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2015年01月18日

教祖様なんていらない。

Lotsa buddhas III
Lotsa buddhas III / jeremydeades


<FB参加記念>アーカイブ・熊本ネタ 人気ナンバー2  (初公開)2011・11・19

教祖様なんていらない。
introducing 「日本の黒い夏-冤罪-」「カナリア」

小学校の通学路をぼーっと歩いていると、「麻原大通り」というバス停が目に入った。
なんじゃこりゃぁあ!と「太陽にほえろ!」の松田優作のように心の中で叫んだ僕は、急ぎポールに近づいた。よく見ると「託麻原(たくまばる)大通り」と書いてある。ほっと胸をなで下ろした。

苗字ランキングによると、麻原姓は全国に約600人おり、滋賀県に多いらしい。
本名でもないのに「麻原彰晃」なんて名乗ってオウム真理教を興した松本智津夫は、地下鉄サリン事件を起こし、首謀者としてしょっ引かれ、麻原姓のイメージを極めて悪くした。600人にとっていい迷惑だ。

他人事ではない。全国に約33万5000人もいるとはいえ、オウムの連中に殺害された弁護士一家は坂本姓である。
何よりも頭にくるのは、ウィキペディアで細かく分類されると、僕と松本智津夫とは1955年3月生まれの熊本県出身の人物にくくられる。
麻原姓の人たちと同じくらい迷惑なデータだ。

言っておくけれど、僕はあいつみたいにデブじゃない!

ハイホー、マンハッタン坂本です。


平成6年(1994年)6月27日夜、松本市の一軒家でモーツァルトのピアノ協奏曲第21番が流れている。
アイロンかけをする神部の妻が急に気分を悪くし、居間のTVでNHKの音楽番組を見ていた神部俊夫(寺尾聡)のもとへふらふらしながら来て座り込む。飼い犬が異常な鳴き声をするので、神部が外へ見に行く。
居間に戻ると、妻が全身を激しく痙攣させている。電話で救急車を呼ぶ。2階の長女を呼ぶ。離れから長男と次女がかけつけると、神部自身も倒れる。長男に向ってあとは頼んだぞ、と言い残して気を失う。

神部家の近くのアパートには、次々と救急車が到着する。防毒マスクをした救急隊員がガラス戸を割って、室内に倒れている人々を運び出す。
担架に乗せられた被害者が群集の前を通り過ぎて行く。その様子を高校生の島尾エミ(遠野凪子)が見ている。

当初2名だった死亡者が7名に増え、十数名だった重軽症者が587名まで膨れ上がった有毒ガス致死事件は、松本警察署によって「容疑名・殺人罪、被疑者・不詳」として捜査が始まる。
毒ガスの原料が青酸カリではないかという報道が飛び交う中、警察は第一通報者の神部に疑いをかける。

重大な事件なので協力してくれと警察に要請された神部は、入院中にもかかわらず仕方なく事情聴取に応じる。39度の高熱、幻覚、幻聴、頭痛と吐き気で起き上がれる状態ではない。だが警察署長と吉田警部(石橋蓮司)の態度は明らかに犯人扱いで、ガスの発生場所が神部の庭だと言う。神部が所有する薬品の中に青酸カリがあったからだ。

7月30日、退院した神部は永田弁護士の事務所で記者会見をする。参考人として警察に協力すると発表する。だが2時間以内という医師の診断書を無視され、7時間に及ぶ過酷な事情聴取を受ける。嘘発見器にもかけられる。
自宅に戻ってからも下痢と不眠に悩まされる。嫌がらせの電話がかかってくる。匿名の脅迫状が20通以上も送られてくる。

「お父さんは、何も恥ずかしいことはしていないんだから、堂々と明るく振舞っていればいいんだよ」

3人の子供たちに向って、神部がそう励ます。
そのときすでに、ガスの正体が青酸カリの500倍もの毒性があるサリンであることが判明していた。素人がバケツの中で調合できる代物ではない。押収されたリストの中に原料となる薬品もない。

新聞や他局が神部犯人説を喧伝する中、ローカルTV局の報道部長の笹野(中井貴一)は、警察の捜査に疑問を投げかける特番を放送する。神部のシロを確信したわけではない。ニュース・エクスプレスの視聴率が稼げると踏んだからだ。
予想以上に視聴率が上がったものの、神部が犯人だと思い込まされた視聴者から猛烈な抗議がくる。

女子高生の島尾エミもそんな視聴者の1人だった。だが12人の死者と5500人に上る重軽傷者を出した「地下鉄サリン事件」が翌年3月に起こり、所属する放送部でドキュメンタリー製作を始める。
神部相手にインタビュー映像を撮影する。
ニュース・エクスプレスのスタッフ相手に「松本サリン事件」の報道過程を取材する。
そして彼女は真摯な目で笹野報道部長を見つめ、涙声をふるわせる。

「平凡な一市民の神部さんの幸福を、ある日突然黒く塗りつぶしてしまったのは、警察とマスコミと、そしてあたしたち市民だったんですね」
   (注釈1)



12歳の岩瀬光一(石田法嗣)と4歳年下の妹・朝子がカルト教団ニルヴァーナの施設に入ったのは、母親の道子(甲田益也子)が出家したからである。全財産を教団にお布施し教団の掟に従う契約書に3人が拇印を押したときから、親子の対面は許されなくなる。

始めうちお供物を放り出した光一は、子供たちの世話人であるシュローパ(西島秀俊)の折檻と洗脳のお陰でラバナという名を与えられる。ルーシアという名の大幹部となった母親の姿を見かけると、心が乱れる。幼い妹は走り寄って母親に抱きつくだけだ。

無差別テロを実行した教団の子供たちが児童相談所に保護される。訪れた祖父は反抗的な光一の引き取りを拒否し、妹だけを東京へ連れ去る。テロ実行犯の母親と同類と見たからだ。
光一は妹を取り返すべく児童相談所を脱走する。ただひたすら田舎道を走り続ける。道を曲がった途端、うしろから来た車が横転する。片手に手錠をはめられた不良少女が車から這い出てくる。同じ齢の由希(谷村美月)である。

身の危険を感じた由希が走り出す。光一が追いかける。児童相談所から逃げてきたことを知る彼女が恩返ししたいと言う。誘拐されるところを助けられたからだ。関西弁で荒っぽい話し方をするが、光一は手錠をはずしてやる。
怪しげな爺さんのアパートへ入る。風呂の中で光一がマントラを唱えている間、上半身裸となった彼女が1万円を稼ぐ。

東京へ向う電車に由希が同乗する。金がなくなる。他人の物を盗むなと光一が言うと、罪のない人を殺してもいいんかと彼女に詰め寄られる。頭を触られたので、霊的エネルギーが落ちると言う。自殺したら地獄に落ちると言うと、人を殺したら天国かと噛みつかれる。

東京の祖父宅へたどり着く。玄関先の地べたや家屋に「親も同罪」などと糾弾する落書きがいっぱいで、中はもぬけの殻である。
再び援助交際相手の車に乗った由希を追って、光一が追いかける。横断歩道の前で停まった車のフロントグラスをバットで叩き割る。お互いに顔をひっぱたき合いながら逃げる。

「お前は神の子じゃない。お前がお前でしかないことに、絶対に負けるな」

脱会した信者たちと偶然出会い、光一はシュローパに励まされる。祖父の行方も調べてくれる。

ルーシアを含めたニルヴァーナの最高幹部6人が集団自殺したとTVが報じる。
光一は泣き叫びながら雨の中へ飛び出して行く。先を尖らせたドライバーで自分を突き刺そうとするが、由希が奪い取る。そのまま1人で祖父宅へ乗り込んで行く。

彼女が祖父と対峙したとき、白髪に一変した光一が現れる。妹が現れ、光一に抱きつく。
手に手を取って3人が歩き出す。まっすぐ前を向いて。
   (注釈2)



カルト教団の仕業で、無実の罪を着せられたり、強制的に入信させられた人々がいる。彼らの苦しみは想像を絶する。命を落とした人々もいる。彼ら犠牲者の家族の嘆きははかり知れない。
首謀者や実行犯の大半が死刑確定し、無期懲役になったところで癒されるものではない。


僕の浅はかな知識によると、圧倒的な数の信者を有する宗教団体の礎を築いた偉人が、歴史上3人いる。
紀元前5世紀頃に生まれたゴータマ・シッダールタ。現在のネパールに位置するカピラヴァストゥ国出身で、のちに釈迦牟尼として仏教の開祖となる。
紀元前4年頃に生まれたナザレのイエス。のちにイエス・キリストと呼ばれ、キリスト教の開祖と言われている。
570年頃に生まれたムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ。アラビア半島の商業都市メッカの出身で、のちにマホメットとしてイスラム教の開祖となる。

彼らの教えを記したものが経典や新約聖書やコーランとして現在に伝えられている。
だが悲しいことに、それらの解釈の仕方で無数に宗派が分かれている。違った宗教のみならず、違った宗派間でも争いが絶えない。大量殺戮を伴う戦争にまで発展することがある。


真理は一つであると言った人がいる。
その真理がどんなものか知らないけれど、そうあって欲しいと僕は思う。
真理が一つであれば、バカ気た差別や争いやテロや戦争なんか起こるはずがない。



注釈:「カナリヤの会」……1995年6月8日に結成されたオウム真理教脱会信者による組織。オウムの宗教施設サティアンを強制捜査した際、捜査員が毒ガスを検知するためにカナリアを携帯したことから命名されたという。


追伸:僕が尊敬するカート・ヴォネガットは芸術について「坑内カナリヤ理論」を唱えている。
社会が非常に危険な状態に陥ると、作家は警報を鳴らし出すのだいう。まるで昔の炭鉱労働者がガスを検出する手段として坑内に持ち込んだカナリヤのように、ピーピーさえずった揚句気を失うのだ。



注釈1、「日本の黒い夏-冤罪-」(監督、脚本:熊井啓)
      日本映画 2001年製作 英題:Darkness in the Light
      日本映画批評家大賞作品賞、特別賞、新人賞(遠野凪子)受賞
      原作:平石耕一

      メーカー:日活
      メディア:DVD

注釈2、「カナリア」(監督:塩田明彦)
      日本映画 2005年製作 英題:Canary
      毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞(石田法嗣)受賞
      挿入歌「銀色の道」 

      メーカー:バンダイビジュアル
      メディア:DVD


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posted by マンハッタン坂本 at 11:15 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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