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2011年05月25日

ポップス&コメディ・タイム



ポップス&コメディ・タイム
introducing 「愛しのローズマリー」「マネキン」

陸上競技の三段跳びというのは、踏み切り板の上を走り抜ける寸前に、助走が最高速度に達する。
不思議なことに、僕の人生における助走の最高速度は、60年代、70年代、80年代の最後の年に達している。

当然のことながら、1969年と1970年、1979年と1980年、1989年と1990年は繋がっている。世の中はどうしても、60年代、70年代、80年代、90年代、と区別したがる傾向がある。
確かに僕自身、70年代育ちのオヤジと自認しているが、それぞれの境目に踏み切り板みたいものはないように思う。

1969年、僕が本格的に全米ヒットパレードを聴き始めたとき、「ゲット・バック」がナンバーワンに輝き、翌年アメリカでナンバーワンになった「ロング・アンド・ワインディング・ロード」が、法的に存在したビートルズの最後のシングルとなった。
1979年、YMOの「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」が売れている最中にレコード業界に入り、翌年暮れにジョン・レノンの「ダブル・ファンタジー」を売っている最中に彼が銃弾に倒れた。
1989年、「ダイハード」のレーザーディスクが飛ぶように売れるのを見て、本格的に映画ソフト販売を志し、翌年の暮れに「フィールド・オブ・ドリームス」や「櫻の園」を九州で一番売っていた。

手短に書けばそういうことになる。
だが好きなポップスに関して言えば、1969年から1970年にかけてヒットした2種類のローズマリー・ソングが深く関わっている。

ハイホー、マンハッタン坂本です。

14歳の僕が能天気なポップス少年になったのは、時折電波をキャッチした米軍放送(FEN)と、平日の夕方5時から放送されたRKBラジオの「ポップス・タイム」と日曜朝から放送された文化放送の「オール・ジャパン・ポップ20」のお陰である。
パーソナリティは、今でも現役の林田スマさんと悪名高いみのもんただ。


当時から僕にとって洋楽のヒット曲は、すべてポップスだった。
1969年から1970年にかけて全米ナンバーワンになった曲で言えば、「シュガー、シュガー」(アーチーズ)も「ホンキー・トンク・ウィメン」(ローリング・ストーンズ)も「サスピシャス・マインド」(エルヴィス・プレスリー)も「ウェディング・ベル・ブルース」(フィフス・ディメンション)も「悲しみのジェット・プレーン」(ピーター、ポール&マリー)も「またいつの日にか」(ダイアナ・ロス&シュープリームス)も「ヴィーナス」(ショッキング・ブルー)も「サンキュー」(スライ&ザ・ファミリー・ストーン)も「明日に架ける橋」(サイモン&ガーファンクル)も「ママ・トールド・ミー」(スリー・ドッグ・ナイト)も「遥かなる影」(カーペンターズ)も「二人の架け橋」(ブレッド)も、ナンバーワンにならなかった「胸いっぱいの愛を」(レッド・ツェッペリン)も「ブラック・マジック・ウーマン」(サンタナ)もポップスだった。

やたらジャンル分けする今の感覚から言えば、おそらく当時のバブルガム・ミュージックがポップスそのものに近い。
スタジオ・ミュージシャンを中心とした寄せ集め的なバンドが吹き込んだ能天気な歌だ。その中に、大ヒットしたローズマリー・ソングがあった。
フライング・マシーンの「笑ってローズマリーちゃん」(原題:Smile a Little Smile for Me)とエジソン・ライトハウスの「恋のほのお」(原題:Love Grows Where My Rosemary Goes)である。



「メリーに首ったけ」で大ヒットを飛ばしたファレリー兄弟監督は、ほとんど僕と同世代である。彼らが「Love Grows Where My Rosemary Goes」をテーマ曲に「愛しのローズマリー」を撮りたかった気持はよく分かる。

ずんぐりむっくりの胴体の上に乗っかっているのは、面の皮が厚い顔だけ。うわべだけの浅薄さを絵に描いたようなハル(ジャック・ブラック)は、とびっきりの美女をモノにしろ、という言葉を守り続けている。モルヒネで意識が混濁した父親が死に際に言ったからだ。
外見だけで女を選ぶなんて間違ってる、と投資銀行の同僚から指摘されても耳を貸さない。

ある日、天の啓示というべき出来事が起きる。乗っていたエレベーターが突然止まり、たまたま居合わせたTVカウンセラーから「心の美」を見る力を与えられる。彼の目に映る美しい人は心根の美しい人だけとなる。

車の中からスレンダーな美女を見かけたハルは、下着売場でローズマリー(グウィネス・パルトロウ)に声をかける。初めのうち彼女は、からかわれていると思い相手にしない。だが心優しい彼女は、知り合いたかっただけと言う言葉を信じ、ランチにつき合う。少し変だが、思ったことをそのまま口にしているだけのようだ。

ハルは、友人であるマウリシオ(ジェイソン・アレキサンダー)にローズマリーを紹介する。彼の目にはブスでウルトラ・デブにしか見えない。
ローズマリーは、彼女がボランティアをしている小児病棟へ連れていく。怖がることなく火傷だらけの子供たちと遊んでいるハルを好きになり始める。

「美人じゃないと思い込むなんて、どうかしてる」

ふだんから美人を美人としか言わないハルの言葉に傷つくが、ローズマリーは別れられない。
ハルにしてみれば、彼女がプールに飛び込んだ際に起きる巨大な水しぶきも、ベッドのハルに投げ込んだ巨大なパンティも、誰かのいたずらか彼女のジョークだと思い、やり過ごす。

カウンセラーをだまして聞き出したマウリシオは、ハルに向かって呪文を唱え魔法を解く。だがハルの心に生まれたローズマリーへの愛情は変らない。
本当の姿を見るのを恐れていたハルは、平和部隊に入る彼女の壮行会に乗り込む。一緒にキリバスへ行くと告白する。
ローズマリー側に傾いた車の中で、二人はキスをする。

祝福するかのように、エジソン・ライトハウスの「恋のほのお」が流れる。
   (注釈1)



僕にとって80年代の最高のポップスは、スターシップの「愛はとまらない」である。

「君は僕が作った、初めての芸術品なんだ」

フィラデルフィアのプリンス・デパートのショー・ウィンドウに飾られた「マネキン」に向かって、彫刻家志望のジョナサン(アンドリュー・マッカーシー)が切なくそう呼びかける。
マネキン工場をクビになる直前に彼女を組み立てたときは、オレンジ色の帽子とワンピースを着ていたわけではない。
あれからいくつも仕事をクビになり、雨の中をびしょ濡れでエンストしたバイクを押しながら歩いていても、彼女を一目見れば分かるのだ。

後日、たまたま女社長を助けたことが切っ掛けで、そのデパートに雇われたジョナサンは、仕事をサボって彼女に会いに行く。そこへ、お茶目で変人なホモのデコレーターのハリウッドがディスプレーにやって来る。
彼が帰ったあと、ウィンドウの中で二人きりになる。すると突然マネキンはエミー(キム・キャトラル)に変身する。あなたは私に命をくれたと言ってジョナサンを抱きしめる。

翌朝、ウィンドウの中で目覚めると、紀元前2514年生まれという彼女がマネキンに戻っている。
だが目の前に画期的なディスプレーが出来上がっている。たちまち人だかりができ、閑古鳥が鳴いていたデパートが活気づく。

ディスプレー係長に任命されたジョナサンは、自分の前でしか人間に変身しないエミーと夜通しデートをする。彼女はデパートの服を思いのままに着替える。まさに七変化である。夜警が怪しいと嗅ぎ回るので、ジョナサンはパラグライダーで撃退する。
すっかり有頂天になった彼は、僕らの子供の名をピノキオにしようなんて言う。

エミーと夜昼構わずデートするジョナサンは、ついにバイクの後ろに彼女を乗せドライブをする。デパートのテントの中でエッチまでする。
だがジョナサンが寝込んだ隙にマネキンに戻った彼女がライバル・デパートの連中にさらわれる。

シュレッダーの餌食になる直前にジョナサンから助けられたエミーは、その瞬間に本物の人間になる。
デパートのお得意様が見守る中、ハリウッドが立会い、二人はショー・ウィンドウの中で結婚式を上げる。

スターシップが「Nothing's Gonna Stop Us Now」を高らかに歌い上げる。
   (注釈2)



林田スマさんが結婚を機に「ポップス・タイム」を降板して以来、仕事で初めてお目にかかる機会があった。
番組のファンだったことを僕が告白すると、彼女はすらすらすらと前口上を言ってくれた。
約25年ぶりに聞く懐かしい呪文だった。一瞬にして僕はポップス少年に戻った。

流行歌をあれこれジャンル分けするのが悪いとは言わない。
スタイルはどうあれ、聴いて元気になれば、それが僕にとってポップスである。涙を流してもポップスだ。
秋元康だってそうではないだろうか。彼はAKB48やおニャン子クラブの仕掛け人であり、美空ひばりの「川の流れのように」の作詞家でもある。


映画ファンの僕にとって、一番元気になるのはポップスとコメディの組み合わせだ。





注釈1、「愛しのローズマリー」(監督:ボビー&ピーター・ファレリー)
  
      アメリカ映画 2001年製作 原題:Shallow Hal

      メーカー:20世紀フォックス・ホーム・エンターテインメント・ジャパン
      メディア:DVD


注釈2、「マネキン」(マイケル・ゴットリーブ)
      アメリカ映画 1987年製作 原題:Mannequin

      メーカー:20世紀フォックス・ホーム・エンターテインメント・ジャパン
      メディア:DVD


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posted by マンハッタン坂本 at 00:05 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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