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2014年10月27日

寄せ集めでも、何かの役に立てばいい。

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寄せ集めでも、何かの役に立てばいい。
introducing 「アポロ13」「七人の侍」

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(PARTT)のラストで、2015年の未来から空飛ぶタイムマシンとなったデロリアンに乗って1985年の現在に戻ってきたドク(クリストファー・ロイド)は、マーティ(マイケル・J・フォックス)と恋人のジェニファーに向って、君たちの子供が心配だと言って慌しく二人を乗せて未来へ旅立つ。
その際、ミスター・フュージョンという機械に生ゴミを投入するだけで、次元転位装置を稼動させるのに必要な1.21ギガワットの電力を得ることができた。

1985年に旅立つときには、リビアのテロリストから騙し取ったプルトニウムを燃料とした装置を使い、1955年に旅立つときには、ヒルバレー時計台の避雷針に落ちた雷を使ったのに、2015年の未来では、夢のような家庭用発電機が市販されていたのだ。
もちろんこの3部作は、1955年時点でデロリアンが4台も存在するような矛盾だらけのタイムトラベル映画で、2015年真っただ中の現在でも実現不可能な絵空事だ。
  (注釈1)

しかしながら、莫大な電力を得るために必要な燃料がどこにでもある生ゴミや空き缶で事足りるミスター・フュージョンというエネルギー反応炉は、究極の発電機であり、究極のリサイクル装置である。これを「ものづくり」に置き換えるなら、究極のブリコラージュということになる。
「器用仕事」「寄せ集め細工」と訳される「ブリコラージュ」(Bricolage)とは、ありあわせの道具と材料とを用いて入り用の物を作ることである。

ハイホー、マンハッタン坂本です。


フランスの文化人類学者、クロード・レヴィ=ストロースは、有史以前から人類が成し遂げてきた「ものづくり」のほとんどが、目的に合わせて用途を開発するのではなく、すでにあるものをどのような用途に活かせるかを工夫することだったとして、そういった小細工を「ブリコラージュ」と名づけた。
そしてブリコラージュする人物を「ブリコルール」(bricoleur)という。

ブリコルールは、既にある物を寄せ集めて物を作る人であり、雑多な物や情報などを集めて組み合わせ、その本来の用途とは違う用途のために使う物や情報を生み出す人である。
ひいては、その場にあるものをうまく使ってピンチを脱する人たちでもある。


1970年4月11日13時13分、ジム・ラベル船長(トム・ハンクス)以下3人の宇宙飛行士を乗せたアポロ13号が打ち上げられる。
月に向かって順調に飛行中だったが、酸素攪拌スイッチを入れた直後に支援船の酸素タンクが爆発する。タンク内の不良コイルがスパークしたためだ。
ヒューストンにあるNASA管制センターは、司令船オデッセイ内の酸素と電力が急速に失われる事態にパニックとなる。

「おれの担当で飛行士は殺さないぞ。失敗は許さん!」

交信や軌道修正や遮熱板調整そして再突入に必要な電力を残すため、不急な電力をカットする決断をした主席管制官のジーン・クランツ(エド・ハリス)がスタッフに向かってそう宣言する。

4日目。ヒューストンは、死にかかった司令船から月着陸船アクエリアスに移動した3人の宇宙飛行士に危機が迫っていることに気づく。2人乗り用に設計された月着陸船の空気清浄フィルターが弱いため、船内の二酸化炭素濃度が上昇し続け、レベル15を超えると搭乗員の意識がなくなる恐れがあるからだ。
呼吸する度に3人が吐き出す炭酸ガスを減らすためには、月着陸船の円形フィルターと司令船の四角いフィルターをつなぐ道具を作らなければならない。管制センターの一室に、月着陸船内にある材料が集められる。

完成品を持ったスタッフから渡された用紙を手に、交信担当の管制官が製造方法をアポロ13号に伝える。飛行計画書、水酸化リチウムの缶2個、灰色のビニールテープ、廃棄物用のバッグ、宇宙服用のホース、それらを使って完成した道具で規格の違うフィルターを接続し、二酸化炭素セレクト・スイッチを入れると即席フィルターが勢いよく炭酸ガスを吸い込む。

その後、手動操縦で軌道修正の噴射を、シミュレーターで何度も模擬テストして得た手順に従って司令船の再起動を、そして最後に残した電力を使って大気圏再突入を次々と成功させ、アポロ13号は奇跡の生還を果たす。
すべては、3人の宇宙飛行士とNASAのスタッフと関係者全員の総力を結集した賜物であった。
   (注釈2)



ブリコルールとされる人たちの幅は広い。
NASA管制センターのスタッフが成し遂げたことは、即興的なブリコラージュだ。
むしろ新しい「ものづくり」に取り組んでいる発明家やヴェンチャー企業のスタッフに、画期的なブリコラージュを実現する人が多い。
あるいは、冒頭の画像のようなジャンク・アートに代表される視覚芸術や音楽の世界にブリコラージュする人たちもいる。

少し飛躍するかもしれないが、映画は寄せ集め集団によるサクセス・ストーリーが好きだ。
寄せ集めのスポーツ・チーム、寄せ集めの音楽バンド、寄せ集めの戦闘部隊、などなど。彼らがすったもんだしながら目的に向かって活躍する。そんな映画がごまんとある。
そしてその原点と言うべき究極の寄せ集め集団が、日本映画の最高傑作「七人の侍」である。


「七人の侍」は、始めから侍が百姓に雇われる話だったわけではない。
今までの常識を覆すようなリアルな時代劇を撮ろうとした黒澤明が、脚本家の橋本忍に命じて実在の武芸者が活躍する「日本剣豪列伝」を書かせた。だがクライマックスの連続に魅力を感じずボツにする。
そして路銀のない侍が武者修行をしながらどうやって食いつないだかを調べるうちに、干し飯を施してくれる道場や寺院のない地域で、百姓に雇われる者がいることを知り、野武士に狙われた農村を名だたる剣豪たちが守るという話ができた。
上泉(かみいずみ)伊勢守信綱が島田勘兵衛に、塚原卜伝が片山五郎兵衛に、宮本武蔵が久蔵に変身したのである。


戦国時代。あいつぐ戦乱ではびこる野武士たちが、再び山あいの小さな村を襲おうとしている。
村人たちは恐怖におののくばかり。長老の決断で、村を守ってくれる侍を雇うことになる。町に出た四人は、行きかう浪人たちを物色するが、誰も相手にしてくれない。
ある日、初老の侍が剃髪して僧衣に着替える様を目にする。野次馬に訊ねると、納屋に立てこもった盗人から人質の子供を助け出すためらしい。
出家になりすました侍は、戸口からにぎりめしを投げ与え、一瞬の隙を狙って突進し盗人をひと突きにする。

百姓たちの必死の嘆願を引き受けた島田勘兵衛(志村喬)は、救出の一部始終を見て弟子入りを願い出た若い勝四郎(木村功)と共に目ぼしい浪人を探す。少なくとも七名は必要だ。だが腹一杯めしが食えるだけで百姓を助ける者は現れない。
木賃宿の入口に身を隠した勝四郎が木刀を持って上段に構える。村人に促されてやって来た侍が素早く殺気を感じ取る。片山五郎兵衛(稲葉義男)が勘兵衛の人柄に魅かれて引き受ける。
勘兵衛は、共に戦い生き残った古女房の七郎次(加東大介)を連れてくる。金にも出世にもならない難しい戦だが、二つ返事でついて来るという。
五郎兵衛がとぼけ者の林田平八(千秋実)を連れてくる。茶屋のめし代として薪割りをする姿が楽しそうだったからだ。腕は中の下だが、苦しいときは重宝な男にちがいない。

真剣による果し合いで、鮮やかな一太刀で相手を倒した久蔵(宮口精二)に声をかける。自分をたたき上げることに凝り固まった武芸者だが、諦めた頃に合流する。
郷里へ立てと勘兵衛につき放された勝四郎も、村人の頼みで連れて行くことになる。大人扱いすれば、子供は大人より働くぞ、と平八が言う。
ぐずぐずできないので、侍が一人足らないまま村へ出立する。威勢のいい呑んだくれの菊千代(三船敏郎)が執拗につきまとい、村までついて来る。侍に怯えて姿を見せない村人たちをおびき出したのは百姓出身の菊千代だった。
七人の侍が勢ぞろいし、村人たちと協力して四方の守りをかためる。

やがて四十騎のうち三人が物見に現れ、彼らから奪った馬に乗って夜討ちをかける。逃げ帰る直前に平八が火縄銃に撃たれる。
裏山に姿を現した野武士たちが馬に乗って攻撃してくる。百姓を意味する「た」と侍を意味する六つの〇と半分百姓を意味する△を記した旗をひるがえし、応戦する。
手薄となった東を突破され右往左往するうちに、北を守っていた五郎兵衛が銃弾に倒れる。
残り十三騎となった野武士が、早朝雨の中を総攻撃してくる。
五人の侍と百姓の連合軍は、村の中に乱入した野武士たちと死闘を繰り広げる。久蔵が狙い撃ちされる。菊千代が敵の弾丸を受けながら最後の一人を追いつめ、刺し違えて死ぬ。

村の墓地に、刀を突き刺した四つの墓が並ぶ。
大声で田植歌を歌う百姓たちを眺めながら、勘兵衛がつぶやく。

「勝ったのは、あの百姓たちだ。わしたちではない」
   (注釈3)



周知の通り、「七人の侍」に影響を受けた作品――映画はもちろん、TVドラマやアニメなど数限りない。正式リメイクの「荒野の七人」をはじめ、タイトルに7がつく作品も多い。当然のことながら「サボテン・ブラザース」や「タンポポ」のようなパロディ作品も数多く制作された。
2012年に放映された堺雅人主演の「リーガル・ハイ」にも、「七人の侍」を裏返したような傑作パロディがあった。


旧絹美村の村民たちは、元村長夫人の命で東京へ行き、やり手弁護士を雇ってくる。国を背負っている大企業を相手に公害訴訟を起こすためだ。だが裁判の途中で、被告側と僅か2千万円で和解しようとする。
拝金主義で、吐き気がするほど惨めな老人たちが大嫌いだと公言する弁護士の古美門研介は、弱腰になった村民たちを叱咤激励する――「誇りある生き方を取り戻したいのなら、見たくない現実を見なければならない。深い傷を負う覚悟で前に進まなければならない。闘うということはそういうことだ」

かつて戦後の復興と高度成長を成し遂げた年寄りたちは、「七人の侍」の田植歌を歌い、討ち死にする覚悟で闘志を燃やす。
そして希望通り5億円の慰謝料を勝ち取り、再び田植歌を歌う。
   (注釈4)



特定の用途に合わせて手段の方を改善するエンジニアリング――技術開発が主流となった現代において、その技術開発を推し進めた結果生まれた画期的な新素材、その新素材を生産する過程で発生した有毒物質が環境汚染を引き起こした、というのが「リーガル・ハイ」での公害訴訟であった。
おそらく新素材を開発する過程で、大企業は資金力に物を言わせて優秀な人材を集めたにちがいない。

グローバル化した現代では、優秀なモノもヒトも世界中から容易に集められる時代となった。
しかしながら、新しい市場をつくるための新しい「ものづくり」は、必ずしもエンジニアリングだけで成し遂げられるものではない。
資源に限りがあることを考えると、有史以前から人類が成し遂げてきた「ものづくり」のやり方、ありあわせの道具と材料とを用いて入り用の物を作る「ブリコラージュ」もまんざら捨てたものではない。

たとえ寄せ集めの材料であっても、何かの役に立つモノができる。
たとえ寄せ集めの人材であっても、何かの役に立つコトができる。

かく言う僕も、乏しい知識と語彙――手に取れる、ありあわせの言葉を組み合わせて記事を書いている。
「寄せ集めでも、何かの役に立てばいい」のではないだろうか。





注釈1、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(監督:ロバート・ゼメキス)
     アメリカ映画 1985年製作 原題:Back to the future
     米アカデミー賞音響効果賞受賞

     メーカー:ジェネオン・ユニバーサル
     メディア:Blu-ray

注釈2、「アポロ13」(監督:ロン・ハワード)
     アメリカ映画 1995年製作 原題:Apollo 13
     米アカデミー賞音響賞、編集賞受賞
     英アカデミー賞視覚効果賞、企画賞受賞

     メーカー:ジェネオン・ユニバーサル
     メディア:Blu-ray

注釈3、「七人の侍」(監督:黒澤明)
     日本映画 1954年製作 英題:Seven Samurai
     ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞

     メーカー:東宝
     メディア:Blu-ray

注釈4、「リーガル・ハイ」(TVドラマ)
     フジテレビ系列 2012年4月〜6月放映 英題:LEGAL HIGH
     脚本:古沢良太
     放送文化基金賞テレビドラマ番組部門本賞、脚本賞受賞

     メーカー:TCエンタテインメント
     メディア:Blu-ray BOX


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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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