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2013年05月27日

質屋通い、なんて死語?

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質屋通い、なんて死語?
introducing 「人情紙風船」「おいしい結婚」

毎度のお運びで、有り難く御礼申し上げます。
「アラカン」と言いますと、映画ファンの方なら御承知だと思いますが、往年の時代劇スター「嵐寛寿郎」さんのことですが、近頃違う意味で流布してるそうですな。「アラウンド還暦」の略だそうで、アラフォーとかアラサーの親戚ってことで、驚きました。
私もアラカン世代なんですが、60歳前後のオヤジってのは平気で死語を使うもので、お若い方に聞かれますと完璧に年寄り扱いされます。

ですから、若い時分に質屋通いした、なんてうっかり口にできやしません。と言うのも、持ち込んだ質草を担保に金を借りるなんて従来の利用の仕方より、もっぱら夕方のTV・CMで喧伝してるように、高級ブランド品を買い取ってもらうのがメインだからです。
ところが、「偽装質屋」のニュースを拝見して驚きました。百円ショップで買ってきた腕時計を質草に十万円を貸し付けて法外な高金利を取り立てる、年金生活のお年寄りを狙った新手のヤミ金融です。従来のやり方を悪用したわけですな。

じゃあ、春歌(しゅんか)はどうかと思いまして、試しにパソコンで検索してみました。するとまたまた驚きました。漢字で打ち込むと、トップに「はるうた」が出てくるんですな。「春一番」とか「なごり雪」とか普通のヒット曲のことです。おまけに「はるか」なんて読み方でアニメのキャラクターまで出てきました。
いやはや、この調子だと、先日亡くなった大島渚監督の「日本春歌考」って映画の中で繰り返し歌われてる「ヨサホイ数え歌」なんか、お若い方はご存知ないのかもしれませんな。まあこんな歌です。

「七つ出たホイのヨサホイのホイ、質屋の娘とやる時にゃホイ――」

てなわけで、「質屋の娘」の一席お伺い致します。



江戸深川の棟割長屋に新三(中村翫右衛門)という男がおりまして、なかなかの男前で気風がいい。口も達者で、つい先日も長屋で首をくくった浪人のために、派手にお通夜をしてやろうてんで大家の長兵衛をそそのかして、五升の酒を出させたばかり。お祭り騒ぎの通夜の席ではさらに追加を物にして、その日暮らしの長屋の男衆は大喜びです。
本職は髪結なんですが、もぐりの賭博をやってるので源七親分(市川笑太郎)から睨まれてる。脅されて痛めつけられても、御法度の博打に縄張りもねえもんだと性懲りもなく始める。ところが源七の手下たちに踏み込まれて、身一つで逃げ出す始末。

一文無しになった新三は、寂しくて仕方ないので木場にある老舗質店の白子屋に商売道具を持って行くんですな。
白子屋にはお駒(霧立のぼる)という箱入り娘がおりまして、十五万石の家老の倅との縁談が持ち上がってるんですが、本人はちっとも面白くない。それもそのはず、番頭の忠七と密かにいい交わしてるからです。
その忠七に、二両ばかり借りたいと新三が頼み込むんですが、にべもなく断られる。お駒が現れて口ぞえをしますが、物もらいに来たんじゃねえと啖呵を切って出て行く。おまけに、質屋の用心棒もやってる源七一味に袋叩きにされ、踏んだり蹴ったりです。

縁日の晩、傘をさした新三が寺の前を通りかかりますと、門の下で雨宿りをしてるお駒がいます。どうやら傘を調達しに行った忠七に置いてけぼりをくったらしい。新三は、思いつきでお駒を誘拐して長屋に連れて行きます。
翌日、紙風船の内職をしてる浪人の海野又十郎(河原崎長十郎)にお駒を預けて、源七一味が乗り込んで来る。穏便に済ませなきゃならない一味を相手に、新三はここぞとばかりに言いたい放題言ってコケにして退散させる。

その話に感激した大家がかけつけると、日頃威張りくさってる源七一味への面当てにやっただけで、番頭が迎えに来ればすぐに返す、と新三はてんで欲がない。
やがて知らせを受けた忠七が大家と一緒にお駒を迎えに来ます。ところが大家は、白子屋からせしめた五十両の見舞金を懐から取り出す。

「大家さん、半分取るつもりですかい?」
「手前、さっき金はいらねえと言ったくせに」
「だって半分たあ、ひでえや」


早速長屋の連中が居酒屋に集まり、酒盛りが始まります。
一方、白子屋に戻ったお駒の部屋へ忠七がやって来て言います――「二人で逃げましょう」
   (注釈1)



デパートの宝飾品売場を思わせる洒落た質屋を経営する矢頭美栄子(三田佳子)は、美人で物言いが柔らかい。結婚資金を貯めたいと、もらい物の毛皮のコートを持ち込んだ若い女性客に、貴金属ならもう少し助けになると優しく指南する。高級腕時計を持ち込んだとき、彼女がホステスだと知る。親身になって接するので、結婚にまつわる相談を受けるようになり、未亡人だからと仲人は断ったものの彼女の結婚式まで出席する。

そんな美栄子が質屋の女性客に親身になったのは、自分にも年頃の一人娘がいるからである。名前はのん(斉藤由貴)と言い、家電メーカーのOLをやっている。彼女は鎌倉の一軒家で母と祖母の女所帯で育ったせいか、男性とのつき合いは積極的ではない。
それを見透かしたのか、美栄子の亡き夫の親友3人(小林稔侍、橋爪功、斎藤晴彦)が一斉に見合いの話を持ってくる。

戸惑ったのんは、見合いを断るため、社内で密かに心を寄せている川又保(唐沢寿明)に恋人のふりをしてくれとラーメン一杯で頼みこむ。父親気取りの3人の前で鍋をつつきながら、二人は仲よさそうな芝居をするが、誰の目にもよそよそしい。煮え切らない娘に、私を愛してとか思い切って言ったらと美栄子は助言する。

「身体がしわくちゃになっても、足がしびれてても、お正月には一緒に初詣でに連れてってやるよ。
夏にはパラソル持って、シミだらけの顔にサングラスかけさせて海を見せてあげるよ。
そうやって長く大切にしてあげるから、結婚してくれよ」


陸上同好会の練習で使っている競技場が見えるビルの非常階段で、保はのんにプロポーズする。彼女も素直に応える。
面倒臭いと感じるのんのため、美栄子は張り切って結婚式の準備を手伝う。消極的な保の父親(田中邦衛)の仕事場へ通い、3人の父親に上手に役割を分担させ、結納までこぎつける。
だが同僚の結婚式で騒動が起こり、保が披露宴を止めようと言い出す。怒ったのんは結婚を考え直そうと言い放つ。

新規巻き直しを聞かされた保の父親のアイデアで、矢頭・川又両家の顔合わせを陸上競技場で行う。円盤投げをするのんを魚に喋り、保が出る1500メートル走で賭けをして盛り上がる。
そして小雨舞い散る高原で、人前結婚式を行う。披露宴の拍手喝采の中、「おいしい結婚」を成し遂げた美栄子と新郎新婦の笑顔がはじける。
   (注釈2)
主題歌「はじまりはいつも雨」(歌:ASKA)



さて、担保を取って資金を貸し付けることは、奈良・平安時代からあったそうですな。専門的にやりだしたのは鎌倉時代で、質物を保管する倉庫を持ってたことから土倉(どそう)とか呼ばれてました。それが江戸時代になって貨幣経済が進展すると共に質屋に変化したわけです。

近頃はどうか知りませんが、とりあえず質屋の魅力ってのは、手近な物を担保にして気楽に借金ができることですな。毎月の利子さえ払えば担保品を手放さずに済む。
ところが世間体を気にする人たちもいるわけで、一と六を足したら七になることから「一六銀行」と呼んだり、のこぎりを曲げると7って数字になるので「曲屋」なんて呼んだりした。俗称の方がよっぽど死語ですな。
まあいずれにしろ、質屋は庶民のための金融機関だった。

ですから世界各地に存在したわけで、時代背景が古い映画によく登場しました。
「未完成交響楽」って映画は200年くらい前の話で、フランツ・シューベルトが主人公です。彼はウイーンの小学校の教師をやりながら作曲に精を出してるんですが、当然貧乏なので質屋通いしてる。でもチャンスが舞い込む。宮廷音楽長の紹介で公爵夫人のサロンに出席することになり、心優しい質屋の娘エミーが礼服を貸してくれる。
そこでシューベルトは礼服を着て出席し、カロリーヌ姫と運命的な出会いをする。結末はお分かりだと思いますが、かなわぬ恋で終ってしまう。テーマ曲の交響曲第7番も未完成に終る。
不朽の名作と絶賛される「未完成交響曲」は、シューベルトが31歳で亡くなってから約40年後に発見され、初演されました。
シューベルトも質屋通いしてましたが、あの名作が有名になったのは「死後」だったってわけです。
   (注釈3)

「おいしい結婚」を監督した森田芳光さんは、2011年に61歳で急性肝不全で亡くなりました。平均寿命が80歳を超える現代の日本人としては、十分若死と言っていいですな。デビュー作からのファンとしては残念で仕方ない。
「人情紙風船」を監督した山中貞雄さんは、1938年に28歳で戦場で亡くなりました。彼の戦死は映画界に衝撃を与えたらしく、小津安二郎や成瀬巳喜男など当時の名監督がひどく悲しんだそうですな。
山中貞雄は、無名の一兵卒として中国へ赴き日記にこう記してます――「『人情紙風船』が遺作では、チト、サビシイ。負け惜しみに非ず」


注釈1、「人情紙風船」(監督:山中貞雄)
     日本映画 1937年製作

     メーカー:東宝
     メディア:DVD

注釈2、「おいしい結婚」(監督、脚本:森田芳光)
     日本映画 1991年製作

     メーカー:東宝
     メディア:VHS

注釈3、「未完成交響楽」(監督:ウィリー・フォルスト)
     オーストリア・ドイツ映画 1933年製作 原題:Leist flehen meine Leider

     メーカー:IVC
     メディア:DVD
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posted by マンハッタン坂本 at 20:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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