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2014年02月10日

「我ら勝てり」とゴールインする。

アベベ・ビキラ.jpg

思い煩うことはない。人生は無意味なのだ。PARTU

「我ら勝てり」とゴールインする。
 introducing 「民族の祭典」「マラソンマン」

故事来歴には、作り話が多い。

紀元前490年、将軍ミルチアデスが率いるアテネ・プラタイア連合のギリシャ軍は、アケメネス朝ペルシャ軍に対し歴史的な勝利を収める。1万の重装歩兵が2万5千の大軍を破ったのだ。ギリシャ軍は192、ペルシャ軍は6400の兵を失う。

伝令に選ばれた俊足のエウクレスは、完全武装のままマラトンを出発する。アッティカ半島の山を越え、南西約30キロに位置するアテネまで走り続ける。無防備となった祖国では、親ペルシャ派と反ペルシャ派が睨み合っているからだ。
良い知らせ(エヴァンゲリオン)を携え、エウクレスが祖国の地に到達する。そして「我ら勝てり」と言って息絶える。

言うまでもなく、話の前半はヘロトドスの「歴史」に記されている。
後半は明らかにあとから作った話だ。

1896年、近代オリンピック・第1回ギリシャ大会で、最初のマラソン競技が開催される。故事に基づき、マラトンからアテネまでのコースである。
42.195キロに定着したのは1924年・第8回パリ大会からだ。

マラソンは人類が生み出した偉大な競技である。
競技名の由来がたとえ作り話であろうと、シンプルかつ過酷なスポーツへの挑戦を止める人はいない。

ハイホー、マンハッタン坂本です。

1936年、第11回大会は、アドルフ・ヒトラーのオリンピックだった。
古代オリンピックの発祥地ギリシャから史上初の聖火リレーが始まる。ブルガリア、ユーゴスラビア、ハンガリー、オーストリア、チェコスロバキアを通過し、ドイツのベルリンへ到着する。

オリンピック・スタジアムには51の国旗が並び、日の丸もたなびく。
10万人の観衆がナチス式敬礼をし、ヒトラーが開会を宣言する。
男子ハンマー投げ、砲丸投げ、槍投げでドイツ選手が金メダルを獲得し、観戦していたヒトラーが狂喜する。

男子100メートル走でアメリカのジェシー・オーエンス、800メートル走でアメリカのジョン・ウッドラフ、1500メートル走でニュージーランドのジャック・ラブロック、10000メートル走でフィンランドのイルマリ・サルミネンがそれぞれ金メダルを獲得する。

トラック競技の花形、マラソン競技が始まる。前回優勝アルゼンチンのザバラがトップでスタジアムを後にし、折り返し地点まで独走する。
35キロ地点で日本の孫基禎選手が先頭になる。日本統治下にあった朝鮮出身の世界記録保持者である。
孫はそのまま独走を続け、1着でゴールインする。イギリスのアーネスト・ハーパーが2着、日本の南昇竜選手が3着でゴールインする。
「君が代」が流れ、2つの日の丸が揚がる。


再びマラソン競技で日の丸が揚がったのは、第18回東京大会である。
エチオピアのアベベ・ビキラがゴールインしたあと、円谷幸吉選手が国立競技場に入ってくる。最後の1周でイギリスのベイジル・ヒートリーに抜かれ、3着でゴールインする。

4年後、人一倍責任感の強かった円谷幸吉は、自衛隊体育学校宿舎の自室で自殺する。27歳だった。
遺書には、こう書かれてあった。

「父上様母上様、三日とろろ美味しうごさいました。干し柿もちも美味しうございました。
幸吉は、すっかり疲れ切って走れません。何卒お許し下さい。」


   (注釈1)(注釈2)



ゼッケン17番のアベベ・ビキラが走っている。大歓声の中、マイペースでひた走る。そして大きく腕を広げゴールインする。
セントラル・パークでランニングするトーマス・リビー(ダスティン・ホフマン)の頭には、その勇姿が常に思い浮かぶ。下町のアパートへ戻ると、額に入れた写真が飾ってある。

コロンビア大学の図書館で、リビーはスイス人留学生テルサ(マルト・ケラー)と知り合う。デートの最中、暴漢に襲われる。
その知らせを受け、実業家の兄シーラ(ロイ・シャイダー)が訪ねて来る。3人で食事中、彼女がドイツ人であることを見破る。彼女に近づくなと忠告される。

血だらけになって兄がアパートへ戻ってくる。ベーブ、ベーブと愛称を呼びながら息絶える。
兄の仕事仲間のジーンウェイ(ウィリアム・ディベイン)がやってくる。FBIが取り扱えない仕事をしていたと知らされる。
その夜、リビーは暴漢たちに拉致される。

気がつくと椅子に縛り付けられている。
どぎつい銀縁眼鏡をした白髪のクリスチャン・ゼル(ローレンス・オリヴィエ)が現れる。「それは安全か?」と執拗に尋ねられる。

「人生は簡単だ。苦しむか苦しまないかだ」

無理やり口を開かされ、歯科医の治療器具を使って虫歯を攻撃される。リビーは激痛で気を失う。
悪魔的な微笑を浮かべたゼルが、今度は電気ドリルを使って健康な歯を攻撃する。

ジーンウェイが助けに来る。逃走中の車の中で、「白い天使」と呼ばれていたゼルが、ナチ収容所の囚人たちからダイヤモンドを巻き上げていたことを知る。兄が言い残したことを聞かれるが、答えられない。アジトに戻される。

始末されると感じたリビーは、隙をついて逃走する。
ブルックリン橋へ向かって朦朧としながら必死に走る。力の限り走り続ける。アベベの勇姿が頭をかすめる。
追っ手を巻いてテルサと合流する。
だが彼女が運転する車が白い一軒家に近づいたとき、テルサがグルであることに気づく。ゼルの兄の家だったからだ。

リビーは、アパートから持ってきた拳銃で彼女を盾にする。追っ手と銃撃戦となる。最後の一人を倒すと、すでにテルサは殺されている。
アタッシュケースを持って銀行を出てきたゼルを待ち伏せする。
セントラルパークの浄水場まで行き、二人は対峙する。ダイヤモンドの詰まったケースをリビーが投げ捨てる。あわてて拾いに行ったゼルが階段を転げ落ち、腕の仕込みナイフで自らを刺し絶命する。

襲いかかるナチの残党に対し孤軍奮闘したものの、ユダヤ人のリビーにとって空しい勝利だった。
   (注釈3)



僕がもっとも好きなマラソン・ランナーは、シドニー・オリンピックの金メダリスト高橋尚子選手である。
彼女は、34キロ過ぎで颯爽とサングラスを捨てる。ルーマニアのリディア・シモンを振り切り、一気にスパートする。スタジアムから湧き起こる歓声を浴びながら、堂々と走り続ける。
早いピッチで走っているにもかかわらず頭がほとんど上下にぶれない。その姿が惚れ惚れするほどスタイリッシュだ。

「皆さんの声援のお陰で、ゴールまでたどり着きました。すごく楽しい、42キロでした」

走りっぷりもさることながら、シンプルなメッセージもジーンときた。



繰り返すけれど、マラソンは人類が生み出した偉大な競技だ。
人生をマラソンに例える人がいる。だがそんなに単純ではないと思う。
なぜなら、オリンピックに代表される順位を競うマラソン競技は、平等にスタートさせてもらえるからだ。

人生はマラソン競技とは違う。誰もが生まれたときから平等にスタート地点に立てるとは限らない。生まれたときからそれぞれハンディを背負ってスタートしている。
どちらかと言えば、市民マラソンの方がそれに近い。スタート・ラインより遥か後方から走り出す人が多いからだ。


僕は作り話が好きだ。
生活感のあるリアルな話より、人生を揶揄したコメディの方が好きだ。
「マラトンの戦い」に関する作り話には、一つだけいいところがある。エウクレスがアテネに到達した途端、「我ら勝てり」と言って息絶えることだ。
人生のゴールは、何だかんだあっても息絶えてお仕舞いだ。



蛇足ながら、熊本市の政令指定都市移行記念としてスタートした「熊本城マラソン」が2014年2月16日に第3回が開催される。お見知りおきを。
熊本城マラソン.png



注釈1、「民族の祭典」(監督:レニ・リーフェンシュタール)
      ドイツ映画 1936年製作 原題:Olympia 1 Teil
      ヴェネチア国際映画祭外国語映画賞受賞
      キネマ旬報ベストテン第1位

      メーカー:IVC
      メディア:DVD

注釈2、「東京オリンピック」(監督:市川崑)
      日本映画 1965年製作 英題:Tokyo Olympiad 1964
      カンヌ国際映画祭国際批評家賞受賞

      メーカー:東宝
      メディア:DVD

注釈3、「マラソンマン」(監督:ジョン・シュレシンジャー)
      アメリカ映画 1976年製作 原題:Marathon Man
      原作、脚色:ウィリアム・ゴールドマン
      ゴールデングローブ賞助演男優賞(ローレンス・オリヴィエ)受賞

      メーカー:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
      メディア:DVD

     
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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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