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2011年08月23日

あなたって代役向きよ。

Big Z Pinch Hitting
Big Z Pinch Hitting / terren in Virginia


あなたって代役向きよ。
introducing 「Wの悲劇」「「リンダ リンダ リンダ」「遊びの時間は終らない」

代行と代役は似ているようで、かなり違う。
酒を飲んでマイカーを運転できない場合、代行を雇う。代役を雇うとは言わない。
毎夜仕事が遅くマンションに寝に帰るだけで、ママもワイフもいない場合、代行を雇う。朝定時に起こしてくれ、朝食を作ってくれ、昨夜食い散らかしたやつまで全部片付けてくれる。
傷一つ車につけなければ誰が運転しても構わない。できればモーニング・サービスは若い女子がいい。その分稼げばいい。

自分が犯したミスならまだしも、部下の代わりにクレーム処理するなんてやりたくない。この場合、代役と言うのか?
ましてや前任者が犯した不正行為の罪をかぶって逮捕されるなんて理不尽だ。この場合、代役と言うより身代わりだ。
代行業務はシンプルで稼ぎになる。たまに感謝されたりする。
ところがどうも代役業務――そんな言い方はない――代役ってやつは、稼ぎにならない。ストレスはたまるし、覚えのないことまで責任を負わされる。

代役に飛びつく人種は、役者以外にいるのだろうか。

ハイホー、マンハッタン坂本です。


「あたし、おじいさまを殺したんです」

誰もいない観客席に向かって、三田静香(薬師丸ひろ子)が「Wの悲劇」の和辻まこを演じている。だが劇団の研究生の中から準主役に選ばれたのは、菊地かおり(高木美保)である。静香は端役とプロンプターを割り当てられ、公演中の雑用係もこなしている。

主演で看板女優の羽鳥翔(三田佳子)が舞台のそでを通りかかる。静香に声をかけ、チップを渡す。観客席に向かって強く息を張り、昔あたしもよくやったわ、と言う。

その夜大阪のホテルで、彼女のパトロンが腹上死する。駆け出しの頃、芝居のチケットを買ってくれブロードウェイに連れて行ってくれた妻子持ちである。結婚を断り好きな芝居を続けてスターとなった今、スキャンダルのネタにしかならない。
静香を部屋に招き入れた羽鳥は、焦る気持ちを抑え、まこ役を餌に彼女を説き伏せる――「できるわよ。あなた役者でしょ?」

パトロンを自分の部屋に運び込んだあと、静香はフロントに通報する。
記者会見でまこ役を静香に交代すると劇団幹部が発表したあと、レポーターが矢継ぎ早に突っ込みを入れる。死体で初対面したパトロンを静香は、愛してましたと言って涙を流す。本物の愛人である羽鳥が羨む代役を演じる。

東京での初演で拍手喝采を浴びた静香の前に、かおりが現れる。殺してやると言って刺そうとしたナイフを受け止めたのは、森口昭夫(世良公則)である。静香が女優として成功した暁には花束を贈ると約束した男だ。女優にあこがれる普通の女の子が好きな男だった。
   (注釈1)



軽音楽部の部長(小出恵介)は、バスケで突き指しギターが弾けなくなった3年女子バンドの萌(湯川潮音)の代役を頼まれる。が、すぐに撤回される。どうも中心メンバーの凛子と喧嘩した恵(香椎由宇)がやる気をなくしたらしい。
ドラムスの響子(前田亜季)とベースの望(関根史織)にはどうすることもできない。

恵の気が変わり、学園祭用に練習してきたオリジナル曲を諦め、凛子以外の3人でブルーハーツを演ることにする。だがヴォーカルがいない。
学校の中庭に座り、通りかかった女子を誘うと恵が言い出す。よりによって凛子が現れ、仕方なく響子が声をかける。
韓国人留学生のソン(ぺ・ドゥナ)が校舎の階段を下りてくる姿を目にした恵は、素早く声を張り上げる――「バンドやんない? 嫌じゃないよね?」

訳が分からないまま、嫌じゃないと答えたソンは、部室のテレコで「リンダ リンダ」を聴かされる。いつの間にか涙を浮かべている。

「あたし、頑張ってもいい?」

楽譜を眺めながら、バス停のベンチに座ったソンが隣りの恵に向かってそう言う。
その夜、カラオケ・ボックスで練習を始める。翌早朝の練習は、譜面を追うだけでひどいの一言。本来キーボードの恵は、借り物のギターで悪戦苦闘している。

響子の遅刻で昼間の部室が使えなくなり、恵の元彼のスタジオまでバスで行く。夜はこっそり部室に忍び込む。早朝の音が様になってくる。
ソンは、教師からあてがわれた日韓交流文化展示会の受付で眠りこける。3人に起こされ、ハングル語で書かれたメモを渡される。備品室へ行くと、同級生の男子(松山ケンイチ)からサランへヨと言われる。嫌いじゃないけど、好きじゃないと言って立ち去る。

顧問教師から夜の部室使用を許可されたものの、なかなか練習が始まらない。ソンは一人抜け出し、ステージに立ってみる。プロのバンドみたいにメンバー紹介をしてみる。
バンドの音がいい感じになってきた。

スタジオでの最後の練習の最中、全員眠り込む。本番の時刻になっても4人が現れない。つなぎで、萌が無伴奏で歌う。留年の中島田が「すばらしい日々」の弾き語りをする。ステージの前には、雨宿りする生徒が集まってくる。
4人が駆けつける。濡れた制服のままでステージに立つ。ソンが勝手にバンド名を「パーランマウム」と言う。イントロを歌い出す。「リンダ リンダ リンダ」のフレーズと共に盛り上がる。歌い終わり拍手喝采となる。4人の笑顔が輝く。
   (注釈2)
「リンダ リンダ」(歌:パーランマウム)



交番勤めの平田巡査(本木雅弘)は命令に忠実である。真面目過ぎて融通がきかない。手加減を知らない。県警署長(石橋蓮司)が言う筋書きのない生きた防犯訓練で犯人役を実践するため、徹底して役作りをする。銀行強盗関連の書籍を読み、ビデオを見て研究する。無銭飲食で捕まえたオヤジの生い立ちや銀行強盗を試みるまでの経緯を借用する。

マッシュルームのかつらにサングラス、カーキ色のミリタリー・ルックのコートにM16自動ライフルのモデルガンを隠し、颯爽と商工信用組合に押し入る。好きなアイドルに似た窓口2番の女子行員、桑名ゆり子(伊藤真美)の前へ行き、通帳に書いた要求を突きつける。彼女の通報で拳銃携帯の刑事が隣りの窓口に来る。素早く銃口を彼に向け、バーンと叫ぶ。

「僕、犯人ですから。人ひとり殺してる銀行強盗犯ですから、一応」

やりすぎだぞ、と客役の刑事から言われ、巡査に戻った平田がそう言う。だがすぐさま凶悪な犯人に戻り、ライフルを構える。
14人の人質の首には、拘束済みとコピーされた紙を下げさせる。

人質が解放されない信用組合の前にマスコミと野次馬が押し寄せ、機動隊が配備される。屋台まで並びお祭り騒ぎとなる。
想定外の展開に困惑する防犯訓練本部に、深川次長がやってくる。犯人ならどうするか考えて行動している、と評価する顧問の佐原(斎藤晴彦)も打つ手がない。

元キー局のレポーター柏原(萩原流行)が乗り込んできて野次馬や視聴者を煽る。警察は益々身動きが取れなくなる。空気と書かれた紙をぶら下げたスタッフが行内を中継する。
狙撃隊の姿に気づいた平田は、人質にミリタリー・コートを着せ、誤射を誘う。
防弾チョッキを身につけ、腕に「GO TO HELL」のタトゥを入れた平田がすっかり人気者となる。

死体の札をつけた刑事がついに切れ、ノンキャリアである平田を罵倒する。女性巡査が人形の赤ん坊を使って攻撃し、平田を取り押さえる。だが柏原が無効を主張し、仕切り直しとなる。
警察の失態が続く中、気合が入ってきた平田は、人質を申し出る県警本部長を殉職させる。

3分弱で捕まった相棒にジープで迎えに来らせる。数十人の狙撃手から守るため、ゆり子ともう一人の女子行員の陰に隠れて車に乗り込む。新聞紙で作った万札を相棒が撒き散らす。野次馬がたかる。しびれを切らした狙撃手の一人が実弾を発砲する。現場が混乱する。その隙に車を市営球場に走らせる。人質と共にへリに乗り込む。
真剣に職務に取り組み、犯人になり切った平田巡査の「遊びの時間は終らない」
   (注釈3)



「Wの悲劇」を初めて鑑賞したとき、アーウィン・ショーが書いた短編小説に似ているなと思った。似ているどころではない。パクリにちがいないと思った。
J・D・サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」の多くがニューヨーカー誌に発表されたことを知る僕は、分厚い「ニューヨーカー短編集」を3冊全部読破しており、1979年に常盤新平訳の短編集「夏服を着た女たち」が講談社から出版される前から、ショーの短編を読んでいた。

演劇や映画の世界では珍しくないのかもしれない。だがどう考えても同じことがシカゴと大阪で起こるとは思えない。
短編に出てくるキャロル・ハントも、薬師丸ひろ子が演じた三田静香と比べると圧倒的に大人である。
彼女と婚約していた主人公のピーター・ロイヤルの表現を借りると、こんな女性である――「男性の前では華奢な愁いを含んだ、さびしげな、ほのかに甘く、若々しい、ロマンチックな女だった。同時に、シニカルなところもある女だった」

代役と言えば、「ブロードウェイと銃弾」が面白い。
出資したマフィアのお陰で起用されたボスの女が、彼女の用心棒に消されるという話である。用心棒が殺した理由は、彼女の代役で演じた女優の方が遥かに上手いことに気づいたからだ。
詳しくは、「ぼやくな、売れない物書き」で紹介している。
http://www.manhattansakamoto.com/article/174161844.html


監督したウディ・アレン流のジョークを思いついた――「僕の人生で代役を立てるなら、臨終のときだけでいい」




注釈1、「Wの悲劇」(監督:澤井信一郎)
      日本映画 1984年製作
      ブルーリボン賞主演女優賞、助演女優賞(三田佳子)受賞
      日本アカデミー賞最優秀監督賞、助演女優賞受賞

      メーカー:角川映画
      メディア:DVD

注釈2、「リンダ リンダ リンダ」(監督:山下敦弘)
      日本映画 2005年製作
      音楽:ジェームス・イハ
      映画芸術第1位
      山路ふみ子映画賞新人女優賞(香椎由宇)受賞 

      メーカー:バップ
      メディア:DVD


注釈3、「遊びの時間は終らない」(監督:萩庭貞明)
      日本映画 1991年製作 
      日本映画プロフェッショナル大賞受賞

      メーカー:パイオニアLDC
      メディア:DVD


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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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