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2014年09月08日

“東方のハリウッド”売ります。

青島東方影都3.jpg
                                                            「青島東方影都」

 自選パロディ集サード・シーズン PARTT

“東方のハリウッド”売ります。
 introducing 「紅いコーリャン」「鬼が来た!」

2020年、大成功に終わった東京オリンピックの熱狂が冷めやらぬ或る日、ジョン・フィリップスとおぼしき高級スーツに身を包んだ中国人がオフィス北野を訪ねた。
出迎えたのは映画監督の北野武である。
「王健林さん! 突然どうしたんです?」
王健林は、中国一の大富豪で、不動産開発大手の大連万達集団(Wanda Group)を率いる会長である。
「開会式のアトラクション、素晴らしかったよ」
「北京を演出したチャン・イーモウ監督の物真似ですよ。もっとも花火(HANA-BI)は本物を使ったけど」
「突然だが、君の力を貸してもらえないかな。謝礼はたっぷりする。『アウトレイジ5』が大コケしてかなりの借金があるだろ」
「面目ない」
「どうかな? 私が8000億円で建設した『東方影都(オリエンタル・ムービー・メトロポリス)』を、尖閣諸島と交換できないかな? 日本政府に働きかけて欲しいんだ」
「正気ですか?」あ然として北野武が言った。

『東方影都』は、20の撮影スタジオを備え、外国映画30本を含む年間100本の映画製作を想定して建設された。定員3000人の大型映画館やショッピングセンター、7つのホテルも併設され、2016年にオープンしていた。
「じゃあ、20億5000万円で手に入れた魚釣島だけでもいい。面積は確か382ヘクタールだから、376ヘクタールの『東方影都』とほぼ同じ大きさだ。等価交換だと言っていい」
「ふざけるんじゃねえよ、王さん」まるで「アウトレイジ」の大友のように北野武が睨みをきかせた。
「白状するよ。本音は『東方影都』を買ってくれるだけでいい。東京オリンピック景気で、ジャパン・マネーは天井知らずだ」
「冗談じゃない。北京を中心とした大気汚染は蔓延するばかりじゃないか。高濃度のPM2.5とか黄砂が溶け込んだ有害な大気エアロゾルから、どうやって防ぐんだ?」
「それだよ。何とか解決できると思ってたんだが、習近平には荷が重かった。2億円で起工式に呼んだレオナルド・ディカプリオもニコール・キッドマンも、オープン以来4年も経ってるのに、まるで撮影所に寄りつこうとしない」
「ゴーストタウンになるのも時間の問題だな」
「その点、公約通り日本政府は福島第一原発の汚染水問題を解決した。どうだね、地中を凍らす技術を応用して、今度は地上の大気を凍らして『東方影都』を守るってのは」
「無理だね」北野武は冷ややかに言い放った。

「まさか見捨てるつもりじゃないだろ?『東方影都』は山東省の青島(チンタオ)にあるんだぞ」そう言って王はアタッシュケースの中から青島ビールを取り出した。「かつて青島は、世界大戦中2度に渡って日本軍が占領した。青島攻略戦で当時租借してたドイツ帝国に勝利して、1914年から中国に返還する1922年まで。中国人民抗日战争つまり日中戦争では、1938年から終戦の1945年まで。日本人にとって青島は、満州と同じくらい馴染みのあるところだ」
「謝礼はいくら出す?」青島ビールを飲みながら北野武が訊ねた。
「まず借金の肩代わりだ。オプションは、私が買収したAMCエンターテインメントが所有する全米シネコンで、君の新作をかけようじゃないか」
「オイラの映画はアメリカ人向きじゃない。ついでに言うけど、中国人にも受けない。この取引は中止だ」
「残念だな」王は気持を切り替えた。「次は、村上春樹に当たってみるか」
「金じゃ動かないぜ、あいつは」
「心配ご無用。これをプレゼントすれば一発でOKだ」王は上着のポケットから何やら立派なメダルを取り出した。
「2012年度ノーベル文学賞?」
「莫言(ばくげん)から分捕ってきた。彼は山東省出身なんだ」

ハイホー、マンハッタン坂本です。


チャン・イーモウ監督のデビュー作であり、彼の代表作の一つである「紅いコーリャン」は、ノーベル文学賞作家・莫言の小説が原作である。
山東省の農村を舞台に、前半は1920年代末期、後半は日中戦争が勃発した頃の話である。

風にたなびく無数の葉が、差し込む目映い陽の光で赤く染まっている。
背の高い野生のコーリャンを数十株踏み倒すと、男は16歳のチウアル(コン・リー)を担いでくる。赤い服の彼女は、大の字に横たわり、男に身をゆだねる。

ユイ・チャンアオ(チアン・ウェン)に魅かれたのは、チウアルが十八里塚の造り酒屋に嫁入りする道中で、花嫁輿を担いで歩く逞しい後ろ姿だった。途中追いはぎに襲われ助けられたとき、互いに視線を交わす。
そして初めて愛し合ったのは、三日後にラバに乗って里帰りする道中、コーリャン畑に連れ込まれたときだ。

嫁ぎ先に戻ると、酒屋の主人が何者かに殺されたという。
番頭のルオハン(トン・ルーチュン)と使用人たちの女主人におさまったチウアルは、ハンセン病者だった先代の住まいをコーリャン酒で消毒し厄払いをする。
釜入れの日、新酒の杯を持ったルオハンと男衆が高らかに歌う。そこにユイが現れ、酒の入った瓶に放尿する。俺が酒をしこむと宣言すると、チウアルは心を奪われたかのように身動きできなくなる。そのまま彼女を担いで家に入り、ユイが酒屋の主となる。

名酒に化けた小便入りのコーリャン酒が「十八里紅」として有名になり、コーリャン畑で生を受けた息子が9歳になったとき、日本軍が村に侵攻する。
八路軍が隠れないため、村人総出でコーリャン畑を踏み倒させる。見せしめのため、盾ついた盗賊のサンパオを処刑する。共産党員となったルオハンは生皮を剥がれる。

その夜、チウアルが復讐を宣言する。新酒の杯を持ったユイと男衆が高らかに歌う。
爆薬を仕掛けた道で日本軍のトラックを待ち伏せする。夜が明けても現れない。
チウアルが食事を運んできたとき、機関銃が火を吹く。燃え盛る酒瓶を持った男たちが突撃する。爆破されたトラックの周りが血の海と化す。
一人生き残ったユイが立ち上がる。息子が走り寄る。道端にチウアルが倒れている。
茫然と立ち尽くすユイ。空も大地もコーリャン畑も血の色に染まっていた。
 (注釈1)



1944年、中国華北地方の大河に面した小さな農村を、日本海軍の軍楽隊が行進する。軍艦マーチに釣られて沿道に集まった子供たちに、馬に乗った野々村隊長が飴を配り、手品を見せる。

年の暮れ、夜中にマー・ターサン(チアン・ウェン)家の戸を叩く者がいる。おそるおそるマーが開けると、いきなり銃を突きつけられ、5日後に引き取りにくると言って謎の男が二つの麻袋を預けていく。中には、陸軍軍曹の花屋小三郎(香川照之)と通訳のトン・ハンチェンが入っている。
村人とすったもんだの話し合いの末、男に指示された供述書をとる。だがウー長老の尋問に対し、殺せ!畜生どもと日本語で花屋がわめき散らす。トンは中国語で殺さないでくれと答える。

マーと恋人のユィアルは、日本軍に見つからないよう二人を穴蔵に隠し、辛抱強く面倒を見る。捕虜になったことが屈辱で堪らない花屋は、頑として食い物を口にしない。
8倍返しにすると言って村のおばさんから調達した小麦粉を使って餃子を作り、持っていく。すると花屋は、マーたちを激怒させるため、トンから習った一番下品な中国語を浴びせかける。

「お兄さん、お姉さん、新年おめでとう!」

約束の5日が過ぎても謎の男は現れない。
村人の命を守るためマーが二人を殺すことになるが、実行できずのろし台にかくまう。ユィアルに嫌われ白状したマーが清朝の処刑人を連れて来るが、役に立たない。
怖気づいた百姓出身の花屋は、皇軍と取り引きすると申し出る。村人の前で、半年間もてなしを受けた、君たちは命の恩人だと泣きながら訴え、トンに正しく訳させる。食事や傷の手当に対し深々と頭を下げ、特に兄さんと姉さんは優しかったと感謝する。
嘘でないと判断したウー長老が契約書をつくる。

村人と共に陸軍の基地に戻った花屋は、上官たちから殴り倒され、捕虜になったことを何度も土下座して謝る。
だがマーが差し出した契約書を読んだ酒塚隊長(澤田謙也)は、皇軍は信用を重んじると言って荷車6台分の穀物を携え、村を訪れる。

陸海軍の兵士たちと村人が酒を酌み交わす大宴会の最中、酒塚隊長がいきなり花屋を腐敗分子と呼び、誰かやつを撃ち殺せと命令する。たちまち宴会は村人殺戮の場となる。
軍楽隊が演奏を続ける中、口火を切った花屋が自害しようとしたとき、大日本帝国の降伏を知る。

宴会に遅れたばかりに命拾いしたマーは復讐の鬼と化し、中華民国の俘虜収容所に突入する。憎き花屋の姿を発見した彼は、斧で襲いかかるが、取り押さえられる。
マーの処刑が命じられ、真剣で斬首したのは花屋だった。
   (注釈2)



日本の出版物に載っている世界地図を見ると、一部の例外を除き、あたかも日本列島が世界の中心であるかのように描かれている。そして海をへだて韓国や中国やロシアが隣接している。
日本と同様、隣接する国々も世界中の国々も世界の中心に自国が鎮座する世界地図を持っている。
昨今、日中・日韓問題で取り沙汰される歴史認識も、それぞれの国が持っている世界地図と同じではないだろうか。

ある出来事に関する歴史認識が、それぞれの国で異なることは当たり前だ。同じ歴史認識を共有することは、不可能だと言っていい。
だからと言って、国同士が仲良くできないわけがない。異なった歴史認識を持っていることをお互いに認め合った上で、仲良くすることは十分可能だ。

今回紹介した2本の映画は、いずれも中国人が描いた日中戦争にまつわる寓話だ。日本兵の描き方に偏見がないとは言えない。
しかしながら、中国庶民の目に映る戦時中の日本兵は、映画のように尊大で常軌を逸した、まさに鬼だったのかもしれない。
「鬼が来た!」で描かれる彼らの狂気は、最後に村に悲劇をもたらすわけだが、願わくば、百姓出身の花屋が一兵卒として村人と和解し取り交わした契約を守って欲しかった。

ウー長老が記した契約書は、戦争に翻弄され続けた庶民の願いがこもった、一篇の詩だったような気がする。

 われら村民 情深く 義心あり 力を尽くし 食住を与える
 われらの倹約 その困難 耐えがたし 年月を経ても 決して忘れず
 花屋は恩義から われらに約す 褒美として 穀物2台
 われら喜びて これを受ける 花屋とトン ここに送還す
 これ以後 互いに 争うことなし 中日双方 ここに印す




注釈1、「紅いコーリャン」(監督:チャン・イーモウ)
     中国映画 1987年製作 原題:紅高粱 英題:Red Sorghum
     原作:莫言
     ベルリン国際映画祭グランプリ受賞
     金鶏賞最優秀作品賞受賞

     メーカー:紀伊國屋書店
     メディア:DVD

注釈2、「鬼が来た!」(監督:チアン・ウェン)
     中国映画 2000年製作 原題:鬼子來了 英題:Devils on the Doorstep
     カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ受賞
     毎日映画コンクール外国映画ベストワン賞受賞

     メーカー:ジェネオン・エンタテインメント
     メディア:DVD

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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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