独り言ばかり言って、「上を向いて歩こう」を歌いながら大泣きする。弱気な自分がもう一人現れ、無謀な挑戦を止めさせようとする。

「もし嵐に出遭うて、死ぬときは、おかあちゃんと呼んでや」 

何とか思いとどまらせたい母親(田中絹代)の悲痛な叫びが聞こえてくる。

のんびり音楽を聴きながらシャープのラジオに向かって、一遍くらい台風に遭うてみたいわと言うと本当に追いかけてくる。水浸しとなった船内から必死で海水を出す。
ビニール袋に入れた飲み水に水泡ができる。無事な水だけで乗り切るしかない。
米軍偵察機が旋回する。密航を通報されないようにカメラを向ける。旅客船が近づいたときは、サンキューと言いながらヨットを早々と遠ざける。

出港してから94日目、サンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジが目に入る。
足をふらつかせながらヨットから降り、見守る外人たちの前で、いとおしくMERMAID号を振り返る。
能天気な堀江青年の顔に、激闘のあとの達成感が漲る。

彼のニュースで日本中が大騒ぎになっているさ中、湯船につかり眠りこむ。
  (注釈3)


のちに、世界的な海洋冒険家となった堀江謙一は、1992年、世界で初めて足こぎボートによるハワイ・沖縄間の太平洋単独横断に成功した。
百日以上に及ぶ大航海を終えたあとの帰国第一声は「風呂に入りたい!」だった。


以前リヤカーを引いて旅する若い男女を見かけたことがある。TVの企画ものと思いきや、夕方のニュースで報道された。若者は一人で日本一周するつもりで始めたが、途中で彼女と意気投合し、故郷にたどり着いたら結婚するという。



僕の場合、移り変わる風景と、勝手につけたBGMさえあれば、あとは酔っ払っていたい。
夜は泊宿先でパソコンに映る映画を観る。繰り返し観たBGMみたいな映画がいい。


ところが今や、それも贅沢かもしれない。

何処に行こうと、何処に住もうと、天災も人災も何も起こらないで欲しい。


では、何か起こってしまったら、どうすればいいのか。

その答は、僕が尊敬するアメリカの作家カート・ヴォネガットと小児科医の息子との会話しか思いつかない。

カート「人生って、なんだ?」
息子
「父さん、ぼくたちが生きてるのは、みんなで助け合っていまを乗り切るためなんですよ。いまがどんなものであろうと関係ないんです」              

                                             

(カート・ヴォネガット著「国のない男」より)





注釈1、「十五才 学校W」(監督:山田洋次)
      日本映画 2000年製作
      毎日映画コンクール脚本賞受賞

      メーカー:松竹ホームビデオ
      メディア:DVD

注釈2、「砂の女」(監督:勅使河原宏)
      日本映画 1964年製作 英題:Woman in the Dunes
      原作、脚本:安部公房
      音楽:武満徹
      カンヌ映画祭審査員特別賞受賞
      キネマ旬報ベストテン第1位

      メーカー:パイオニアLDC
      メディア:DVD

注釈3、「太平洋ひとりぼっち」(監督:市川崑)
      日本映画 1963年製作 英題:Alone Across the Pacific
      音楽:武満徹、芥川也寸志
      特撮:円谷プロ

      メーカー:日活
      メディア:DVD
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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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