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2014年02月03日

人生は走馬灯の如く。

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Page 11 / fotologic


思い煩うことはない。人生は無意味なのだ。PARTT

人生は走馬灯の如く。
introducing 「花」「野いちご」

古代インド人は偉い。ゼロを発見したからだ。
古代バビロニア人は偉い。0というアラビア数字を発明したからだ。

H・G・ウェルズは偉い。タイム・マシンを発明したからだ。
お陰で人類は、時間旅行を夢見るようになった。
お陰で人類は、時間を過去と現在と未来に3分割するようになった。
人類以外の生き物は、時間なんて気にもしていないのに。

自分の人生を考えるとき、手応えのあるものは現在だけだ。
過去は<すでにないもの>で、未来は<いまだにないもの>だからだ。

生きている限り、僕は「永遠の現在」を夢見る。
それを映像にするならば、過去と現在と未来が走馬灯のようにぐるぐるとまわり続けている。

ハイホー、マンハッタン坂本です。


20年かけて5回も再審請求した冤罪裁判で無罪を勝ち取った直後、62歳になる弁護士の鳥越(柄本明)は、1週間の休暇を取る。30年前に離婚した恵子(牧瀬里穂)の遺品を取りに来て欲しい、と指宿にあるホスピスから連絡があったからだ。

恵子とは駆け落ち同然で新婚旅行をしたことがある。東京を出て国道1号線、2号線、3号線と寄り道しながら車で西へ下っていき、鹿児島までの道のりだ。
人生の「花」と言うのか、楽しかったことは憶えている。だが10年近く暮らしたのに、別れた妻の顔が思い出せない。

同じ道のりを行くために雇ったドライバーの野崎(大沢たかお)が突然泣き出す。
頭の中に動脈瘤があって手術しないと死ぬかもしれない、手術しても記憶がなくなるかもしれない、記憶がなくなれば死んだも同然だ、死ぬのが怖い、と告白する。
そう簡単に死ぬもんか、と泣き崩れる彼の肩をたたき鳥越が励ます。

どうして彼女の顔を思い出せないんだろうとつぶやくと、野崎がガイドを買って出る。
関東大震災直後に中国人や朝鮮人を襲った暴徒を止めた鳥越の祖父の話を気に入っていたことを思い出す。
あせると台無しになる、と笑ったことを思い出す。

どんぶりの下に代金を隠し、備前の食堂から走り出す。無銭飲食と勘違いした女将(樋口可南子)が追いかけてくる。笑い合いながら逃げる途中、急に気分が悪くなる。
重病患者であることを女将からも野崎からも見透かされる。

3号線の終着点、鹿児島に到着する。
砂風呂で結婚式を上げたことを思い出す。
ブーケ代わりに鉢植えの花を選ばせたことを思い出す。

ホスピスの看護婦(藤村志保)から2冊のスクラップ・ブックを渡される。20年間の戦いを伝える新聞の切り抜きが貼ってある。新婚旅行のツーショット写真が挟まっている。
恵子が大切に育てた花畑に連れて行かれる。忘れな草が一面に咲き誇っている。花言葉は、私を忘れないで、と言った恵子の声を思い出す。
地面に膝をつき、鳥越は声を上げて泣き崩れる。

「君は、無傷で戻ってくるんだ。そう信じて僕はここで待つ」

癌を患っていることを告白した鳥越は、手術を決心した野崎に向かって励ます。
   (注釈1)
Forget-me-not / Myosotis / 勿忘草(わすれなぐさ)
Forget-me-not / Myosotis / 勿忘草(わすれなぐさ) / TANAKA Juuyoh (田中十洋)



いささか孤独な日々だが、医者を引退し人とのつきあいを断った以上、仕方がない。
学者肌で気難しいので、まわりの人間に苦労をかけたことは自覚している。
だが、懸命に働き科学の進歩に貢献したつもりだ。お陰でルンド大学で名誉博士号を授与する。

ストックホルムの自宅を出発する朝、78歳のイーサク・ボルイ(ヴィクトル・シェーストレム)は悪夢で目が覚める。針のない時計塔の下で、滑り落ちた棺桶の中から這い出た自分の分身に手を捕まれ、引き込まれそうになったのだ。
ルンドまで車で行くと伝え、40年仕える家政婦を憤慨させる。その代わり、医者で息子のエーヴァルトの妻マリアン(イングリット・テューリン)が同行すると言う。

「一見、とても穏やかで、優しい紳士。でもエゴイストよ」


私の何が好かん?とイーサクが訊ねると、マリアンが率直にそう答える。夫とうまくいかず義父を頼って来たのに、期待外れだったからだ。
嫌いなわけでなく、哀れだとも言われる。

途中、子供のころ夏を過ごした別荘に寄る。
婚約者だった従妹のサーラ(ビビ・アンデション)が目の前に現れる。伯父の命名日のお祝いのために「野いちご」を摘んでいる。そこへ弟のジークフリドが現れ、彼女に言い寄りキスをする。籠から野いちごがこぼれる。

サーラという名の若い娘と若者二人が便乗する。大きな車の中が賑やかになる。
開業医をしていた町のガソリン・スタンドに寄る。店主(マックス・フォン・シドー)から恩人扱いされる。ずっとこの町に住んでいればよかった、と後悔する。

車の中で再び悪夢を見る。
医者として不適格、と試験官から言い渡される。冷淡で自己中心的で、無慈悲だからだ。
医者の第一の義務は許しを請うことだと教えられ、浮気相手と密会する亡き妻の様子を見せつけられる。罰は孤独だという。

生きながら死ぬ夢を見たと言うと、エーヴァルトもそんなことを言ったとマリアンが告白する。憎み合う夫婦の間に生まれた息子にとって、彼女に宿った新しい命は不幸だ。だが彼女は産みたいと訴える。
何も知らぬ若者たちが博士号のお祝いに野の花をプレゼントしてくれる。

息子の家に到着する。大学で盛大な授与式に参列する。若者たちが祝福してくれる。
疲れて早々と着替える。家政婦に予定を変えたことを謝罪する。
ベッドに息子を呼び、夫婦仲を心配していると伝える。夫とダンス・パーティへ出かけるマリアンに、楽しい旅だったと伝える。大好きよ、と言ってくれる。

子供のころを思い浮かべる。野いちごはもうないのよとサーラが言う。二人で両親を探す。湖畔で釣りをしている。
イーサクは、安堵の眠りにつく。
   (注釈2)



言うまでもないが、2作品とも「センチメンタル・ジャーニー」ではない。
現在の自分が過去の自分をなぞるとき、家の中で一人悶々とするより旅をする方がいい。道連れがいれば、しゃべるうちにいろんなことを思い出す。飛び入りがあると、思いがけなく楽しい。
そして過去の自分をなぞりつつ、未来の自分を思い描くことができる。

映画では、ラスト・シーンがゴール地点となる。
人生では、むしろスタート地点になるような気がする。



1957年12月、「野いちご」を公開したとき、イングマール・ベルイマンは39歳だった。彼は20世紀を代表する天才映画監督である。
1975年12月、アルバム「ワインの匂い」に収録した「老人のつぶやき」を発表したとき、オフ・コースのリーダーである小田和正は28歳だった。彼は日本を代表する天才シンガー・ソングライターである。
二人の共通点は、若くして老人の心象風景を見事に描ききったことだ。僕が彼らを天才だと思う所以はそこにある。

「老人のつぶやき」(歌:オフ・コース)カバー




注釈1、「花」(監督:西谷真一)
      日本映画 2002年製作
      原作:金城一紀 脚本:奥寺佐渡子
      音楽:村治佳織

      メーカー:ジェネオン・エンタテインメント
      メディア:DVD
テーマ曲「森に夢見る」(村治佳織)


注釈2、「野いちご」(監督、脚本:イングマール・ベルイマン)
      スウェーデン映画 1957年製作 英題:Wild Strawberries
      ベルリン国際映画祭金熊賞、国際批評家連盟賞主演男優賞受賞
      ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞
      キネマ旬報外国映画ベストテン第1位

      メーカー:ハピネット・ピクチャーズ
      メディア:DVD


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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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