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2013年06月17日

象使いについて書けなくても、象職人について書けるかもしれない。


イントレランス3.jpg

ホントのことを言うと、よく、しかられる。 PARTV

象使いについて書けなくても、象職人について書けるかもしれない。
introducing 「グッドモーニング・バビロン!」「イントレランス」

漢字の「象」は象形文字である。
この一文だけで「象」の音読みが二種類出てくる。
「新漢語林」によると、漢字の発音である字音は、呉音で「ゾウ」、漢音で「ショウ」という。
呉音って何? 5・6世紀に伝わった仏教言葉で、平安時代には、8・9世紀に伝わった漢音を正音としたのに対し和音ともいったらしい。

「象」という漢字は、代表的な象形文字である。成り立ちを見ていくと、いつの間にか後ろ脚二本で立っている。
不思議だと思いませんか?
中国人の祖先が初めて見たのがインド象なのかセイロン象なのかマレー象なのかスマトラ象なのか分からない。いずれにしろ、あの図体のでかい動物が立っている姿を見たわけではないと思う。
あるいは、象のマスクをしたローマ帝国の剣闘士でも見たのだろうか。

ハイホー、マンハッタン坂本です。

誇らし気に長い鼻を振り上げ、堂々と後ろ脚で立つ象のレリーフを最後まで粘って仕上げを施す二人の兄弟がいる。アンドレア(ジョアキム・デ・アルメイダ)とニコラ(ヴィンセント・スパーノ)である。二人は父親のボナンノが請け負った「奇跡の聖堂」の修復を手伝っている。7人兄弟の末っ子だが滅法腕がいい。

「いつも平等に、一緒にいる事がお前らの力だ」

二人に向って父親がそう言って励ます。今回の仕事が最後だと打ち明けられ、仕方なくアメリカに渡る決心をしたからだ。

兄弟は、サンフランシスコ万博へ行く途中だという職人たちと知り合い、彼らの下でイタリア館を建造する。
その「宝石の塔」を見た映画監督のD・W・グリフィスがイタリア人棟梁を雇うよう製作主任に指示する。
だがハリウッドにやって来たのは、棟梁に成りすましたアンドレアとニコラだった。

すぐに偽者だと見破られ、二人は撮影用の鳥小屋で寝泊りしながら映画製作の雑用をこなす。
だがこのまま帰国したのでは父親に合わせる顔がない。一念発起した二人は、レリーフをヒントに張りぼての巨大な象を密かに製作する。お互いにラブレターを贈ったエキストラ・ダンサーのメイベル(デジレ・ベッケル)とエドナ(グレタ・スカッキ)が完成品を見、すっかり二人の虜になる。
ある夜、映画仲間が集まって来る。酒を飲みがてら蝋燭の灯で象を白く塗り直す。陽が上り手回し撮影機でデモ用に撮影する。

製作主任の差し金で象は灰にされるが、撮影映像を見て気に入った監督から8頭注文がくる。
15メートルの高さの象が立ち並ぶ新バビロニアのイシュタール門が完成する。
監督の計らいで父親を呼び寄せ、巨大な門の前で二人は結婚パーティを開く。幸福の絶頂だった。

1916年、アメリカが第1次世界大戦に参戦する直前、D・W・グリフィスは反戦を表明し「イントレランス(不寛容)」を完成する。




紀元前7世紀、オリエントを統一したアッシリアから新バビロニア(カルデア)が独立し、アッシリア滅亡後、ネブカドネザル2世の治世が訪れる。
首都バビロンには、愛の女神イシュタールを崇拝する神殿に巨大なイシュタール門が造られる。
紀元前586年、王はヤーべ信仰のユダ王国を滅ぼし、のちにユダヤ人を流浪の民にする「バビロン捕囚」を行う。

紀元前539年、ナボニドス王の治世。国政を担うベルシャザール皇太子は、キュロス2世が率いる(アケメネス朝)ペルシャの大軍にバビロンを攻められる。城壁を越えんとする巨大な移動タワーで攻撃されるが、最新型戦車で応戦し撃退する。

巨大なイシュタール門が見下ろす中庭で、祝宴が行われる。輿に乗ったベルシャザールと皇太子妃の周りを着飾った踊り子たちが囲み、階段を下りながら踊り狂う。民衆も歓喜に包まれる。
数日に渡る饗宴の間、イシュタール崇拝に敵対するベル・マルドゥーク神の司祭がキュロス2世と内通する。
司祭の裏切りで城門が開かれ、ペルシャ軍が城内に突入する。抵抗する間もなく皇太子と姫は自害する。
   (注釈1)



「イントレランス」のワールド・プレミア上映に、タキシード姿のアンドレアと二コラが出席する。揃って臨月の妻を伴って。
上映後、メイベルが産気づき、つられる様にエドナも産気づき、病院に駆け込む。
無事子供は生まれるが、エドナが命を落とす。

常に平等だった二人に亀裂が入る。ニコラは故国に帰り、イタリア兵として戦う。アンドレアは残り、参戦に伴いアメリカ兵として戦う。
かつて修復した聖堂の近くで、二人が再会する。互いに重傷を負っている。兄弟は、ニュース・カメラを使ってお互いの姿を撮影する。残される子供たちのために。
   (注釈2)



中国最古の象形文字である甲骨文字が漢字の祖型となったのは、周王朝時代である。
紀元前770年、周は都を鎬京(こうけい)から洛邑(らくゆう)に移す。西方遊牧民の侵入が激しくなったからだ。

それに乗じ周室防衛の尊王攘夷を名として同盟が結成される。その指導者を覇者という。
斉の桓公(かんこう)、晋の文公、楚の荘王、呉王夫差、越王句践(こうせん)が入れ替わり覇者となる。いわゆる春秋時代の始まりである。
楚の荘王が覇者となった時期、「バビロン捕囚」が行われた。
インドではその20年後に釈迦が生まれ、中国では35年後に孔子が生まれる。

バビロン捕囚.jpg

「大砲と刑務所の格子が不寛容の炎の中に投じられると、まことの愛が永遠の平和をもたらす」

「イントレランス」の四つの時代の中で、現代アメリカの話だけがハッピーエンドとなる。無実の罪で絞首刑になる直前に男が救われたからだ。

だが信仰に対する「不寛容」は、中世フランスでは史上稀に見る悲劇を生む。新教徒ユグノー派に対する弾圧である。

国王シャルル9世は、ユグノー派の最高責任者コロニー提督と懇意にしている。妹のマルグリッドをユグノー派のアンリと婚約させる。
だが旧教徒の母親カトリーヌ・ド・メディシスに炊きつけられ、新教徒弾圧に署名をさせられる。
1572年8月、数日間に渡りパリ市内だけで四千人以上の新教徒が殺される。

世に言うサン・バルテルミの虐殺(英語表記で、聖バーソロミューの虐殺)である。

サン・バルテルミの虐殺.jpg


宗教戦争ほどバカ気たものはない。


古今東西、戦争の大半が宗教戦争だと言って過言ではない。
しかも民族の指導者たち、あるいは国家の支配者たちにとって都合のいい神を守るための戦争だ。


以前僕は無神論者と書いた。人間主義者だと言ってもいい。
ただ、もし僕の中に神の存在を感じ信じるなら、おそらくオランダの哲学者バールーフ・デ・スピノザが言う神ではないかと思う。
アルベルト・アインシュタインもそうだった。残念ながら彼が亡くなる一ヶ月前に僕は生まれたので、アインシュタインの生まれ変わりではない。

「神即真理」「神即自然」「神即愛」という意味で「神は一つだ」ということを、スピノザは証明しようとした。

仏教やキリスト教やイスラム教などの人格を持った神ではない。
生まれ育った風土や使う言葉によって民族が勝手に呼び名を付けた神でもない。

「神は一つだ」あるいは「真理は一つだ」

それが仮に証明されたとしても、地球上のすべての宗教が無意味になるわけではない。
日本で生まれ日本で育ち日本語しか喋れない僕は、神へのアプローチがおそらく仏教的になるだろうと思う。

「神は一つだ」

それがもし証明されたなら、バカ気た宗教戦争なんかこの世からなくなるに違いない。




注釈1、「イントレランス」(監督、脚本:D・W・グリフィス)
      アメリカ映画 1916年製作 原題:Intolerance

      メーカー:IVC
      メディア:DVD

注釈2、「グッドモーニング・バビロン!」(監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ)
      イタリア・アメリカ・フランス映画 1987年製作 原題:Good Morning Babilonia
      キネマ旬報ベストテン第1位

      メーカー:紀伊國屋書店
      メディア:DVD

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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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