INFORMATION INFORMATION

2014年04月01日

研修期間には気をつけろ!


白い巨塔1.jpg

研修期間には気をつけろ!
introducing 「ヒポクラテスたち」「海と毒薬」

4月ともなれば、たいていの新入社員が研修期間に突入する。会社の規模によりけりだが、ろくに仕事を教えてもらえないままいきなり現場に放り込まれる人もいれば、3ヶ月間みっちり基礎を叩き込まれた挙句に正社員に採用されない人もいるだろう。
新入社員にとって苦い思い出が残る期間となるにちがいない。

医療の世界に眼を向けると、臨床研修期間に突入しているのがレジデントである。そのまま研修医と言ってもいい。大学病院の総回診で、教授のうしろから金魚のフンのようにぞろぞろとくっついて回る白衣の連中といったイメージだ。
よく混同されるインターンは、国家試験の受験資格を得るために1年間無給で臨床実地研修をすることで、その制度は1968年に廃止されている。

昔のインターンを体験した「梅ちゃん先生」こと堀北真希の場合、歳の近い入院患者と仲良くなったり、研究論文を書いたり、とんちんかんな院内恋愛をしたり、呑んだくれ町医者の世良公則のもとでアルバイトするうちに開業医になる決心をしたりする。
臨床研修を実際に体験した人に言わせれば、そんなのんびりしたものではないはずだ。

ハイホー、マンハッタン坂本です。


「君たちには、知識もない、技術もない、経験もない。あるのは何だ? 体力だけだろ!」

臨床実習(ポリクリ)の一環として心臓手術を見学した京都・洛北医科大学・最終学年6回生のグループに向かって、手術を終えたばかりの助教授(原田芳雄)が、バテバテの彼らを見てそう叱咤する。
グループには、今ひとつ勉学に身が入らない荻野愛作(古尾谷雅人)、妻子持ちでアルバイトに忙しい加藤(柄本明)、産婦人科医院のドラ息子の河本、熱血漢の大島、投げて打って走れる医者を目指す王、そして紅一点で優等生の木村みどり(伊藤蘭)がいる。付属病院の皮膚科、産婦人科、麻酔科と回ってきた彼らは、必ず誰かが失敗して教官に叱られている。

荻野は、8年前からつき合っている順子のアパートに外泊することが多い。医者の不養生と言うのか、避妊法のテストは満点なのに、生理がないと彼女が言う。
産婦人科で失敬してきた試薬セットで調べると、妊娠は本物らしい。彼女を裏通りにある開業医のところへ連れて行き堕胎させる。
順子の出血がひどくなり、仕方なく河本の実家に担ぎ込むと、入院して検査した方がいいと言われる。彼女の実家に知らせると、父親が来る。そのまま彼女を故郷に連れ去られる。医者嫌いの兄が彼女の荷物を取りに来る。

救急病院の控室で、みどりと二人だけで待機する荻野は、暇つぶしに河本との関係を話題にする。恋は恋でもセコイかなと彼女が言うので、外身は恋(濃い)でも中身は薄い、ウォッホッホなんて返す。そのあと救急医療の甲斐なく患者が死ぬところを見て彼女が倒れそうになる。
そんな彼女が医者やめたと言い出す。男に負けまいと医学部を受験して合格しただけで、人の生死に携わる自信がないからだ。結局彼女は卒業試験の最中に退学届けを出し自殺する。

卒業試験の勉学に励むある日、ニセ医者逮捕の記事が新聞に載る。順子が中絶手術をした開業医だ。ショックを受けた荻野は、彼女の実家に電話をし結婚すると泣き崩れる。マジックで黒く塗りつぶした白衣を着て病院へ行き、驚く仲間たちを相手に暴れ出す。
一年後、付属病院の精神科の病棟で、荻野は一緒に学生寮で暮らした西村(小倉一郎)とキャッチボールをしている。精神科志望だった西村にとって彼が担当する初めての患者だった。
  (注釈1)



太平洋戦争末期の昭和20年5月、九州の帝大・医学部第一外科。
研究生の勝呂(奥田瑛二)は、大部屋に入院しているおばはん(千石規子)の治療に熱心である。彼にとってただの学用患者ではなく、最初の患者だったからだ。
同級の戸田(渡辺謙)は、助かる見込みのない患者に執着して何の役に立つと冷ややかだ。

二人が親父と呼ぶ橋本教授(田村高廣)は、医学部部長の椅子を第ニ外科の権藤教授と争っている。選挙のための点数稼ぎに、結核患者で、前部長の親戚である田部夫人の手術を前倒しにする。柴田助教授(成田三樹夫)は、おばはんを新しい方式の実験台に使うという。
抵抗できず苦悩する勝呂に向かって、医学の生き柱になれると無情に戸田が言い放つ。

だが教授の手術は失敗に終わり、おばはんの手術は延期となる。そしてB-29による空襲のあと、おばはんはあっさり息を引き取る。
みんなが死んでいく世の中で、たったひとつ死なすまいとしたものなのだ、とおばはんに執着した理由を勝呂は悟る。

西部軍の命令により、捕虜となったB-29の搭乗員が8名送られてくる。生体解剖を行えという。無差別爆撃をやった連中は戦時特別重犯罪人の適用を受けると橋本教授が正当化する。
即座に戸田は参加を承諾するが、勝呂は躊躇する。
神というもんはあるんかな、と珍しく神妙に問いかける戸田に対し、あってもなくてもどうでもよか、と勝呂は投げやりに答える。

体格検査と称してアメリカ兵捕虜が病室に入って来る。麻酔を用意する段になって勝呂が怖気づく。
無理やり麻酔をかけられ動かなくなった捕虜のまわりを医者と看護婦と軍の将校たちが取り囲む。
橋本教授が右肺全部と左肺上葉の摘出実験を行う。どれだけ切除すれば死ぬのか、結核治療に役立てるためだ。異様に暑い陽射しが差し込んでくる。
一旦停止させた心臓にヘルツマッサージを施す。心臓の鼓動が不気味に響いてくる。低いうめき声が上がり、やがて捕虜が事切れる。
憔悴した勝呂が外に出ると、赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。

いつか罰を受けると怯える勝呂に向かって、第一外科の助手を約束された戸田が言う。

「こんな時代の、こんな医学部におったから、捕虜を解剖しただけや」
  (注釈2)



ブラッド・ピット主演の「セブン」は、暴食、色欲、強欲、憤怒、怠惰、傲慢、嫉妬を意味する「七つの大罪」のことだが、「新・七つの大罪」をご存知だろうか。
2008年3月に発表したローマ法王庁によると、遺伝子改造、環境汚染、社会的不公正、貧困、過度な裕福さ、麻薬中毒、そして人体実験の七つだという。

毎日報道されるニュースを見ていると、一つは必ず「新・七つの大罪」にまつわる出来事のような気がする。
遺伝子組み替えした輸入食品の規制、PM2.5による大気汚染、衆議院選挙の違憲判決、生活保護受給者の増加、資産家夫婦の誘拐殺人、脱法ハーブの蔓延、などなど。
もっとも縁遠いのが人体実験のように思えるが、僕らのあずかり知らぬところで密かに行われているかもしれない。

「海と毒薬」の人体実験は、戦時下の医学徒とは言え許される犯罪ではない。大半の日本人が神を持たないからと言って許される犯罪でもない。
人口が異常に増加する地球にあって、祖国が戦時下にあろうとなかろうと、住民に信仰があろうなかろうと、国際的に組織的に暗黙のうちに人体実験が行われることを僕らは許してはならない。


世界で初めてアフォリズム(格言)を発したのは、医学の父と称せられるヒポクラテスだという。

「病気は、人間が自らの力をもって自然に治すものであり、医者は、これを手助けするにすぎない」



注釈1、「ヒポクラテスたち」(監督、脚本:大森一樹)
      日本映画 1980年製作 英題:Disciples of Hippocrates
      横浜映画祭助演女優賞(伊藤蘭)受賞

      メーカー:ジェネオン・エンターテイメント 
      メディア:DVD      

注釈2、「海と毒薬」(監督:熊井啓)
      日本映画 1986年製作 英題:The Sea and Poison
      原作:遠藤周作
      ベルリン国際映画祭・銀熊賞審査員グランプリ部門受賞
      キネマ旬報ベストテン第一位、日本映画監督賞受賞

      メーカー:パイオニアLDC
      メディア:DVD 


マンハッタン坂本のシネマワンダーランドが気にいった!
そんな方は、一票お願いします→ 人気ブログランキングへ
人気ブログランキングへ
posted by マンハッタン坂本 at 00:30 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:



×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。