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2011年03月26日

もう孤独じゃない! LONESOME NO MORE!

スラップスティック―または、もう孤独じゃない (ハヤカワ文庫 SF 528) 学童集団疎開.jpg

もう孤独じゃない! LONESOME NO MORE!
introducing 「戦場の小さな天使たち」「少年時代」

元アメリカ合衆国大統領で、史上最後の大統領で、最も長身の大統領で、ホワイトハウス在住中に離婚した唯一の大統領だったウィルバー・ダフォディル-11・スウェイン医師が大統領に立候補したときのスローガンである。

彼は大統領時代、あらゆる人間に新しいミドル・ネームを発行することによって、アメリカに「人工的な拡大家族」を作り出すというユートピア計画。同じミドル・ネームをもつ人間が身内になるという計画を実行した。

これはそのまま世界中で使えるいいアイデアだ!
ハイホー。

ただしこれは、廃墟となったマンハッタンのエンパイア・ステート・ビルで、主人公のウィルバーがせっせと自伝を書き綴っているというカート・ヴォネガットの風刺小説「スラップスティック」の話である。
  (注釈1)

どうやらこの小説の影響で、僕は老人性しゃっくりのようなウィルバーの口癖が感染したようだ。

ハイホー。マンハッタン坂本です。


1939年9月3日、イギリスはドイツと交戦状態に入る。
ロンドンに住む7歳のビリー(セバスチャン・ライス・エドワーズ)と妹のスージーは、オーストラリアへ疎開させられそうになる。だが直前で母親(サラ・マイルズ)が思いとどまる。

空襲で瓦礫の山となった家は、少年たちにとって恰好の遊び場である。
何か悪い言葉を知ってるかとガキ大将から訊かれ、ビリーは「ファック!」と口にする。瓦礫の中でセックスする男が発していたからだ。たちまち二人は仲良くなる。

出征していた父親が休暇で戻ってくる。
久々に一族が集まり、ラジオでジョージ6世のスピーチを聞く。「国を代表する国王がどもれば、国もふらつく」と言い残して再び任務に戻る。

「人が見に来て、親切にされるなんて最低だ」

普通の火事で我が家を失い、そう言ってビリーはお祖父ちゃんの田舎に疎開する。

獲物を持たずに帰るなと言われたビリーと妹は、川釣りに出かけるが、なかなか釣れない。
そこへドイツ機が飛んできて爆弾を一つ落としていく。爆発で死んだ魚が流れてき、ボートいっぱいの魚を持って帰る。

姉の出来ちゃった結婚で、父親が疎開先を訪れる。
お祖父ちゃんと対戦して腕を磨いたクリケットで、ビリーはまんまと父親チームを負かす。父親から伝授された裏技を使ったのだ。

転校手続きが済むまでロンドンに戻ることになり、遠路登校する。
すると教科書を放り投げて生徒たちがはしゃいでいる。空襲で校舎が吹っ飛んだからだ。
ガキ大将がビリーに向かって叫ぶ――「ありがとう、アドルフ」

ビリーにとって生涯最高の瞬間だった。
  (注釈2)



「集団疎開で長野のお寺に泊るより、ずっといいに決まってるもの」

運輸通信省の公安局長を父親にもつ風間進二(藤田哲也)は、父親の兄が住む屋敷に向かう途中、付き添いの母親(岩下志麻)からそう言われる。

昭和19年、富山の風治(かざどまり)にある国民学校の5年男組に、進二は転入する。
戦時中とは言え、白い学生帽に小奇麗な半袖シャツと短パン、白いハイソックスにひも靴。いかにも育ちのいい東京もんといった風情は、田舎ではえらく目立つ。

ガキ大将がそのまま級長をやっているといった感じの大原武(堀岡裕二)は、逆らったり気に障ることをすると平気で同級生を殴る。進二も同じことをすると、彼から無視され、取り巻きから意地悪される。
ただし本好きの彼と同級生の前で「怪傑黒頭巾」や「少年探偵団」を語って聞かせるときだけ、仲間として大切に扱ってくれる。

進二は、東京から来た荷物を隣町の駅まで取りに行く。
それを知った大原が脱兎のごとく自転車で追いかける。彼に言わせれば、敵陣に乗り込むようなもので、隣町の悪童に袋叩きに合うかもしれない。
案の定、悪童たちに取り囲まれたところを間一髪で助けられる。日が暮れるまで隠れ家で待つには寒すぎるので、暖をとるため写真館へ行く。ツーショット写真を撮る。

進二にとって大原の行動は理解できない。優しく助けてくれると思えば、取り巻き同様嫌がることを強要する。召使いのように扱われることもある。
そんな折り、病気療養中だったもと副級長の須藤が戻ってくる。彼は金持ちの息子で、クラスの覇権奪取を目論んでいる。疎開女子からガキ大将に取り入っていると言われ悔しい思いをした進二は、彼の誘いに乗る。

須藤の策略で孤立させられた大原は、取り巻きから殴られ、進二から殴られ、一人掃除当番をさせられ、揚句に闇撃ちに合い右足を引きずる怪我を負う。
気になって仕方がない進二は、大原に声をかけるが拒否される。

終戦となり、母親がバタバタと迎えに来る。
進二は、大原に別れを言うため家を尋ねる。だが彼の姿はなく、大切にしていた戦艦陸奥のバックルを置いて帰る。

上野行きの汽車の窓から進二が体を乗り出すと、あぜ道を全速力で走る大原が目に入る。力の限り帽子を振る。走り続ける姿に目頭が熱くなる。立ち止まった大原がバックルを握った手をまっすぐ振り上げ、その姿がトンネルの外に消える。

井上陽水が歌う「少年時代」が心の底まで染み渡る。
焼け野が原の東京に持って帰った疎開先の思い出は、赤茶けた二人の写真だけだった。
  (注釈3)



ハッキリ言って、ビリーも進二も運がいい方だ。
戦時下にあって大切に面倒を見てくれる身内がいるからだ。


現在、東日本大震災の被災者、及び福島原発危機の避難者の避難所において献身的なボランティア活動をする人々、被曝の危険性がある原発現場で復旧作業に従事する人々がいる。
彼らには頭が下がる思いである。

それに伴い、各地方自治体・民間団体は、被災者・避難者に対し受け入れ態勢を整えつつある。
国内のみならず、世界中から義援金が集まり、国を挙げて支援を行っている。

しかしながら「のど元過ぎれば熱さを忘れる」で、いつまでその支援が続くのだろうか。
国政は止まったまま、派手な経済活動は自粛。
卒業式の時期とは言え、新たな年度の学業を始めなければならない。
この国家的な危機の一応の終息を見れば、元に戻さざるを得ない。新たな大問題が発生すれば、国民の関心は薄れるだろう。
1ヶ月、2ヶ月、半年、1年、2年、5年、10年、どんどん時間が経てば、どれだけの人々が東日本大震災の被害者を支援し続けるのだろうか。


被災地の子供たちに限って言えば、戦時中の学童疎開に似たことだって必要になる。
こんなとき、「人工的な拡大家族」がいたら、と思う。
全国に散らばった「人工的な拡大家族」が寄ってたかって同じミドル・ネームを持った身内の面倒を見てやるのだ。
ハイホー。



酔っ払いの戯言だと思わないでほしい。



注釈1、「スラップスティック―または、もう孤独じゃない!―」(著者:カート・ヴォネガット)
      初版:1976年

      出版社:早川書房
      メディア:文庫本

注釈2、「戦場の小さな天使たち」(監督:ジョン・ブアマン)
       イギリス映画 1987年製作 原題:Hope and Glory
       英アカデミー賞助演女優賞(スーザン・ウールドリッジ)受賞
       ゴールデングローブ賞(コメディ/ミュージカル部門)作品賞受賞
       東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞受賞

       メーカー:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
       メディア:VHS

注釈3、「少年時代」(監督:篠田正浩)
      日本映画 1990年製作
      原作:藤子不二雄A 脚本:山田太一
      音楽:池辺晋一郎 主題歌:井上陽水「少年時代」
      日本アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、音楽賞受賞

      メーカー:東宝
      メディア:DVD



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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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