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2013年01月28日

それだけ人間、空を飛ぶ。

Uplifting
Uplifting / Brett Jordan


新春・自選パロディ集 おまけ

それだけ人間、空を飛ぶ。
introducing 「華麗なるヒコーキ野郎」「ノッティングヒルの恋人」

 ある日、酔った勢いで僕に向かって彼女が言った。
「あなたって、正直で人がいいけど、それだけ」
 ショックだった。だが彼女の洞察は鋭い。彼女が指摘した通り、僕は正直で人がいいだけの男なのだ。
「20歳の頃は、可能性にあふれてた」
 そう言い返してみる。
「当たり前じゃない。でももうすぐ還暦でしょ? 誰が見ても若くない」
 ダブルパンチだ。だが彼女は心優しい。
「おまけをつけるわ。人の歩き方に詳しい」
「しょっちゅう歩き回ってるからね。誰が歩いてるのか、遠くからすぐに分かる」
「もち肌でコンパスが長い」
 話が長くなると思ったのか、慌てて彼女がつけ加えた。
「アライグマそっくり」
 僕の顔をまじまじと見ながら言った。
「で、それだけ」
 サービスしすぎたわと言わんばかりに彼女が肩をすくめた。
 すると僕は、ふいに身体が軽くなった。宙に浮いたかと思うと、あれよあれよという間に舞い上がった。
 彼女が驚き僕を見上げた。
「どうしちゃったわけ?」
それだけ人間になったみたいだ!」

 僕は「それだけ人間」と書かれたアド・バルーンとなり、風もないのに大空をさまよい始めた。
 歳を重ねる度に、可能性という砂袋を放り出していったせいだ。

 ハイホー、マンハッタン坂本です。


Raccoon face
Raccoon face / foqus

チキンラーメン好きだけど、凶暴じゃないっス。


1926年、機体に「THE GREAT WALDO PEPPER」と書かれた複葉機がネブラスカ州の草原に着陸する。操縦するのは、どさ回りで村人を遊覧飛行させて稼ぐウォルド・ペッパー(ロバート・レッドフォード)である。

第1次世界大戦末期、第14偵察隊に所属していた彼は、ドイツ軍の70撃墜王エルンスト・ケスラーと対戦したことがある。
ケスラーが操縦するのはフォッカー三葉機。ローラと書かれた機体と黒地に黄色のチェッカーの翼を持っている。ウォルドはその最強の敵機に味方をすべて撃墜され、さしとなる。だが機銃が故障し戦えない。それを察したケスラーは、天晴れ敬礼して飛び去ったのだ。
ウォルドはその体験を行き先々で語る。終戦直前に参戦したヒコーキ野郎にとってそれだけが自慢だった。

映画館で知り合ったメリー・べス(スーザン・サランドン)にもその話を聞かせる。彼女をモノにする魂胆だ。だがその折も折り、商売敵のアクセル・オルソンがやって来る。彼女の連れだったのだ。おまけに、話がハッタリであることを暴露される。

アメリカに来てアクロバット・ショーをするケスラーは本物である。900メートル上空から10回転しながらきりもみ降下する。おいそれと真似のできる芸当ではない。
彼の後釜を狙って、ウォルドはオルソンと共に売り込みをかける。メリー・べスを使って翼歩きのデモ飛行を試みる。だが足がすくんだ彼女はそのまま落下する。お陰で飛行停止処分になる。

単葉機を開発した友人のエズラは、仕方なく自分で乗り込み、逆宙返りを試みる。ケスラーですらできない芸当だ。だが墜落し炎上する。機体の下敷きとなった友人を眺めるだけの観客に頭にきたウォルドは、複葉機を飛ばし野次馬を蹴散らす。永久飛行停止処分になる。
やがてケスラーは、逆宙返りを成功させる。

「私の人生は、空にしかない」

ハリウッドで第14偵察隊の実話が映画化されることになり、スタントマンで生計を立てていたウォルドは、伝説のケスラー(ボー・ブルンディン)と初めて言葉を交わす。空のヒーローも、地上では結婚を3度も繰り返し、4万ドルの借金をかかえるハゲ男だった。

ウォルドは、偽名を使って一騎打ちをしたマドン機に乗り込む。互いにパラシュートを脱ぎ捨て、本人が操縦するケスラー機に挑む。
カメラを搭載した撮影機を無視し、ドッグファイトの応酬から始める。決着がつかず正面衝突をする。2度目の衝突でウォルド機の車輪が片方外れる。ケスラー機は翼にダメージを受け、やがてコントロールがきかなくなる。

2機は並行飛行する。ゴーグルを外したケスラーが笑みを浮かべウォルドに敬礼する。ウォルドも嬉しそうに敬礼を返す。
   (注釈1)



青空市場では果物や野菜を売っている。週末になると何百もの店が立ち並び、アンティークのフリー・マーケットと化す。そんな下町情緒あふれるウエスト・ロンドンの「NOTTING HILL」に、ハリウッド・スターのアナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)が訪れる。小さな旅行書専門の本屋を見つけ、入ってみる。店主のウィリアム・タッカー(ヒュー・グラント)から数冊買い求める。

街を散策していると、出会い頭に男からオレンジ・ジュースをかけられる。先程のタッカーである。近くだからと言われ、青いドアの自宅に案内される。着替えをしたあと別れ際に、シュールだけどステキだったと言われる。忘れた本を取りに戻ったアナは、お礼にキスをする。

取材人が集まるリッツ・ホテルのスイートにタッカーを招待する。夜の予定をキャンセルし、彼の妹の誕生パーティについていく。アナ本人と気づかない男からギャラは幾らかと訊かれ、1500万ドルと答える。
気さくな彼の友人たちとの食事は、開放感があって実に楽しい。
デザートのブラウニーが一つ余り、一番みじめな人が食べられるという。

「商売はヘタクソ。バツイチ。ハンサムな顔もくずれ始めてる。あだ名は“ヘナチョコ”」

親友のマックスがタッカーの欠点を暴露する。

タッカーが案内した秘密の庭園を散歩する。思わず彼にキスをする。映画館デートで潜水ゴーグルをした彼がおかしい。ホテルの部屋に誘うが、運悪くアメリカから来た恋人がおり、彼の目の前でキスされる。

再びタッカーの家を訪れる。昔撮影したヌード写真がすっぱ抜かれ、マスコミから逃げてきたからだ。彼とはいい雰囲気となり一夜を共にする。だが翌日嗅ぎつけられる。同居人のスパイクがタレこんだのよとわめき散らして出て行く。

Ain't No Sunshine (歌:ビル・ウィザース)


半年後、アナはオスカーを手に入れる。ロンドンでの撮影最終日にタッカーが訪ねてくる。
プレゼントしようと本物のシャガールを持って店を訪れる。つき合ってほしいと言うが、断られる。別れ際にタッカーに告白する――「私もひとりの女よ。好きな人の前に立ち、愛してほしいと願ってるの」

旅行する金もなく、旅行する時間もなく、旅行書だけに詳しい。
ハリソン・フォードに似た男に妻を寝取られて以来、タッカーはマックスの家で何度も見合いをする。だが本気で愛したのは、マックスと結婚したベラと別れた妻だけだと気づく。

そんなタッカーがサヴォイ・ホテルで行われるアナの記者会見に駆けつける。インタビューにかこつけてやり直したいと言うと、彼女が宣言する。英国に永住する、と。
タッカーの心は、夢見心地に大空を飛ぶ
   (注釈2)
SHE (歌:エルヴィス・コステロ)



 世の中は捨てたものではない。「それだけ人間」に対し親切な人がいる。
 彼女は、宙に浮いた僕に向ってブラウニーの差し入れをくれた。そして見上げて言った。
「それだけ取柄があれば、十分じゃない?」
「どう転んでも、もてないよ」
「もてなきゃなんないわけ? アル中よりマシよ」
「アル中寸前だ」
「ひとつだけ解決方法があるわ」
「何?」
「周りのすべての人に、親切になることよ」
「いいかもしんない。間違いなくアル中になる」
 彼女の言うことは正しい。ただ、よく考えてみると、一人の人間を愛するより難しい。
「いっぺんにやろうと思うから、大変なのよ。少しずつ手近な人から始めたら?」
「だろうね。それからだってアル中になれる」
 安心した僕は、ジャック・ダニエルを飲み干した。

burauni.jpg



極めて個人的な趣味だが、「ノッティングヒルの恋人」にはエルヴィス・コステロの「SHE」やビル・ウィザースの「エイント・ノー・サンシャイン」以外に、隠れた名曲が使われている。オリジナルは、1971年に全米ナンバーワンに輝いたビージーズの不滅のバラード「傷心の日々」である。
アメリカ人よりイギリス人の方が60年代R&Bや70年代ソウル・ミュージックに傾倒している人が多い。イギリス映画を見ていると、度々ブラック・ミュージックの名曲が流れる。

アル・グリーンは70年代を一世風靡したソウル・シンガーである。「レッツ・ステイ・トゥゲザー」が代表曲だ。
彼がカバーした「傷心の日々」は、オリジナル以上に悲しい。失恋して涙が出ない人にはうってつけの歌である。必ず泣ける。

How Can You Mend A Broken Heart (歌:アル・グリーン)






注釈1、「華麗なるヒコーキ野郎」(監督:ジョージ・ロイ・ヒル)
      アメリカ映画 1975年製作 原題:The Great Waldo Pepper
      音楽:ヘンリー・マンシーニ

      メーカー:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
      メディア:DVD


注釈2、「ノッティングヒルの恋人」(監督:ロジャー・ミッチェル)
      イギリス・アメリカ映画 1999年製作 原題:Notting Hill
      英アカデミー賞Orange Film of 1999受賞

      メーカー:松竹ホームビデオ
      メディア:DVD


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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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