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2014年04月21日

正しい圧力鍋の使い方。

圧力鍋.jpg

自選パロディ集セカンド・シーズン PARTT

正しい圧力鍋の使い方。
introducing 「アンタッチャブル」「ジョゼと虎と魚たち」

「銃・病原菌・鉄」でピュリッツァー賞を受賞した、ボストン出身の高名な進化生物学者ジャレド・ダイアモンド氏にインタビューを試みた。
   (注釈1)
―――1897年から毎年行われているボストン・マラソンで爆弾テロ事件が起こって一年が経ちました。当時、FBIのヤラセではないかと憶測が飛び交っていましたが、博士はどのようにお考えですか?
ジャレド 確かに私はボストン生まれのボストン育ちだがね。マラソンに関しては、過去6回も走った村上春樹氏に尋ねた方がよくないかね。
―――残念ながら「ニューヨーカー」の電子版に「私は、毎日走り続けることを通し、傷つき、命を失った人たちを悼む」なんて寄稿しちゃって、オバマ政権の発表を鵜呑みにしてるみたいです。
ボストンと言えば、1773年にアメリカ独立戦争の契機となったティーパーティー事件が起こったところですよね。歴史学者でもある博士の見解を是非お聞かせ願いたいのですが。
ジャレド あの事件は、ボストン市民が東インド会社の船を襲って1万5000ポンドのお茶を海中に捨てただけだが、その3年前に5人の犠牲者を出した「ボストン虐殺事件」が勃発したことを知らないのかね?
―――その中に一人だけ黒人がいて、独立革命のために命をささげた最初の黒人殉教者と言われてますよね。クンタ・キンテとかいう名前の――。
ジャレド それは「ルーツ」の登場人物だ。正しくはクリスパス・アタクスという男だ。だが彼は独立運動に関わっていたわけでも殉教者でもない。バハマから着いた捕鯨船を降りてボストンに上陸し、たまたま事件に巻き込まれて殺されただけだ。
―――つまり博士の見解としては、圧力鍋の爆発で犠牲となった中国人留学生は、たまたま巻き込まれただけだと?
ジャレド 1万3000年にわたる人類史から見れば些細な事件だがね。ただこれだけは言える。先進国の人々が資源やエネルギーの浪費を減らし、途上国の人々が消費水準を上げてバランスをとらない限り、テロや難民の問題はおさまらない。
―――著書の中で、「平均的なニューギニア人は平均的な白人に頭のよさでけっして劣っていない」と書かれていますが、彼らならボストンマラソン爆弾テロ事件をどのように解決すると思われますか?
ジャレド おそらく対立する者同士が集まり、お互いの痛みを共有するために食事会を開くと思うね。スイートポテトが出るにちがいない。
―――スイートポテトですか?
ジャレド サツマイモは広くニューギニアで栽培されているんだよ。それを使ってスイートポテトをつくるなら、圧力鍋がいい。

ハイホー、マンハッタン坂本です。


さて今回紹介する映画には、圧力鍋やスイートポテトは登場しない。必殺仕事人ばりの意表をつく凶器も出てこない。
本来の目的とは若干違う使い方だけれど、映画の中で極めて印象に残るアイテムである。それは乳母車。


エドガー・フーバーがFBIの前身である司法省捜査局の長官だった禁酒法時代。エリオット・ネス(ケビン・コスナー)は、財務省酒類取締局・特別捜査官としてシカゴに乗り込んでくる。
シカゴを牛耳るアル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)の手下によって居酒屋が爆発され、10歳の少女が犠牲となった直後である。

ネスは華々しく手柄を立てようと除雪車に乗って倉庫に突撃する。だが木箱の中にカナダ・ウィスキーはなく蛇の目傘が入っている。カポネに買収された警官が事前に手入れの情報を漏らしていたからだ。
「奴らを何とかして」と少女の母親から涙ながらに訴えられ奮起した彼は、パトロール専門のジム・マローン(ショーン・コネリー)に協力を求める。ついでイタリア系のスゴ腕スナイパーのジョージ・ストーン(アンディ・ガルシア)をスカウトし、財務省の経理部から出向してきたオスカー・ウォレス(チャールズ・マーティン・スミス)を加え、のちに「アンタッチャブル」(手出しのできぬ奴ら)と呼ばれるチームを組む。
早速、公然の秘密だった郵便局の地下にある密造酒の倉庫に散弾銃を持って突撃する。

「警官の心得。“秘密は上司に打ち明けるな”」

国境の橋でブツの取引があるという情報が入る。
カナダへ向う飛行機の中、脱税の証拠をつかめばカポネをあげられる、とウォレスが進言する。
銃撃戦の末、カポネの帳簿係を捕まえる。だが警察の裏切りにより、ウォレスと共にヒットマンに消される。
証人なしの告訴は取り下げると検事に言われ、諦めかけたネスをマローンが叱咤激励する。その彼もヒットマンの機関銃に倒れる。
かけつけたネスとストーンに向って、血だらけのマローンが帳簿係の手がかりを伝え息絶える。

シカゴ・ユニオン駅。
後ろ向きに乳母車を引きながら階段を登る母親の姿に業を煮やしたネスが手を差し伸べる。登りきる直前に帳簿係が現れ、コートに隠した散弾銃の銃口を護衛たちに向ける。銃撃戦の最中、ゆっくりと乳母車が階段を落ちていく。
かけつけたストーンが乳母車の下に滑り込み、右脚と左手で乳母車を支え、帳簿係を盾にした男に狙いを定める。撃て、とネスが命令する。

生き残った帳簿係が証言する。
陪審員全員を買収し余裕のアル・カポネの前で、裁判長が陪審員の入れ替えを命じる。
騒然とする中、脱税による11年の懲役刑を言い渡す。
   (注釈2)



明け方、仕事で犬の散歩に出かけた恒夫(妻夫木聡)は、乳母車が坂道を走ってガードレールにぶつかるところに出くわす。見たってや!と坂の上から叫ぶのは、アルバイト先の雀荘で噂になっている婆さんである。
古い乳母車にかぶさった毛布を取ると、小さくうずくまった少女(池脇千鶴)がいきなり包丁を振り回す。
婆さんの話だと、孫は足が不自由らしい。しきりに散歩に出たがるので、ご近所に見つからないように明け方に出るという。
朝めしを食っていくかと誘われ、恐る恐る味噌汁をすするとやたら美味しい。ご飯も漬物もだし巻き卵もイケるので褒めると、当たり前やとぶっきら棒に少女が言う。

恒夫は大学4回生で、福祉関係に就職を希望する香苗(上野樹里)と恋仲である。だが自分のことをジョゼと呼ぶ少女の家に何かと通うようになる。
ジョゼは、祖母がゴミ捨て場から拾ってきた本を繰り返し読む。サガンの「一年ののち」の続編を読みたいと言うので、古本屋から調達してくる。金髪のウイッグを被り夢中で読んでいるとき、初めて柔らかい笑みを見せる。
スケートボードと合体させた乳母車で、ジョゼをドライブに連れ出す。街中や川沿いの道を疾走する。

恒夫の計らいで、家が改築され台所も綺麗になる。そこへ突然、香苗が見学に来る。怒り狂ったジョゼが本を投げ、コワレモノはどうにもできん、来ないでくれと婆さんに締め出される。
数ヵ月後、婆さんの死を知った恒夫が慌ててジョゼの家を訪ねる。泣きながら帰れと背中を叩きつつ、いて欲しいと懇願するジョゼと初めてキスをする。

「一番怖いもん見たかったんや。好きな男の人ができたときこうやって」

動物園でトラを見ながら、乳母車のジョゼが恒夫にそう言う。そして恒夫の手を握りしめる。

ジョゼの家に引っ越して1年後、里帰りの予定で、恒夫はジョゼと一緒に車の旅に出る。途中、「なかみち水族館」を訪れる。休館だったので、ジョゼが癇癪を起こす。
代わりに海を見に行く。車椅子を嫌がるジョゼを背中に抱え浜辺を歩く。
ホテル「お魚の館」に入り、巨大なホタテ貝のベッドでセックスをする。照明が回転し部屋いっぱいに魚たちが泳ぎ始める。幻の深海魚が現れ、迷子の貝殻のように独りぼっちになるとジョゼがつぶやく。

数ヵ月後、恒夫はジョゼのもとを去る。正直逃げたのだが、突然涙が止まらなくなる。
   (注釈3)



―――博士は現在、ロサンゼルスにお住いですよね。
ジャレド カリフォルニア大学で地理学を教えているんだが、学生の反応というのは貴重だね。私が興味を抱き研究したテーマを授業で教えてみると、ネガティブな反応をされることがある。すると私はこう判断する。そのテーマについて書いた文章を入れないでおこう、本が売れなくなる。
―――ロサンゼルスの話なんですが、時速50マイル以下に減速すると爆発する時限爆弾を仕掛けられたバスがダウンタウンに向かって爆走しています。
ジャレド その映画は「新幹線大爆破」のパクリかね。
―――そのバスを運転する羽目になったサンドラ・ブロックは、必死になってハンドルをさばく。すると横断歩道を渡ろうとする女が目に入るや何かに衝突し、乳母車が舞い上がる。彼女はパニックになりハンドルから手を離す。そばにいたロス警察のキアヌ・リーブスが代わりにハンドルを握り、空き缶だと叫ぶ。乳母車の中は空き缶の山だったわけです。結局二人は何とかバスから脱出し、サンドラ・ブロックが言う。異常な状況で結ばれた男女は長続きしない、と。
ジャレド 私に何を言わせたいのかね。
―――二人は長続きすると思いますか?
ジャレド 「スピード2」を見てるだろ? まあいい、仮に二人が結婚したとして、結婚生活が存続するかどうかと言うと、あらゆる問題で合意と妥協が必要だね。これは現代社会を存続させる秘訣でもある。水、森林、治安、人口、外交など、次々と生じる社会問題から目をそらさず、対策を講じる必要がある。
今アメリカで必要な現実的な対応は、1%の人々だけの利益を追求するのではなく、全員が満足できる社会を目指すことだよ。
―――そんな社会が実現すれば、殺人に圧力鍋を使うような事件は起こらないでしょうね。
   (注釈4)


注釈1、「銃・病原菌・鉄(上・下)」(著者:ジャレド・ダイアモンド)
      初版:1997年

      出版社:草思社
      メディア:文庫

注釈2、「アンタッチャブル」(監督:ブライアン・デ・パルマ)
     アメリカ映画 1987年製作 原題:The Untouchables
     音楽:エンニオ・モリコーネ
     米アカデミー賞助演男優賞(ショーン・コネリー)受賞
     ゴールデングローブ賞助演男優賞受賞

     メーカー:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
     メディア:Blu-ray

注釈3、「ジョゼと虎と魚たち」(監督:犬童一心)
     日本映画 2003年製作 英題:Josee,the Tiger and the Fish
     キネマ旬報ベストテン主演男優賞受賞
     ブルーリボン賞作品賞受賞

     メーカー:TCエンタテインメント
     メディア:Blu-ray

注釈4、「スピード」(監督:ヤン・デ・ボン)
     アメリカ映画 1994年製作 原題:Speed
     米アカデミー賞録音賞、音響編集賞受賞

     メーカー:20世紀フォックス・ホーム・エンターテインメント・ジャパン
     メディア:Blu-ray

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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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