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2014年09月29日

「リケジョの星」と呼ばれて。

小保方晴子5.jpg

 自選パロディ集サード・シーズン PARTV

「リケジョの星」と呼ばれて。 (新作)
 introducing 「キュリー夫人」「ダークレディと呼ばれて」

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が7月にオープンして以来、大人気である。
企画・製作を担当した久利生(くりゅう)万里さんに取材を試みた。彼女はアラフォーとは思えないプレミアム・シルク肌で、かっぽう着を連想させるワンピがユニークだ。だが左薬指には、妖精のような青い光が輝いている。ヴィヴィアン・ウエストウッドのリングだろうか。

――年末に向けて、新アトラクションがオープンするそうですね。
久利生 ゲストの皆さんにハーマイオニーに成り切って体験していただきます、女子力アップのために。名づけて、「STAP細胞はあります」ザ・ライド!
――意表をつくタイトルですね。
久利生 実は私、早稲田大学の理工学部卒業なんです。
――小保方晴子さんの先輩ですか?
久利生 はい。逆境のオボちゃんを応援するために企画したんです。
――内容を教えて下さい。
久利生 ざっくり言うと、STAP論文の共著者が8人いますよね。なのでゲストの皆さんに8人一組になってホウキにライドしてもらい、ホグワーツ城を出発します。最初は「ムーミン」のイラストが描かれた理研の研究室に突入します。そこでマウスの体細胞に対して、細いガラス管の中に通す物理的ダメージを与えたり、毒素で細胞膜に穴をあけたり、ヒートショックを与えたりする。そして最後に呪文を唱えながらハーマイオニーの魔法の杖から光を出します。するとたちどころにSTAP細胞ができるわけです。
でも8人の呪文がハモってなかったり、誰か一人でも間違えれば、失敗です。しかもペナルティが課せられます。
――でっち上げだと非難されるんですか?
久利生 8人の額にお札が貼りつきます。まるでキョンシーの動きを封じるみたいに。そしてそのお札に漢文で、「過去何百年にわたる細胞生物学の歴史を愚弄(ぐろう)するな」
――理研の研究室をクリアしたあとは?
久利生 次はハーバード大学の研究室です。その次はソルボンヌ大学。研究室が変わる度に、より高等な哺乳類にトライしていき、呪文が難しく憶えにくくなります。そして最後に人類と対峙します。
――どんな呪文を唱えるんですか? 
久利生 ヒトの体細胞に向かって、「スブタツクリモリモリクツタブス!」
――はあ? ……確かに憶えにくいですね。コツってあるんですか?
久利生 「あるよ」
――教えて下さい。
久利生 「酢豚つくり、モリモリ食ったブス」、回文ですよ。
――ところで久利生さんは、かの有名な型破りな検事・久利生公平とご親戚ですか?
久利生 まさか。架空の人物と親戚なら、私も架空の人物じゃないですか。「くりゅう・まり」はいます。

ハイホー、マンハッタン坂本です。


元祖「リケジョの星」と言えば、マリー・キュリーである。
彼女は1903年、夫のピエール・キュリーとアンリ・ベクレルと共に、放射線の研究によりノーベル物理学賞を受賞する。
さらに1911年には、ラジウムとポロニウムの発見によりノーベル化学賞も受賞した。

パリ・ソルボンヌ大学で物理学と数学を専攻するマリー(グリア・ガースン)は、故国ポーランドを愛する優秀な留学生である。ペロー教授の口利きで、彼女は物理化学学校のピエール・キュリー(ウォルター・ピジョン)の実験室で、金属磁気の研究を始める。
女性は研究の邪魔になる、女性の天才は少ないと公言していたピエールは、たちまち彼女の天分に魅了される。

ある日ベクレル博士の実験室で、2人は鍵の写真を見せられる。偶然暗闇で撮られたという。感光板の上に載せた鍵がピッチブレンド(瀝青ウラン鉱)の作用により映像を残したのだ。鉱石の中に、感光させるほどの強い光を発する物質があるかもしれない。マリーは強く興味を引かれる。

主席で卒業したマリーが帰国する直前、ピエールは彼女を田舎に住む両親の家に誘う。そして勇気を出して彼女に求婚する――「2人が一緒になれば、塩化ナトリウムのようにうまく安定する」

共に科学の夢を追い求めるマリーは、結婚を承諾する。
2人は自転車で新婚旅行に出かける。道中、マリーは博士号取得のために瀝青ウランの謎を解く決心をする。だが研究は暗礁に乗り上げる。
ピエールが見守る中、テストを繰り返す。やがてマリーは、激しい放射線を発する新元素の存在を確信する。

ラジウムと名づけた放射性元素の原子量を明らかにするため、2人は大学が提供した掘立小屋のような実験室に閉じこもり、抽出実験に没頭する。8トンもの鉱石から必要のない元素を減らし不純物を取り除く。最終的に二つの元素が残る。ラジウムとバリウムを分離するには、繰り返し水溶液を蒸発させ、ラジウムの結晶を取り出すしかない。
4年の歳月が流れる。5677回目の蒸発で蒸留皿に残ったのはシミだけだった。2人は深く落胆する。だがそのシミこそラジウムではないかと思いついたマリーは、夫と共に真夜中の実験室に戻る。そこには「妖精のような光」を放つラジウムがあった。

ラジウムの抽出方法の特許を放棄し、ノーベル賞候補となった2人は、大学から最新設備が整った研究所を贈られることになる。
贈呈式の日、妻へ贈るイヤリングを持ったピエールが荷馬車に轢かれる。
突然の死に、マリーは茫然自失となる。偉人たちのように君は星をつかんだ、星はまだ沢山ある、とペロー教授が必死に慰める。やがて我に返ったマリーは、イヤリングを握り締め、泣き崩れる。
 (注釈1)

マリー・キュリーは、ピエールの死後も休むことなく研究を続け、物理学・化学はもちろん医学・生物学においても後世に多大な影響と貢献を残し、1934年に66歳で亡くなった。
死因は再生不良性貧血。放射線ではなく]線被曝の影響だと言われている。




1962年、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックとモーリス・ウィルキンスは、DNAの構造解明によりノーベル生理学・医学賞を受賞する。
さかのぼること4年前、ロンドン大学の優秀な女性物理学化学者が37年の短い人生を閉じる。彼女の名前は、ロザリンド・フランクリン。
のちにワトソンによって書かれた世界的ベストセラー「二重らせん」の中で、「気難しく、ヒステリックで、それでいて自分のデータの重要性に気づかない暗い女性研究者(ダークレディ)“ロージー”」と呼ばれた]線結晶学者だ。

「科学は私にとって、人生を解釈する材料を与えてくれます。それは事実と経験、実験に基づいているからです。」

1920年にイギリス系ユダヤ人の名家に生まれたロザリンド・フランクリンは、ケンブリッジ大学の学部生だった頃、父親へ宛てた手紙にこう書く。そして大学院で物理化学の博士号を取得し、1947年に結晶分析を得意とするパリの国立中央化学研究所に留学する。
]線を使って結晶の内部構造を調べることが専門のジャック・メリングの指導のもと、彼女は炭素分子の研究に打ち込み、成果を出す。しかもキュリー夫妻がラジウムを発見した物理化学学校を見晴らす小さなレストラン「ソランジュの店」で毎日ランチをとる研究所生活は楽しく、昔から洋服にうるさかったせいか、最新ファッションにも感化される。

1950年、フランクリンはロンドン大学キングズカレッジに職を得、DNAの]線結晶解析の研究を始める。そして画期的な]線写真の撮影に成功する。
DNAには水分含量の差によってA型とB型の2種類の形態が存在することを発見し、それを区別して結晶化する技法をあみ出し、見事に作り出した結晶に]線を照射し、素晴らしい51番の写真を撮影したのだ。
当時、オズワルド・エイブリーによってDNAが遺伝物質であることが証明されており、キングズカレッジの研究者たちがDNAの構造解明にまい進していた。

だが彼女は、その未発表のデータを誰にも見せず、ひたすら複雑なA型DNAに執着する。A型は水分が少ないためにらせん構造が縮んで塩基対が傾いているので、構造解明が容易ではない。それでも個々のデータや観察事実だけを積み上げていく帰納的なアプローチを貫く。
同じキングズカレッジで彼女より先にDNA研究に携わっていたモーリス・ウィルキンスは、フランクリンの許可を得ず、B型DNAの解析データ写真51番を密かにケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所のジェームズ・ワトソンに見せる。DNA研究をめぐって彼女と対立していたからだ。
さらに年次報告書として英国医学研究会議(MRC)に提出されたフランクリンの研究データを、結果的に盗み見したのがワトソンの同僚フランシス・クリックである。

自分のデータが他人の手に渡っていることを知らないフランクリンは、やがてB型DNAの解明に着手する。だが二重らせん発見の二歩手前で、キングズカレッジを去る。ウィルキンスとの確執が原因で孤立無援となった研究環境から逃げ出したかったからだ。
DNAの三次元構造を示す]線写真に接したワトソンとクリックは、互いに逆方向に結びついたらせん状の2本のリボンから成るDNAの模型を完成させる。そして1953年4月、わずか1000字の論文を科学専門誌「ネイチャー」に発表する。
皮肉にも掲載される前に論文を読んだ彼女は、51番の写真を添付した自身の論文にこう書き加える――「われわれの概略は、クリックとワトソンの提案するモデルに一致する」

DNAから手をひいたフランクリンは、バークベックカレッジでウイルスの研究を始める。そして彼女が率いた研究チームは、彼女にとって生涯で最高の成果を生む。共同研究者には、のちにノーベル化学賞を受賞するアーロン・クルーグもいた。
だが1958年、世界的な評価を得たウイルス研究をまっとうすることなく、若い科学者との恋を成就することなく、彼女は卵巣がんでこの世を去る。
一説には、無防備に大量の]線を浴びたためだと言われている。

それから半世紀の後、ロザリンド・フランクリンの存在を過小評価し続けたワトソンとクリックがついに公の壇上で断言する――「ロザリンドの実験なしでは1953年3月に二重らせんを発見できなかった」
 (注釈2)

ロザリンド・フランクリン.JPG

以上は1987年にBBCが製作した映画「ライフストーリー」のあらすじではない。
ロザリンド・フランクリンをもっともフェアに扱った評伝「ダークレディと呼ばれて」の要約である。

「知の逆転」に収録された2011年のインタビューで、ジェームズ・ワトソンはこう述べている――「われわれは答えを知りたい一心で仕事をしていた」
フランクリンも同じだったはずだ。だがDNAの構造解明に関する限り、ワトソンやクリックほど情熱を持っていなかったようだ。
しかしながら、生物学者の福岡伸一氏が主張するように、DNAの二重らせんは“ワトソン-クリック-フランクリン構造”と呼ぶべきだ。

映画の中で、「頑固で意志が強く意固地で頭がいい」それでいて「燃えるような気質を持っている」女性として描かれたマリー・キュリー。
彼女は、ピエールとめぐり合って人間として科学者として成長し、二度にわたってノーベル賞を受賞し世界的な名声を得た。
だがピエールの教え子との不倫疑惑で、マスコミに振り回されたこともある。

一方、編み物や料理が上手でおしゃれに敏感で山登りや旅行が好きで、イギリスでは「頑固で話しかけにくくて生真面目」、フランスやアメリカでは「明るくおしゃべりでユーモアにあふれている」と思われ、「仕事と母親業は両立できないから、私は子供をもたない」と考え、一生独身を貫いたロザリンド・フランクリン。
彼女は、「二重らせん」のベストセラーのお陰で、死後10年以上も経って不名誉な姿でその存在を知られるようになった。同時に彼女の研究成果に光が当てられ、80年代に入ってようやく再評価された。
2000年にキングズカレッジは、新設のフランクリン-ウィルキンス棟をロザリンドに捧げるというかたちでその功績を称えた。

二人の共通点は、優秀な研究者であり、]線被曝者だったことだ。そしてフェミニストのシンボルになったことだ。マリーは先駆者的存在として、ロザリンドは不当に扱われた存在として。


2014年1月の時点で、小保方晴子氏はマリー・キュリーのような未来が開けるはずだった。
だが「ネイチャー」誌に発表したSTAP論文の不正が次々と指摘され、記者会見で「STAP細胞はあります」と主張するも、ついに論文撤回に追い込まれた。
しかも彼女以外にSTAP細胞の作製に成功した者がいないため、世界三大研究不正に認定された状態だ。

少々こじつけだが、小保方晴子氏の行く末が、ライフスタイルに共通点が多いロザリンド・フランクリンの運命にオーバーラップする。
しかしながら、STAP細胞と同じような細胞の「初期化」を「ストレスがかかると何とかして生き延びようとするメカニズムが働くのでは」と彼女が推測したように、彼女自身も科学者として生き延びて欲しいものだ。
小保方晴子氏に残された人生が50年あるとして、彼女が地道に研究を続けさえすれば、いつかはSTAP細胞が世界中に認められるときが来るかもしれない。

マリー・キュリーがこんな言葉を残している。

「偉大な発見は、いきなり完全な姿で科学者の頭脳から現れるわけではない。膨大な研究の積み重ねから生まれる果実なのだ」



「あの日」(著者:小保方晴子)
あの日 -

出版社:講談社
メディア:単行本

注釈1、「キュリー夫人」(監督:マーヴィン・ルロイ)
アメリカ映画 製作:1943年 原題:Madame Curie
原作:エーヴ・キュリー「キュリー夫人伝」

メーカー:ファーストトレーディング
メディア:DVD

注釈2、「ダークレディと呼ばれて―二重らせん発見とロザリンド・フランクリンの真実」(著者:ブレンダ・マドックス)
初版:2002年 原題:Rosalind Franklin:The Dark Lady of DNA

出版社:化学同人 
メディア:単行本



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posted by マンハッタン坂本 at 00:00 | Comment(0) | 映画全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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