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2013年07月22日

いつも心にハーモニイ。


                    「ソー・マッチ・イン・ラヴ」(歌:タイムス)

NO MUSIC,NO LIFE PartV

いつも心にハーモニイ。

introducing 「リリイ・シュシュのすべて」「天使にラブソングを…」

僕はカラオケ・ボックスで歌うことが好きだ。でも救いがたいくらい音痴なので、いつも音程が外れないかビクビクしながら歌う。かろうじてまともに歌えるのが山下達郎の「パレード」である。
かつて彼が率いたシュガーベイブみたいにコーラスができたら、といつも心で思う。

リング・ラードナーの短編小説に「ハーモニイ」というのがある。
メジャー・リーガーのアートは、コーラスのこととなると半気狂いになる男だ。テナー担当のチーム・メイトがマイナー落ちしたため、彼は必死で後釜を捜す。そしてある日、同じポジションの若いウォルドロンをスカウトしてくる。たまたま用があって叔父の家を訪ねたとき、素敵に歌っている彼を発見したからだ。
彼がプレイする姿を見たわけではない。だがアートがまんまとチームに迎えさせたウォルドロンは、タイ・カッブ以来の天才選手で、大いに活躍する。

彼の参加で久々にハーモナイズ(和声合唱)ができてご満悦だったアートだが、やがて成績不振で次々とコーラス仲間がマイナーに飛ばされ、アート自身もチームを去る。そしてそれに呼応するかのようにチームもガタガタになる。

話の語り部は、その原因をこう推測する。
「チームに『歌(ハーモニイ)』が欠けているかららしい」
  (注釈1)

ハイホー、マンハッタン坂本です。


J・D・サリンジャー
の短編小説「エズミに捧ぐ」の主人公は、ノルマンディ上陸作戦直前のロンドン郊外で、とある教会に入る。
そこで彼は、楽器の妨害なしに歌う少女コーラスに聞き惚れる。そしてこのような感慨を抱く。
「私のように不信心な男でなかったら、労せずして天上に遊ぶ思いを味わったのではないだろうか」
  (注釈2)

僕もそんな体験をしたことがある。阪神淡路大震災前に神戸の教会で行われた友人の結婚式で。
4人の女性コーラス隊が素敵に賛美歌を歌ったのだ。
僕は渡された歌詞カードから目を離し、しばし極上のハーモニーに聞き惚れた。まさに天上に遊ぶ思いだった。



「リリイ・シュシュのすべて」は、陰惨なイジメの話である。
14歳の久野陽子(伊藤歩)は、中学のクラスメートから校内合唱コンクールのピアノ伴奏を拒否される。クラスを牛耳る神埼から嫌われたからだ。
仕方なく彼女は、課題曲の「翼をください」をピアノなしバージョンにアレンジする。

超難度のア・カペラの練習の日々が続く。その中に、弱みを握られた同級生から援助交際を強要され、のちに自殺する津田詩織(蒼井優)や彼女の監視役をさせられた蓮見雄一(市原隼人)もいる。

本番で久野は、調音のために鍵盤をいくつか叩き、ピアノのそばに立つ。
常識をくつがえすハーモニーが講堂に響き渡る。救いのひと時だった。
  (注釈3)
「翼をください」(ア・カペラ・バージョン)



60年代のヒット曲を歌いまくる3人組のリード・ボーカルをとるデロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)は、まったくもって災難続きである。

神父様が離婚を許してくれない、と恋人のヴィンス(ハーヴェイ・カイテル)から言われ、罪滅ぼしにプレゼントされたミンクのコートは妻のお古で、それをつき返そうと彼の事務所へ行くと、殺人を目撃してしまい、命を狙われる身となる。
警察に通報すると、ヴィンスがただのクラブのオーナーではなく、麻薬やマネーロンダリングなどで稼ぐ暗黒街の顔役だと知り、殺人の証人になってくれと頼まれる。

2ヶ月の辛抱だと言ってかくまわれたのがサンフランシスコの修道院で、ペンギンみたいな格好をさせられた挙句、シスター・メアリー・クラレンスなんてダサい名前で呼ばれる。
博愛の精神を、と神父から言われしぶしぶ引き受けた修道院長(マギー・スミス)から早速断食を申し渡される。早朝5時には叩き起こされ、祈りと掃除の日々が続く。

ストレス解消のために抜け出して入ったパブからの帰りに院長に見つかり、音程バラバラな雑音を発する聖歌隊のけいこ場に放り込まれる。
ところが指揮棒を渡された途端、水を得た魚のようにデロリスはコーラスをまとめ上げる。

「天使の歌声は道行く人を呼び込んだのです」


前半はお行儀のいいア・カペラで、後半はゴスペル風に手拍子をしながら歌った「聖母に幸いあれ」が神父をいたく感動させる。
戸惑う院長。たたみかけるようにシスター・メアリー・クラレンスが神父に進言する。地域との交流をお考えです、と。

デロリスが仕掛けるショーを見たさに、日曜日の集会に大勢の観客が集まり、寄付が増える。仲良くなった住人たちの募金のお陰で修道院の屋根裏の修繕をする。
だがシスターたちの慈善活動がTVで報道され、ヴィンスと内通する刑事に居所を知られる。

カジノの中を大勢のペンギンが走り回る。誰がデロリスか見分けがつかない。ギャングたちが追い詰める。だがカソリック信者故に尼僧姿のデロリスを撃てない。警察が駆けつけヴィンスもろ共捕まえる。すべてはシスター・メアリー・クラレンスの行いを許した修道院長のお陰である。
法王を迎えたショーは、感動的に盛り上がる。
  (注釈4)
「聖母に幸いあれ」



影山崇が小谷涼子の存在を初めて知ったのは、高校1年生のときである。学園祭の真最中で、何気なく入った放送部の発表室だった。
ちょうど彼女はマスクをしており、大きく見開かれた美しい眼が近づいて来たのだ。さながらシルクで顔を覆った遊牧民の女のようだ。
すれ違った瞬間、崇の心にコーラスが流れる。やるせないメロディが響き渡る「ダッタン人の踊り」である。

1981年12月、山下達郎の福岡公演のアンコールで、彼はバック・ミュージシャンと一緒にア・カペラを披露する。
それを見て感激した高2の崇は、無謀にもコーラス・グループを結成する決意をする。
親友で中学の合唱部出身の堀井悠介を口説き落とし、メンバーを募る。だが誰も興味を示さない。そこで期間限定で助け船を出したのが悠介の1年先輩の望月健太である。大学の受験勉強の合間につき合うのだから仕方がない。

そしてあろうことか、助っ人として涼子を望月が連れてくる。どうやら二人はつき合っているようだ。面白そうと言って帰国子女の倉沢香織もついて来る。彼女は滅法ピアノが上手い。
言い出しっぺでありながら、コーラスは素人同然の崇の地獄の日々が始まる。

週3回音楽室に全員が集まり練習をする。崇はまるでついて行けない。
下校途中の公園で独り発声練習をする。夜は原曲を録音したカセットテープを繰り返しウォークマンで聴く。それを毎日欠かさず続ける。スパゲッティを茹でる間も、とびっきり辛いカレーをぐつぐつ煮込む間も自分のパートを練習する。

望月のリードで歌を刈ったり剃ったり、利かしをつけたりする。やっと崇も追いついて来る。次第にピアノ伴奏の必要がなくなる。
3ヵ月後、予餞会が行われる。「So Much In Love」「That’s My Desire」ア・カペラで歌う。大喝采を受ける。

7年後、崇は涼子と再会する。
彼女は崇のことを鮮烈に覚えている。そして一緒にハモったころを思い出し、こう訊ねる。
「一生懸命やったときって、純粋だったと思わない?」


この映画のタイトルは「いつも心にハーモニイ。」という。
僕の心の中にしか存在しない。
ドリフターズの「ラスト・ダンスは私に」が一曲流れる間に、役所広司があれよあれよと社交ダンスが上手くなっていくような映画ではない。
主人公がただひたすら独りで練習をし、音楽室で四苦八苦しながらハモるだけである。
涼子に一目惚れした崇は、卒業するまで一言も告白できない。

「ザッツ・マイ・ディザイアー」(歌:チャネルズ)



未完のオペラ「イーゴリ公」で演奏される「ポロヴェッツ人の踊り」を日本では「ダッタン人の踊り」と言う。ポロヴェッツ人がタタール系の遊牧民族だったため、ダッタン人と翻訳されたからだ。日本語で言うダッタンとは、中国では韃靼と表記し、ロシア語でタタールと呼ぶ。
管弦楽曲として人気の高い「ダッタン人の踊り」は、本来オペラではダンスと合唱が伴う。囚われの身となったロシアのキエフ大公・イーゴリ公を慰めるために、ポロヴェッツ人が披露する。
エキゾチックなメロディ、華麗な群舞、そしてスリリングなコーラスは鳥肌が立つくらい素晴らしい。

「ダッタン人の踊り」(作曲:アレクサンドル・ボロディン)



音楽を奏でるとき、何かひとつだけ選べと言われたなら、僕は迷わずコーラスを選ぶ。
独りでは心もとないし、音痴は音痴なりに人が集まれば、何とかやれるからだ。
津波で何もかも無くしたとしても、命さえ声さえ助かれば、音楽は奏でられる。

あらゆるスタイルのコーラスが好きな僕としては、選曲に苦慮する。
だが今の日本を元気づけるインターナショナルな楽曲は、「OH HAPPY DAY」がベストではないかと思う。歌詞を知らなくてもいい。とにかく「オー、ハッピー・デイ」と繰り返し歌えばいいのだ。

「オー、ハッピー・デイ」

  (注釈5)

オリジナル・ヒット曲「OH HAPPY DAY」(歌:エドウィン・ホーキンズ・シンガーズ)




注釈1、「アリバイ・アイク」(著者:リング・ラードナー)
     1978年初版 新潮文庫


注釈2、「ナイン・ストーリーズ」(著者:J・D・サリンジャー)  
      1974年初版 新潮文庫 原題:Nine Stories


注釈3、「リリイ・シュシュのすべて」(監督、岩井俊二)
      日本映画 2001年製作 英題:All About Lily Chou-Chou
      ベルリン国際映画祭 国際アート・シアター連盟賞受賞

      メーカー:ビクター・エンタテインメント
      メディア:DVD

注釈4、「天使にラブソングを…」(監督:エミール・アルドリーノ)
      アメリカ映画 1992年製作 原題:Sister Act

      メーカー:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンタテインメント
      メディア:DVD

注釈5、「天使にラブソングを…2」(監督:ビル・デューク)
      アメリカ映画 1993年製作 原題:Sister Act2:Back in the Habit

      メーカー:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンタテインメント
      メディア:DVD

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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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